タイル工場見学と岐阜県の伝統と技術を訪ねる旅
新宿支部|令和元(2019)年6月7〜8日@岐阜多治見、高山、白川郷
金井 修一(東京都建築士事務所協会新宿支部監事、株式会社シティコンサルタンツ一級建築士事務所)
日東製陶所前で。
日東製陶所多治見工場。タイルの焼成。
高山。組み上げられた吹き抜け(吉島家住宅)。
吉島家住宅の座敷。
白川郷。和田家前集合写真。
 今年(令和元/2019年)の研修旅行は株式会社日東製陶所さんのご協力を得て、同社岐阜県多治見工場でのタイル製造の見学を中心に、岐阜県研修の旅を実施した。
 下呂温泉宿泊後、飛騨高山で「吉島家住宅」と「日下部家住宅」、白川郷で「和田家住宅」といずれも国指定の重要文化財の視察を行い、富山県高岡経由で東京に戻るという、東海・中部・北陸をぐるりと一周する旅となった。その経過を報告する。
 6月7日(金)早朝の新幹線で名古屋へ。名古屋駅改札外の銀の時計周辺は大変な混雑で、名古屋の元気さで目が覚めた。生憎の雨だが、ここからは大型バスなので移動に心配はない。視察旅行の楽しみのひとつはバスガイドさんの滔々と溢れる名調子を聞くことでもある。今回も岐阜県に纏わる沢山の知識のシャワーを浴び、にわか岐阜通気分である。
多治見
 視察の1件目は藤森照信さん設計の粘土山をモチーフにした「多治見市モザイクタイルミュージアム」。学芸員の村山さんの案内で、坑道をイメージした階段を一気に4階まで行き、各階の展示とタイル生成の工程を学んだ。各地から収集したタイル張りの製品や建物の一部、廃業銭湯のタイル絵などが展示されており、懐かく、楽しく学べる施設である。
 その後株式会社日東製陶所が倉庫をリノベーションした「スワンカフェ」で昼食をいただいた。日東製陶所の社員とタイル職人の想いが詰まったカフェである。床・壁・テーブル・箸置きにマグカップにといたるところにタイルを使用し、天井からのランプシェードに釉薬桶を再利用するなどタイル愛が詰まったカフェであった。
 日東製陶所多治見工場では1日10万㎡以上を一貫生産するという各工程を見学した。成形・施釉・焼成・選別・加工・検査・出荷と全工程を一貫生産できるのは釉薬づくりからスタートした会社であるが故とのことで、釉薬研究所であらゆるニーズの色を生出し、かつ再現性に優れている、と自信が込められている。若い社員が多く、タイルの町多治見市で働くことの気概を感じることができた。タイルに浸かった1日は天下の三名泉下呂温泉宿泊で終了した。
高山
 2日目は檜の産地東濃を流れる飛騨川沿い、御嶽山の西側を北上し宮峠の分水嶺を超えて高山盆地へ入った。観光客の多い高山市内で「吉島家住宅」と「日下部家住宅」を見学した。名工による、造り酒屋の面影を伝える商家と江戸建築様式の邸宅が相接して建てられている。いずれも入口土間の大黒柱を中心に梁と束で豪快に組上げられた吹抜けと差し込む光が印象的で、誰もがしばしその構成美に見とれていた。内部はすべて見学でき、飛騨の匠の技の凝縮を見ることができる。その後匠の建築の印「雲」を見つけながら市内散策や地酒の調達にと、街歩きを楽しんだ。
白川郷
 昼食後、山深く白川郷へと移動。駐車場から住宅群への吊り橋は大混雑でインバウンドが実に多い。「和田家住宅」はこの地区最大の合掌造りで300年以上も経過している。現在も生活が営まれているが、住宅内部も見学することができた。30年毎の屋根の葺き替えは、茅、人手と技術、資金の調達にたいへんな苦労があるが,この雄姿を永く維持されるよう願うばかりである。
 ここで岐阜県を北上しながらの視察を終え、一転東へ向かい新高岡駅から新幹線で帰路についた。今回のタイル製造と重要文化財を訪ねる旅は、技術と文化の深さに触れた良い研修となった。株式会社日東製陶所さんのご協力と丁寧なご案内に感謝いたします。
金井 修一(かない・しゅういち)
東京都建築士事務所協会新宿支部監事、株式会社シティコンサルタンツ一級建築士事務所