支部研修旅行──発電所・岡倉天心・晴れ男
台東支部|令和元(2019)年7月19〜20日@福島県いわき市、茨城県北茨城市
鈴鹿 美穂(東京都建築士事務所協会台東支部、川島鈴鹿建築計画)
IGCCの10号機を背景に。
石炭の山の下部中心から運炭コンベアへ払出している。
クビナガリュウは飛びません。泳いでいました。
茨城県天心記念五浦美術館ロビー。(内藤廣設計)
国宝 白水阿弥陀堂。
帰りには日立市役所へ立ち寄る。(SANAA設計)
 今年の支部研修旅行では、いわき市にある「常磐共同火力勿来発電所」を、ご好意により見学させていただけることになり、福島県いわき市と茨城県北茨城市を、2日間で巡った。
常磐炭礦と火力発電所
 勿来発電所は、幕末から石炭を産出する土地柄であったことから、戦後の電気需要の高まりに応じて誕生した。以来効率化と環境負荷低減のための技術開発を続けている。私たちはその歴史そのままの7号機〜9号機、画期的な進歩を遂げたIGCCの10号機を、その迫力にワクワクしながら見学した。
 続いて発電所と運炭コンベアでつながる屋内貯炭場へ。中国やオーストラリアから運ばれるという石炭の山は美しく、その屋根構造とともに、じっくりと鑑賞した。この火力発電による電気の半量は、東京電力に供給されている。
 続いて訪れた「いわき市石炭・化石館ほるる」は、常磐炭礦の歴史と、8500万年前の地層から発見されたクビナガリュウなどを展示している。人の手で石炭を掘っていた水戸藩の時代から、機械化されていくまでの歴史を、解説していただきながら見学できた。
岡倉天心らの創作の地
 北茨城市の五浦は、近代日本においてマルチな才能を発揮した岡倉天心らが、新しい日本画の創造を目指して制作に励んだ理想郷だった。岸壁に沿って残る天心邸や六角堂の「天心遺跡」を散策し、さらに「茨城県天心記念五浦美術館」を見学した。この美術館は五浦の海岸を臨む高台にあり、内藤廣さんの設計である。
いわき市の見どころ
 国宝の白水阿弥陀堂を訪れることも欠かせない。中尊寺金色堂を建立した藤原清衡の娘が創立したという阿弥陀堂は、浄土庭園をまっすぐに歩きながら近づいていく。見飽きることがない美しいプロポーションだ。
 昼食とお土産選びに立ち寄った「いわき・ら・ら・ミュウ」で、海の幸を山ほどいただく。ショッピングモールの一角に、東日本大震災の被害についての展示があった。急遽お土産は二の次になり、津波被害の写真や避難所の再現などに見入った。同じ漁港に建つ小名浜魚市場は立派に再建されており、活気あふれることを願った。
 初めて支部研修旅行に参加したが、日頃から懇親を怠らない台東支部だけあって、楽しく内容の濃い旅行であった。長雨のさなか、なぜか見学中だけは晴れるという、「自称晴れ男」続出の2日間だった。
鈴鹿 美穂(すずか・みほ)左
建築家、川島鈴鹿建築計画共同主宰、東京都建築士事務所協会台東支部1966年 神奈川県生まれ/1989年 東京家政学院大学卒業