奥日光・戦場ヶ原ハイキング
中央支部|令和元(2019)年7月20〜21日@奥日光
村上 淳(東京都建築士事務所協会理事、株式会社山下設計)
シカ侵入防止柵。
木道を往く。
木道と男体山。
湯滝にて。
 中央支部の夏恒例のハイキングを、7年目の今年も催行した。
 今年の目的地は奥日光戦場ヶ原。太古の昔、男体山から流れ出た溶岩による堰止め湖が、数万年の歳月をかけて埋め立てられて湿原化したところで、ラムサール条約にも登録された日本を代表する高層湿原である。
 高層湿原は、それが成立するまでには長い年月を必要とし、非常にデリケートなバランスの上に立つ生態系だが、近年、人間の活動や気候の変化等に起因するさまざまな問題を、各地の湿原は抱えている。戦場ヶ原も例外ではなく、ここで特に深刻なのはシカの生息数の増加で、シカが地表の下草や樹木の樹皮まで食べ尽くすために植生の健全な更新が阻害されて、放置しておくと10年、20年の単位で急速に植物相が変わってしまうのである。シカが増えている直接の原因は積雪量の減少だが(ニホンジカは豪雪地帯では冬を越せない)、もとを辿れば人間の活動に伴う気候温暖化の問題に行き着く。戦場ヶ原では現在、延長十数キロにも及ぶ侵入防止柵が設けられる等、シカの侵入を防ぐための努力が続けられている。
 今年のハイキングへの参加者は総勢15人。最高齢は70代後期高齢者から小学校3年生の子どもまでのバラエティに富んだメンバーとなった。梅雨末期の集中豪雨の報道が西日本から伝わるなかで、戦場ヶ原では運よく明るい曇天で、さほど気温も上がらずという絶好のハイキング日和となった。奥日光高原の最上段に位置する豪快な湯滝からハイキングをスタート。シカ侵入防止柵のゲートを通って戦場ヶ原に入り、多くの高山植物が咲き誇り、野鳥のさえずりが響き渡るなか、コースのほぼ全域に木道が整備された、アップダウンの少ない快適な3時間の湿原散策を楽しむことができた。
村上 淳(むらかみ・あつし)
東京都建築士事務所協会理事、株式会社山下設計
1956年秋田県生まれ/1982年 東京工業大学理工学研究科修了後、株式会社山下設計入社/現在、同社監理技術部門長/中央支部