人材力支援事業運営委員会経過報告
佐藤 孝子(東京都建築士事務所協会人材力支援事業運営委員会副委員長、杉並支部長、一級建築士事務所(有)インターフェース)
人材力支援事業
 人材力支援事業は、(公財)東京しごと財団の委託を受け、休眠人材の育成のための学習、受け入れ企業の雇用環境改善、求人者の職場のあっせんを目的とし、東京都建築士事務所協会(以下協会)と、アデコ株式会社、ピーシーアシスト株式会社で立ち上げた事業である。以下に今までの経緯を報告する。
協会の組織と活動
 協会は、担当副会長、各ブロックの委員、本部理事の構成員で人材力支援事業運営委員会を設置し、平成29(2017)年10月11日にキックオフ会合を開催した。構成委員の多くが女性建築士であるが、これは、女性が働く事例を参加企業に反映し、結婚・出産を機に職場を離れた女性建築士の復帰に期待したため、現役の意見を参考とする趣旨からである。
 当委員会は建築業界コンソーシアム事務局(アデコ株式会社)が作成する進行状況報告案等の、修正及び承認という重責を担っている。平成31(2019)年2月現在、初期目的の事業は順調に推移し現在に至っている。
募集と育成
 本事業の休眠人材の受け入れ候補となる企業募集は、協会会員及び他団体を含めた企業への広報の実施(平成29/2017年10月)、企業に対しダイレクトメール配布、5回にわたる説明会の開催などにより、当初の参加企業目標50社に対し、平成30(2018)年1月末の面談の上、公募より多い54社の企業が参画することが決まった。
 休眠人材支援人数枠は当初は50名であった。表❶に示すように、パンフレットの配布、ホームページの作成やネットを利用した募集活動、協会会員への人材公募に関する依頼文書の配布などを実施した結果、希望者が多かったため、募集枠を大幅に増員し74名とした。平成31(2019)年2月末までに87名の応募があり、面談の上、現在は71名が受講されている。年度末には募集人員枠のすべてが受講を終えると考えている。
 スキルのブラッシュアップとしては、ピーシーアシスト株式会社のOAスクールに入学し、能力に応じて2次元あるいは3次元CAD、BIM等を習得してもらった。法規知識の向上は、磯永聖次委員が編集した建築法規プログラム(本誌1月号参照)をeラーニングで学んでもらった。
表❶ 申し込みのきっかけとなった媒体と人数(平成31年2月現在)
マッチング結果
 最も重要な、最適な職場を紹介するマッチング事業は、求人企業と求職者の合同面接会を6回本協会会議室で実施した。求人企業と求職者間の希望分野で不整合も顕在化したが、現時点ではほとんどの終了者が既に社会復帰しており、この事業の取り組みの効果が証明されたと考えられる。
 図❶で示すように、受講者の男女分布を見ると約75%が女性である。本事業の女性人材掘り起しの狙いは、確実に成果として表れているといえる。
図❶ 受講者71人の内訳
本事業に取り組んで
 本事業においては、募集にWEBなどネット検索が影響あるソースであったこと、参加企業の意識改革(常勤から時短労働などのフレキシブルな労働環境の構築、就業規則の見直し/作成、人材育成の必要性など)を推進しその効果が出つつあること、女性建築士の休眠人材を掘り起こしに成功しつつあること、定年退職者の再雇用創出の機会を与えたことなどが明らかになった。これらは今後まとめて報告する予定である。
 建築士の資格を持ちながら第一線の復帰を果たせない方々、特に女性の方々の背中を、現場で働く私たちが押すことができたことをたいへん意義深く思っている。若い方々にこれからも次々と第一線に戻っていただければ、これからの建築士の働き方のあり方も変わってくると強く感じている。
 以上、ここに、コンソーシアムの実行メンバーと参加企業の努力により、目標達成に向かって推進していることを報告する。
佐藤 孝子(さとう・たかこ)
東京都建築士事務所協会人材力支援事業運営委員会副委員長、杉並支部長、一級建築士事務所(有)インターフェース
1949年生まれ/1971年 東洋大学工学部建築学科卒業/木田建業(株)設計部を経て、1991年 一級建築士事務所(有)インターフェース設立