「姫の路をたどる」──青年部会OB有志の研修会
青年部会OB有志|令和元(2019)年11月16日〜17日@姫路
鈴木 文雄(東京都建築士事務所協会墨田支部、有限会社鈴木設計一級建築士事務所)
 奈良時代に国府が置かれ古くから国の要所として栄えた歴史深き姫路を、青年部会OB有志一同で訪れた。
 青年部会を退任した役員経験者で自称「OB会」を結成し、現役青年部会の支援や独自の研修を行っている。その集まりの中で「各々の出身地を、研修を兼ねて巡ろう」という話しになり、記念すべき第一弾を世田谷支部の井元美佐代副支部長の生誕地である姫路とした。
 2日間の行程は紅葉の時期と重なり終始混雑に見舞われたが、観光客用に特別公開や期間イベントが多数設定されていたため、研修としては絶好のタイミングといえる。姫路駅到着後に食事を済ませ、最初の研修場所である姫路城に向かった。
姫路城にて。
入城できなかったナイトミュージアム−おとぎ幻影伝(撮影:鈴木 文雄)
姫路城、好古園
 現存12城のひとつである白鷺は晩秋の青空に白く輝いていた。その美しい姿を撮影しつつガイドさんの説明を受けながら城内を進んだ。天守では、字が読めない職人用に部材に掘られた「葉っぱの彫り物」、星型やひょうたん型の「埋木」の説明を受けた。個人的には5回目の登城となるが恥ずかしながら知らないことばかり。やはり研修にはガイド案内は必須である。
 その後、隣接する「好古園」を散策した。もとは姫路城西御屋敷が建っていた場所で、発掘調査で確認された西御屋敷や武家屋敷等の遺構をそのまま生かして作られた池泉回遊式庭園群である。夕暮れに輝く水面を眺め静けさに心を癒されるひと時を得た。多くの外国人も雰囲気を満喫している様子であり世界に誇れる文化なのだと確信する。
 その後、18時から姫路城内で開催される「ナイトミュージアム-おとぎ幻影伝」を見るために再城したが、行列の最後尾が大手門までつながり入場まで一時間ほどかかるとのこと。さまざまなクリエイターがイルミネーションやプロジェクションマッピングで城内を装飾し、幻想的なナイトウォークが楽しめる期間限定の催しだったので楽しみにしていたが、夕食の予約があるので断念し研修1日目を終えた。
書写山圓教寺食堂と大講堂。(撮影:高嶋 寛)
書写山の紅葉(撮影:鈴木 文雄)
書写山圓教寺
 2日目は足を延ばし姫路駅の北西8kmほどに位置する書写山圓教寺を訪れた。西国三十三所のうち最大規模の寺院で、開山は966年、僧侶の修行道場として栄えたため「西の比叡山」とも称されるほど寺格が高い古刹である。書写山の山上一帯を占める境内は国指定の史跡となっており、多くの重要文化財が現存する。姫路駅からバス、ロープウェイを乗り継ぎ入山した。
 多数の木造建築物が点在する境内をハイキング気分で散策しながら拝観してまわった。特に目を引くのは重要文化財の食堂である。僧侶の寝食のための寮で、様式などから室町時代中期のものと考えられている桁行15間、梁間4間、入母屋造りで本瓦葺きの総2階建ての長大な仏堂である。日本の近世以前の仏堂建築でこのように長大かつ総2階のものは類がないとのこと。細部の技法がさまざまなことや2階の屋根が隣の常行堂の屋根と接している複雑な納め方など、建築士としての見解が湧き出し討論に時間を費やす始末。ハリウッド映画「ラストサムライ」のロケ地でもあり、撮影時のスチールショットが飾られている見所の多い建造物だった。
 当日は「書写山もみじまつり」の開催時期のため多くの特別公開も行われており、それらを拝観しながらロープウェイ乗り場に向かった。午前中のみの研修だったので終盤は足早にならざるを得ず、未練を残しつつ下山し姫路駅へ向かい帰路についた。
 研修地だけでなくまちなみやちょっとしたお店や食事処等々、その地を熟知した出身者が行程を組み立てることの利点は多い。歴史、文化や慣習に触れ、その下支えをもって建築物を見ることで見識が深まる。今後も「出身地めぐり」は続けられていくことになり次の幹事が誰になるか、今から楽しみである。
鈴木 文雄(すずき・ふみお)
建築家、有限会社鈴木設計代表、東京都建築士事務所協会墨田支部
1984年 東海大学建築学科入学/1987年 同校中退、東京デザイナー学院建築デザイン科入学/1989年 同校卒業/有限会社鈴木設計一級建築士事務所入社、現在に至る