清水建設株式会社東京木工場見学会
中央支部|令和元(2019)年11月27日(水)@清水建設株式会社東京木工場
杉浦 美智(東京都建築士事務所協会中央支部、(株)杉浦英一建築設計事務所)
単板。(撮影:筆者)
練り付け方法。
木材サンプル。
NCルーター。
くり型。
樹齢100年。
木工ギャラリー。
木育。
記念撮影。
受け継がれた「技」と「経験」
 清水建設株式会社のご厚意により木場にある木工場を見学する機会をいただいた。
 清水建設株式会社東京木工場は、明治17(1884)年に深川島田町(現・江東区木場)にあった幕府御用材木商の跡地に木材切組場として開設されたという古い歴史を持っている。今も工場の裏を平久川運河が流れており、原木を引き上げていたころの雰囲気をうかがうことができる。
 その後戦災により工場は焼失したが、直ちに復旧して工場設備を拡充し、長尺ホットプレスや高周波加熱装置等の木工機械の整備、建具造作工場の設置により品質を向上させ工事量が増大した。装置や機械の整備に加え、経験を重ねて木を知り抜いた匠たちに伝承されてきた「技と経験」が、同業他社にない木工に関する技術力の原動となっていることを痛感した。
木工職人の技
 見学会で伺った職人の技の一部をご紹介する。
【単板の検収】厚さ0.2mm~0.6mmにスライスされた「単板」を1枚ずつ選別し、木の色や木目等が自然な美しさを保つように工夫されている。
【練り付け】単板を台板に貼り付ける際にプレス時の伸縮の癖を読み切って位置決めをする鍛錬された腕が必要とされている。
【木取・加工】目的に適した大きさに木取し、木目や材質を合わせるために深い知識と長年の勘が必要とされている。また、繰形の曲線加工では数百種類の刃物を見せていただき、仕上がりのイメージを持って刃物が制作されている現場を拝見することができた。
【木造作】造作は基本的な組み立て方法を踏襲しながらも、毎回応用力を発揮した工夫が必要とされている。その結果が各種の技能コンテストにおける受賞結果となっていることを実感できた。
【ITとのコラボ】コンピューターで制御された加工機であるNCルーターで精緻な加工を行うためにも木材の癖を見抜く職人の経験と技が必要となる。
受賞歴
 東京木工場の若手社員を中心として「技能グランプリ」や「技能五輪全国大会」などの社外コンテストに応募し、数多くの受賞歴を見せていただくことができた。
木工ギャラリー
 東京木工場の一角に設置された木工ギャラリーでは、宮大工の時代から培い伝承されてきた継手や手工具などが展示されており、歴史的な技に加えてNCルーターなどの現代技術を駆使しての成果品も見せていただくことができた。
木育活動
 2006年から毎年開催されている「夏休み親子木工教室」を代表とする、木育活動を開催して木に関する啓蒙活動が継続されている。建築界に身を置くわれわれにとっても、種々の木肌に直に触れて、その木たちが原木から生活の役に立つ成果品に加工されていく過程を見て、実感する機会は稀有といっていい今日において、これらの展示活動や啓蒙活動の貴重さを実感することができた。
杉浦 美智(すぎうら・みち)
東京都建築士事務所協会中央支部、(株)杉浦英一建築設計事務所
1957年 奈良県生まれ/2017年 東京理科大学工学部第2部建築学科卒業
インテリアコーディネーター、行政書士、薬剤師