私の趣味 ㉒
建築と写真
大平 孝至(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員、台東支部監事、株式会社ダイリン一級建築士事務所)
 私の趣味は、小学校のころは絵を描くことから始まり、中学生のころに父の小さなカメラを使って絵のスケッチとして写真を撮り始めたことから、写真というもうひとつの趣味への第一歩が始まりました。
 小学校のころから建物と風景の絵を描くのが好きで、特に興味があったのは季節や時間の移り変わる自然の中に佇む建物でした。高校の時は美術部と写真部を行ったり来たりしながら、たまに夜は天文気象部で天体写真を撮り、趣味と高校生活を楽しんでいました。進学を考えた時に「絵描きになりたい」と父に言ったところ「絵描きでは食べていくのは難しい」といわれ、建物の設計図を描く建築士を目指すことになり、建築と写真が私の趣味となりました。
大学までは絵を描くことがありましたが、大学を卒業すると建築士の仕事は想像以上に忙しく、のんびり絵を描く時間がありません。そこで絵ではなく実際の空間から写真で切り取り、自分の感動の中で生まれてくる思いを絵のようにコンピュータで加工することが、いつの間にか主な趣味となり、絵を描くことは少なくなってしまいました。ちなみに私にとって写真とは、現実を視たとおりに記録するということより、自分で視て感動したことを表現するところが楽しみで、撮影の時も撮影後も色々と手を加えてつくりたいものをつくることなので、より深くはまっていく趣味になっていきました。
 30年前のCADがあまり普及していない中、Macintoshコンピュータで21インチの大きなブラウン管モニタにフルカラーのビデオカードを積んだ当時のCADシステムとしては豪華なスペックは、図面作業とPhotoShopを使って写真の加工ができる仕事と趣味の両方を両立できるマシンでした。今となってはPhotoShopを仕事でも使っていて、趣味が仕事に役立った、ということで振り返ればいい先行投資でした。
 現在は自分で設計した建物の竣工写真を撮ることもたいへん嬉しいですが、その中でも黄昏時の自然と建物のつくり出す、刻一刻と変化していく空間から一瞬を記録すること、そして撮影した写真を好きなイメージに加工することがいちばん楽しく感じる今日このごろです。
私の趣味ということで、自分で設計した建築の写真を含めて、歴史のある建物や新しい建物や、風景自然写真と多くの写真を撮る日々の中から、仕事の写真ではなく趣味で撮影して加工した写真を選んでみました。
黄昏時の東京都庁
 誰もがみたことのある東京都庁を人間の視覚の想像をこえる超広角レンズ(12mm)で撮影、人の多い新宿で静かな黄昏に建っているように表現した、通常ではみることのできない東京都庁。
澄みきった時間に建つ東京国立博物館
 上野公園の正面からフィルム時代の24mmレンズで歪みのない歴史と安定感を強調して撮影、澄みきった深い空にライトアップをより輝く歴史の宝物のように強調した帝冠様式の東京国立博物館。
神々しい鹿島神宮本殿
 御神木と共に鎮座する本殿を35mmデジタル対応レンズで撮影、時代を重ねた荘厳な建物と極彩色の装飾の対比を鮮やかに調整して表現、千木に差し込む光が神々しい神社建築。
夕暮れにたたずむ旭岳ビジターセンター
 雄大な北海道の自然を最近の18mmレンズで撮影、東京に帰ってきてから久しぶりに「絵にしたいな~」と思っている1枚で、自然と一体となる北海道の大きな屋根の建築。
大平 孝至(おおひら・たかし)
東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員、台東支部監事
1984年 東京電機大学建築学科卒業/株式会社ダイリン一級建築士事務所勤務。マクドナルド、松屋、鳥貴族等、チェーン展開の飲食店の建築設計及び店舗デザイン設計をする
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