「すみだ耐震化フォーラム2019」 墨田区耐震化推進協議会の活動
墨田支部|平成31(2019)年2月23日(土)@曳舟文化センター
鈴木 文雄(東京都建築士事務所協会墨田支部支部長、墨田区耐震化推進協議会会長)
すみだ耐震化フォーラム2019のチラシ表裏
フォーラム風景と、展示コーナー。(撮影:鈴木文雄)
 「すみだ耐震化フォーラム」も今年で14回目の開催となった。当フォーラムは、われわれ墨田支部も構成団体となっている「墨田区耐震化推進協議会」の1年間の活動報告を兼ねた、防災・減災・耐震化啓発イベントである。毎回、区民が関心を持っているであろう"旬"のお題でプログラムを組んでおり、今年は幅広く防災という観点から「水害」に焦点を当ててみた。
 東京東部低地帯に位置する江東5区(墨田・江東・足立・葛飾・江戸川)にとって、大規模水害時の避難対応は大きな課題となっている。荒川や江戸川などの大河川の下に250万人が暮らす洗面器が置いてあるようなもので、河川が決壊すれば浸水どころか最長2週間も水が引かない区域もあるため、避難が必須となってくる。しかし、このことは意外にも周知されていない。各戸にハザードマップは配布されているが、多くの方は自宅周辺の浸水の深さしか気にされない様子で、「3階にいれば大丈夫なんだね」などの声が多く聞こえた。インフラが途絶えた建物で2週間の籠城は不可能であり、「早期に遠方避難」という正しい認識を持ってもらわねばという思いが、「水害」をお題とするきっかけになったのである。
 午後のプログラムで墨田区都市計画部危機管理担当防災課の金子真也課長に「水害ハザードマップ」を解説していただき、その後、芝浦工業大学システム理工学部環境システム学科の中村仁教授に「墨田区における地震、火災、水害の危険性とその対応」と題した講演をいただいた。線状降水帯や巨大台風などの異常気象による豪雨被害が珍しくない昨今、250万人の広域避難は決して絵空事でなく喫緊の対応課題としてとらえなければならない。これらの講演を通して、いざというときの行動を常に想定する習慣を身につけてもらうことが目的である。
 幸いなことに、現在では正確な気象情報を数日前に得ることができるため、避難する場所を決めていれば水害に関しては早めな対応が可能である。ある意味、予測しやすい「水害」は災害対応の初級編といえる。そこで、「水害」対応シミュレーションをステップにして、それを予測不可能な「地震」(災害対応の上級編)に対して生き残るためのシミュレーション(今できることの確認)に繋げてもらいたいという狙いがある。新年から大きな地震が頻発するなど、新たな元号を迎えても引き続き大地震に対しての警戒が解けることはない。
 午前のプログラムで、墨田区都市計画部防災まちづくり課の小柳堅一課長から「墨田の耐震化は進んでいる」との言葉をいただいたことを大きな励みとして、われわれ「墨田区耐震化推進協議会」は、区内の設計・施工の専門家+行政という官民一体の利点を強みに、これからも災害に負けないまち墨田を目指し尽力していく。
鈴木 文雄(すずき・ふみお)
建築家、有限会社鈴木設計代表、東京都建築士事務所協会墨田支部支部長
1984年 東海大学建築学科入学/1987年 同校中退、東京デザイナー学院建築デザイン科入学/1989年 同校卒業/有限会社鈴木設計一級建築士事務所入社、現在に至る