訓練参加者は19名。ふたり1組で1台のタブレット端末を受け取り、操作手順の説明を受けるところからスタートした。
紙面での入力をそのままアプリの画面で表現しているため、入力はスムーズである。傾き等各項目を入力すると危険度を自動で判定する機能も備わっている。また、デジタル地図の活用や写真をそのまま保存する機能があるため、従来の判定に比べ各段の効率化が望めそうだ。ただ、初めての入力ということと、操作に不慣れなこともあって、区の職員に何度か質問をすることもあった。
訓練は、端末操作だけでなく、模擬被災場所が用意された。各グループが実践を想定し、目視、計測、及び写真撮影し、タブレットに入力していった。すべての入力を完了し、最後に送信ボタンをクリックすると、即座に判定実施本部(本庁舎)にデータが送付される。その判定結果は、判定実施本部に設置されたPCのGIS(地理情報システム)に、赤・黄・緑で次々とプロットされ、集約・視認化される仕組みだ(図1)。
豊島区としては現在、災害時に100人の応援職員等で50チームをつくり、1チームあたり20件の判定することを想定しているが、このアプリを活用することで、1チームあたりの判定件数をさらに10件を増やせないか、応援職員を減らせないか等を検討している。その他、この判定の結果を「り災証明書の交付」にも活用できないかとも検討しているという。
模擬訓練終えて、参加判定士は判定アプリの使い勝手、タブレット自体の操作、写真撮影箇所に判定ステッカー表示を加えることなど、さまざまな意見・感想を述べ合い終了した。
このアプリは、(国研)建築研究所の開発をベースに、GISを扱っているESRIジャパン(株)が構築したシステムである(図2)。すでに京都市で模擬訓練の実績があり、豊島区は全国で2番目だという。
このデジタル地図にプロットできるという機能は、応急危険度判定だけでなく、災害時の「住家被害認定調査」等でも活用できるという。
実際の導入に向けては、豊島区では、①訓練未体験者の訓練及び入力精度を向上させること、②個人情報の取り扱いに関すること、③被災時に50台程度のタブレット端末が必要なこと、などの課題を挙げている。
被災建築物応急危険度判定が新たな段階にきていることを実感した模擬訓練だった。
井出 幸子(いで・さちこ)
東京都建築士事務所協会豊島支部副理事、UIFA JAPON(国際女性建築家会議日本支部)広報担当理事、(株)井出幸子建築設計室一級建築士事務所
1950年 東京都生まれ/1972年 日本女子大学住居学科卒//1972〜2012年 (株)アール・アイ・エー勤務、各種計画・意匠設計に従事/2012年 (株)井出幸子建築設計室一級建築士事務所設立
1950年 東京都生まれ/1972年 日本女子大学住居学科卒//1972〜2012年 (株)アール・アイ・エー勤務、各種計画・意匠設計に従事/2012年 (株)井出幸子建築設計室一級建築士事務所設立