第56回千代田区建築技術者講習会
千代田支部|平成30(2018)年2月9日@千代田区役所1階区民ホール
古田 秀行(東京都建築士事務所協会千代田支部支部編集員、株式会社エノア総合計画事務所)
会場風景。(撮影:筆者)
YKK80ビルデイング外観。(写真提供:YKK AP株式会社)
西日を遮るアルミスクリーン。(写真提供:YKK AP株式会社)
 今年も恒例の千代田区建築技術者講習会が、千代田区環境まちづくり部建築指導課主催、千代田支部の後援により、千代田区役所1階区民ホールで開催されました。
民泊に関する千代田区の対応
 全体で4つのテーマの最初は「住宅宿泊事業法(民泊)に関する千代田区の対応について」と題して千代田区の生活衛生課主査より説明がありました。平成29(2017)年6月に住宅宿泊事業法が制定され、住宅において「人を宿泊させる行為」を、住宅宿泊事業の届け出を行うことで年間180日まで行うことが可能となります。法施行は平成30(2018)年6月で、届出等が3月から開始となります。
 千代田区においても条例制定に向け準備中で、条例に関しての区の基準(案)が示されました。千代田区では家主居住型を中心に民泊を認める方向ですが、全体的な規制は強いと考えられます。
神田警察通り賑わい社会実験
 次に「神田警察通り賑わい社会実験2017」についてUR都市再生機構千代田区エリア計画課長より説明がありました。将来の神田警察通りを車中心から人中心の通りに変え、周辺にお住まいの方や働く方にとって、未来の神田のライフスタイルやワークスタイルを考えるきっかけづくりとして平成28(2016)年秋にスタートした社会実験では、車道の一部にフリースペースを設置し、オープンワークショップ、トークセッション、行動調査を行いました。その後平成29(2017)年春に報告会を行い、「神田らしいまちの将来像の共有+多様な関係者による連携」を同年秋の社会実験の目標と定めました。アイデア会議と講評会を通じて設定された12の企画アイデアをもとに同年10月23~29日に実施され、「神田らしいまちを継承するためのビジョンと方策づくり」がまとめられました。画一的ではない地域の持つアイデンティティを大切にした街づくりが今の時代求められているものと思います。
YKK80ビル
 次に「YKK80ビル」について、YKK AP株式会社(千代田支部協力会員)と設計者である株式会社日建設計(千代田支部正会員)より詳しい説明がありました。「YKK80ビル」は、秋葉原駅至近の千代田区神田和泉町に建ち、地下2階、地上10階、SRC造、CFT造、免振構造、延べ床面積約21,000㎡の本社オフイスで、「都市における社会環境ストックをつくる」というコンセプトによりデザインされています。特筆すべきは、環境配慮とデザインをうまくバランスして設計されている点です。
 特徴は、西日を遮るスクリーンと庇、眺望を確保しながら日射をカットするクライマー式ブラインド内蔵ダブルスキンウインドウ、更新が容易な外部に設置した配管・ダクトなど。特にスクリーンは「すだれアルミスクリーン」と称され、デザイン上も顔として機能する部分でもあり、YKK APによる多数の実物モックアップ製作、強度実験を繰り返し、試行錯誤を経て作製されました。こうして完成した「YKK80ビル」は2016年に米国グリーンビルデイング協会の環境配慮に関する認証システムLEED-CSを日本で初めて取得、また2017年に米国暖房冷凍空調学会学会の主催するASHREI Technology Awardsにおいて最優秀賞を日本物件として初めて受賞したそうです。まちなみに配慮したデザインと世界最高レベルの環境性能を両立させた「YKK80ビル」は掲げたコンセプトを見事に実現したプロジェクトであると感じました。
応急危険度判定
 最後に「千代田区応急危険度判定の区実務対応」について、建築指導課担当より説明がありました。応急危険度判定員講習会としては今回で16回を数えます。区内での応急危険度判定対象棟数は約2,000棟で、応急危険度判定に必要な判定士は約120名を想定しており、毎年夏をめどに、東京都のホームページに判定士の募集案内が掲載される予定です。
 今回も約80名の方が講習会に参加されました。今後も千代田支部として、講習会の後援活動を通じ、会員及び建築技術者への情報提供をサポートしていきたいと思います。
古田 秀行(ふるた・ひでゆき)
東京都建築士事務所協会千代田支部編集委員、株式会社エノア総合計画事務所
1957年 東京生まれ/1979年 日本大学生産工学部建築工学科卒業/株式会社間組建築設計部を経て、2003年 株式会社エノア総合計画事務所入社/現在同社取締役 計画設計第一部長
記事カテゴリー:支部 / ブロック情報