平成30年度港支部研修見学会
港支部|平成31(2019)年2月1日(金)@仙台、女川町復興の現場
山岸 竜司(東京都建築士事務所協会港支部研修委員、一般財団法人首都圏不燃建築公社)
ナブコシステム株式会社工場見学。
「せんだいメディアテーク」の夕暮れ。
 午前8時30分、東京駅東北新幹線20番線ホームに集合し、平成30年度「港支部研修見学会」は幕を開けた。都合により宿泊先に直行される方以外は、上野や大宮等の乗車組を含め「やまびこ43号」に無事乗車完了した。くりこま高原駅到着後、タクシーに乗り換えて昼食処へ。
ナブコシステム株式会社工場見学
 今回は初の試みとして、協賛会員であるナブコシステム株式会社の工場見学と、ショールームの見学をさせていただいた。2時間弱という短い時間でありながら、事務所棟で説明を受けた後、クリーンな環境にある工場で、ステンレスの切り出しから曲げ加工に至る製造工程を見学した。
 業界屈指の裁断システムと熟練工の匠の技がコラボレートされた結果、優れたステンレス製品が生み出される過程を目の当たりにしたことは、ナブコ製品に対する大きな信頼に繋がった。また、ショールームでは「ステンレス自動ドア」の性能等も確認することができ、さらには、スイカの自動改札機の試作機なども見学させていただき、参加者一同、たいへん有意義な時間を過ごせた。
 その後、仙台に戻り、17時までグループごとに自由行動とした。私は工事中に見学したまま、その後機会がなくチェックしていなかった「せんだいメディアテーク」を訪ねた。
 支部長始め4人で建築ウォッチングを楽しみ、17時30分発のバスで秋保温泉「ホテルきよ水」へ。19時からは参加者全員で親睦会を行い、その後は二次会、温泉、サッカー・アジアカップ決勝観戦等、各位が仙台の夜を満喫されたことと思う。
震災遺構「旧女川交番」。
現在も造成工事が続く女川。
シーパルピア女川よりJR女川駅を見る。
シーパルピア女川で記念撮影。
女川へ
 翌日2日は朝9時出発。東北大震災の復興状況を確認するため「女川」に向かった。チャーターバスで約2時間、予定通り女川震災復興館へ到着した。
 今回、被災地の復興状況視察をプログラムに採り入れたことについては、多くの参加者から高い評価をいただき、研修委員一同、安堵している。その目的は、すべての日本人の心の傷となった東日本大震災から8年が経ち、いま被災地はどのような復興状況にあるのかを参加者に体感していただき、ひとりひとりが災害と復興について考えてもらうことが何より大切であるという考えからであった。
 具体的には、視察の要となったボランティアガイドさんに「あの日」のことを語っていただいた。日本中の誰もが固唾をのんだ津波被害の惨劇。秘蔵のスライドを観ながら、言葉が出ないわれわれに対して、ボランティアガイドさんは、「私たちは大丈夫! 生き延びた人間で女川を守っていくから、どんどん観光に来てください!」と決意の言葉を聞いた。
 その後、バスに乗って高台へ上がり、被災後の避難場所となっていた体育館等を車窓から見ていると、周辺の区画整理と並行して進むサッカーグラウンド等の工事が2020年春の完成を目指して行われていた。ここは、女川町をホームタウンとするサッカークラブ「コバルトーレ女川」のホームグラウンドになるそうで、震災後の長い間、メイングラウンドには仮設住宅があり、第二多目的広場を使用しているとのこと。災害復興が進み、ようやくスポーツ用途として復活するとのことで、多くの人たちが生活再建のため娯楽等を我慢して頑張ってきた思いが結集された施設なるだろうと思った。あらためて本当に望まれる「まちづくり」や「建築」とはこういうものだと感じた。
 見学後は女川町「シーパルピア女川」に移動し、ショッピングを楽しんでもらった。参加者各位の胸に秘める思いの丈からか、海産物等のお土産から飲食に至るまで、それなりの復興の一助になったのではと思う。見送ってくれたボランティアガイドさんの「また来てください!」が心に沁みた研修見学会であった。
山岸 竜司(やまぎし・りゅうじ)
東京都建築士事務所協会港支部、一般財団法人首都圏不燃建築公社