新規登録建築士事務所実務講習会
──すぐに役立つ業務と経営ノウハウ
文:奥山 安雪(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会委員、北部支部、建築設計アトリエ80)
写真:田口 吉則(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会委員長、江戸川支部副支部長、株式会社チーム建築設計)
講習会風景。
挨拶する児玉耕二東京都建築士事務所協会会長。
(株)東京建築検査機構 確認検査事業部 谷村広一講師
京都建築士事務所協会 西野貴久総務課長
竹山社会保険労務士事務所代表 竹山文講師
レジオン・コンサバティブ株式会社代表 三上紀子講師
 平成31(2019)年2月7日(木)14:00より新宿ワシントンホテル、ペガサス会場にて、東京都建築士事務協会主催の新規登録建築士事務所を対象とした「実務講習会」が開催された。3名の講師を招いて、新たに建築士事務所登録をされた方々と各支部長や協会役員が参加した。また、講演後はテーブルごとで共に会食をしながら意見交換が行われた。受講者は例年より多く48名であった。
児玉耕二東京都建築士事務所協会会長挨拶(要約)
 「建築士事務所をやって行く上で3つのテーマ(課題)があるように思う。ひとつにはよい設計をすること。これは皆さんが得意とするところ。ふたつはマネジメント。これについては協会としてどういった支援をできるか、今、検討しているので、新しくできる支援センターを活用してほしい。そして3つは、経営・営業。この部分は皆さんあまり得意でないと思う。本日の講義を受け、また懇談の中で地域の支部長に話を聞き、気軽に相談できる仲間をつくってほしい。リラックスしながらも講義に集中して、すばらしい建築士事務所へと発展していって下さい。」
講習会1
世界で一番やさしい建築基準法:
(株)東京建築検査機構 確認検査事業部 谷村広一講師
 このタイトルは谷村講師が書かれて市販されている本のタイトルで、これを基に内容の説明があった。  平成30(2018)年の建築基準法改正の要点があり、木造建築物の普及(延焼の恐れのある部分に対して強い建物をつくる)や、既存ストックの利用(グループホームにするなど)、また保育所増のための法改正(採光の問題を改正)についての話があった。さらに防火関連規制の見直しのほか、長屋、共同住宅の遮音防火壁の仕様規定の変更、宅急ボックスの容積率緩和までに至る内容であった。
 法改正については、新規登録者だけでなく受講者全員の関心がある内容であった。
新規登録者に向けて:
東京都建築士事務所協会 西野貴久総務課長
 登録状況や建築士事務所登録の仕方、業務報告制度についての説明があった。登録状況では平成20(2008)年から建築士事務所数が減っていること。事務所登録については連絡が付かず抹消される場合があるので、勤務先や所在地の変更届を必ず出してほしい。これはデーターベースと不一致となり確認申請等の支障となるためお願いしたい。さらに業務報告はたいへん重要であることなどを伝えていた。
 この中で「元号が変わった場合の標識の書き方はどうするのか」という質問と応答があった。これらは新規登録者にとっては重要なことなので真剣に傾聴していたようだった。
講習会2
経営者が知っておくべき社会保険、労働保険について:
竹山社会保険労務士事務所代表 竹山文講師
 「社会保険は働く人とその家族のためのもの(所得補償)、また労働保険は怪我をして働けなくなった時のためのもの」、「毎月発行している『コア東京』にも連載されているので、そちらも読んで戴きたい」と竹山さんは語る。経営者の中には、個人事務所や社員をたくさん抱えている事務所などさまざまな形態の事務所があるが、これは大切なものである。竹山さんの話しはとてもわかりやすく、途中で受講者全員にクイズ形式の質問をするなど、楽しく学べるものであった。筆者も健康保険や年金のところでは興味を持って聞けた。児玉会長の挨拶にあったように、経営についての話があったが、このような保険についての話を聴くことは経営者にとってありがたく、必要不可欠な事項なのだと感じた。
講習会3
設計事務所の業務と活動──設計事務所のネットワークづくり:
レジオン・コンサバティブ株式会社代表 三上紀子講師
 講義の中で特に関心を持ったのは、1日の活動時間についての話。毎日の充実した生活を送るために仕事の時間をどのように使うか、また人との関わり合いの時間を設けその中で、自己研鑽が必要であることを、自らの体験を通して伝えていた。「自分はあるイベントが本会へ入るつながりとなった。入会後、委員会やイベントに参加することで人との出会いやご縁が持てた。また色々な専門家の話が聞け、女性の委員会にも顔を出すこともでき、情報収集することも可能となった」と本会に入会したメリットを述べた。
 今回の講習会での女性講師の話は、ソフトで聞きやすく事務所協会へのよいイメージになったように思えた。
丸テーブルでのディスカッションの様子。
 講義後の情報交換会は名刺交換から自己紹介が始まり、約1時間強を掛けて軽食やケーキをつまみながら、ゆっくり会食をする場が設けられた。
 9つの丸テーブルでは当該ブロックの支部長や協会役員が加わり、緊張が溶けた新規登録者はリラックスして意見交換をしている様子だった。
 最後にテーブルごとに会話の内容を皆に発表する時間が設けられた。
 内容は次の通り。
  • 支部には親切な会員が多いこと。
  • 地域との密着やネットワーク。
  • 働き方改革について。
  • 役所とのつながりについて。
  • 情報をいかにゲットするか。
  • 耐震関係について。
 各テーブルで議論が盛り上がったことがうかがえた。帰り際には、新規登録者などに、コア東京発行の『東京消防庁からのお知らせ』という特集号を受け取ってもらい、閉会となった。
奥山 安雪(おくやま・やすゆき)
東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員、北部支部、建築設計アトリエ80
1953年生まれ/野地建築設計事務所を経て1980年に独立/趣味は「書道」と「躰道」という武道
田口 吉則(たぐち・よしのり)
東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員長、江戸川支部副支部長
1953年東京生まれ/(株)チーム建築設計代表取締役