日光・鬼怒川へ研修旅行
第3ブロック|平成30(2018)年10月21日(日)~22日(月)
奥村 徹(東京都建築士事務所協会大田支部、(株)オクテムデザイン)
大谷石地下採掘場入口。(撮影:奥村 徹)
造り酒屋「渡邊佐平商店」。
日光田母沢御用邸。
東照宮神厩舎。
東照宮陽明門を背に集合写真。(この写真のみ撮影:井桁 正美)
 目黒・渋谷・世田谷・品川・大田の各支部計25名により、第3ブロック研修旅行(日光・鬼怒川方面)が行われた。両日ともに天候や道路状況にも恵まれる有意義な時間の中、5カ所を巡った。
大谷資料館
 初日は東北自動車道経由で栃木へ。宇都宮餃子館で昼食後、大谷石地下採掘場跡の「大谷資料館」(宇都宮市大谷町909)を見学。大谷石とは栃木県宇都宮市大谷の付近で採掘される流紋岩質礫凝灰岩の総称で、フランク・ロイド・ライト設計の「旧帝国ホテル」(現在は明治村に一部保存)や、「自由学園」(実施設計:遠藤新)等での意匠が有名だ。近年では映画やコンサート、プロモーションビデオの撮影等で地下採掘場跡が活用されている影響もあり、有名観光スポットとなっている。地下採掘場はかつては未知なる空間と呼ばれた幻想的で広大な空間であり、第2次世界大戦中は地下倉庫や軍事工場として、戦後は政府米の貯蔵庫として利用された。坑内の平均気温は8°C前後で保たれており、体感的にも非日常的な空間体験となった。次の研修先へ向かう車窓からも、塀や蔵などで多用されている風景が印象的であり、石の街宇都宮を実感した。
渡邊佐平商店
 次に訪れたのは、純米醸造酒に特に力を入れている日光の造り酒屋、創業天保13(1842)年創業の「渡邊佐平商店」(日光市今市450)。歴史を感じさせる店の軒先には、酒林と呼ばれる新酒ができるたびに新しい杉の枝に差し替える杉玉がシンボルになっている。日本酒の原材料や製法区分の解説をいただき酒蔵内を見学。最後に数種類の試飲をさせていただき製法の違いを体感できた。
 この後日光おかき工房(お土産購入)経由で「きぬ川ホテル三日月」に到着。温泉や宴会では第3ブロックの方々と交流する楽しいひと時となった。
日光田母沢御用邸記念公園
 2日目の初めは「日光田母沢御用邸記念公園」(日光市本町8-27)。建物は国の重要文化財。御用邸は皇太子嘉仁親王(大正天皇)のご静養地として明治32(1899)年に造営されたもので、その後の増改築を経て床面積4,471㎡(1,360坪)となり、3階を除くすべての屋根がひと繋がりの1棟の床面積としては国内最大の木造建築とのこと。
 建築の様式としては移築部の3階家が江戸期の数寄屋風書院。明治期の在来部分は京風住宅。大正期増築部分は京都御所の意匠を取り入れた宮廷風となっており、3時代の様式が共存している。また洋式を早くから取り入れられたことから和洋折衷様式となり、さまざまな意匠を鑑賞することができた。総部屋数106室で、内部及び庭からの外観見学も含めると建物規模が大きく時間が足りなかった感もあったが、澄んだ空気の中で格調高い空間体験であった。今回は見学不可であった中庭や下行道(庭師やお付の方々の近道)の見学も期間限定で行われているとのことで、ぜひ再度訪れたい。
日光東照宮
 御用邸を出発し車窓から「日光真光教会」、崖の上に建つ「日光金谷ホテル(別館)」や世界遺産「神橋」(日光二荒山神社の建造物・平成17年平成の大修理)を横目に見、また石鳥居までの間に素屋根のかかった「輪王寺本堂」の修理中の様子もうかがいながら、「日光東照宮」(日光市山内2301)に到着。徳川家康公の霊廟であり平成の大改修後の世界遺産としてよく報道されていることもあり大人気で、平日ながら観光客であふれていた。「陽明門」前で集合写真を撮り、その後は各自自由見学。荘厳な建物群の中、見ざる・言わざる・聞かざるの三猿で有名な「神厩舎」(神馬が生活する場所)のみ素木造りであることが興味深く、対面するきらびやかな上神庫との対比で、質素な建物中の猿がより目に残る工夫がされているようだ。
タツミ北関東工場
 研修行程最後は、「タツミ北関東工場」(日光市猪倉3588-1)にうかがった。
木材プレカットの加工工程の説明をいただき、実際に作業中の工場を見学。実物大の工法模型の展示もあり、工場社員の方と熱心に質疑応答されている姿が印象的だった。木造住宅のみでなく施設系の製作金物も製造されており、これからの木造建築技術に触れることが収穫となった。
 帰りの高速道路も順調で予定より早く到着し、名残惜しくも無事研修旅行を終えることができた。
奥村 徹(おくむら・とおる)
東京都建築士事務所協会大田支部、(株)オクテムデザイン
1988年 日本大学工学部建築学科卒業後、株式会社坂倉建築研究所入社/1997)年 株式会社奥村三男建築設計事務所入社/2005年 株式会社オクテムデザイン代表取締役社長所長就任