武蔵野音楽大学見学会
第4ブロック|平成30(2018)年6月15日
田中 正裕(東京都建築士事務所協会練馬支部支部長)

大学正面エントランス。
サンクンガーデンの緑。
ベートーヴェンホールへ誘う小路。
ブラームスホール。
モーツァルトホール。
ウィンドアンサンブルホール。
オーケストラホール。
ベートーヴェンホールのパイプオルガンの前で記念撮影。
 第4ブロック(中野、杉並、豊島、板橋、練馬)の建築見学として、16名の参加者により、武蔵野音楽大学を見学させていただいた。
 武蔵野音楽大学は、1929年(昭和4年)、この地江古田に設立され、来年2019年に創立90周年を迎えようとしている。西武池袋線江古田駅の北側は閑静な住宅地で、戸建て住宅に囲まれるように大学は佇んでいる。
 周囲の住宅群に配慮して、敷地周囲は建物の壁面線を充分に後退して、緑豊かな散策路を巡らしている。その分限られた敷地面積に対して音楽ホール2棟、教室群3棟、管理棟、アトリウムの合計7棟の建築群が、緑豊かなサンクンガーデンを取り囲むように配置されている。サンクンガーデンは学食(いまどきはキャンパスレストランというらしい)に隣り合うように配置され、昼休みなどは音大生の憩いの場になっている。建物のいたるところから眺めを変えてサンクンガーデンが見られる。このことから、サンクンガーデンがキャンパスプランの中核になっていることが計り知れる。
 旧キャンパス時には、音が周囲の住宅に漏れ、大きな問題となっていたらしい。窓の遮音と近隣住宅との物理的な距離を取ることによってこれらの問題を解決している。一時期は入間キャンパスと分散して使っていたが学生の移動時間に大きな負担を掛けるため、キャンパスは江古田に集中することになったらしい。
 音楽大学であることから、ほぼすべての教室、音楽ホールには音響技術が取り入れられ、永田音響設計と大林組技術研究所の技術力によるところは大きい。建物内部だけでなく、外壁のタイルの色合い、テクスチャーにもかなりの時間を掛け、愛知のタイル工場にまで足を運んでいる拘りようである。さらに新キャンパスには旧キャンパスに残されていた思い出のある建築部材も取り込んでいる。卒業生への配慮だろうか? 唯一、旧キャンパスから保存された「ベートヴェンホール」には1961年に日本で最初の本格的パイプオルガンが設置され、当時中学2年だった小生は、わが人生初のパイプオルガンの音量に圧倒された思い出がある。約半世紀がたった今、武蔵野音楽大学と自分の人生の奇妙なえにしを感じる。
 最後にお世話になった大内先生、広報の黒瀬さま、そして武蔵野音楽大学の卒業生の皆様に感謝致します。
田中 正裕(たなか・まさひろ)
建築家、東京都建築士事務所協会練馬支部支部長、有限会社櫂建築設計事務所代表取締役
1951年 新潟県生まれ/1977年工学院大学建築学科 山下司研究所を卒業/1979年(株)神谷・荘司計画設計事務所に入所/1989年ブラウン(株)嘱託の後、(有)櫂建築設計事務所を設立、代表取締役となる http://www1.odn.ne.jp/kaiarch/