★
地球の裏側から一時帰国した友人が、自家製の蜂蜜をプレゼントしてくれた。養蜂→蜜の採取→フレーバーの調合→パッケージデザインまですべて自分と数人の友人で、試行錯誤しながら手がけているそうだ。ひとつはオレンジピール、もうひとつはレモンバームのフレーバーで、世界各国の蜂蜜が手に入る日本のデパ地下でも決して出会えない唯一無二の贈り物。オレンジ味は林檎に、ハーブの方はバターと一緒にパンに塗って食べたら絶品だった。★
バルディビアというチリの片田舎の大学で日本語教師をしながら、週末に自分でつくった蜂蜜、おむすび、味噌、どら焼きを市場で売って生計を立てる友人。おむすびの具となるゆかりも、かつては私がスーパーで買って空輸してあげていたが、今や原料となる赤シソから育ててホームメイドしているらしい。★
ふと、その友人と一緒に南米を巡った際の出来事を思い出す。アタカマ砂漠でトレッキングシューズの靴底がはがれて困っていたところ、現地のバス運転手さんが「30分もあれば、直してあげるよ」と言って、自宅から持ってきた修理道具でチャチャッと直してくれたのだ。★
いつでも、なんでも手に入る便利な日本にいると、自分でできることは自分でやるという極めて当たり前の感覚が退化してしまうことに気づかされた。帰国の度に訪ねてくれる友の生命力溢れるエネルギーは、私にとって蜂蜜以上に栄養に富んでいる。
飛田 早苗(とびた・さなえ)
東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会、株式会社日建設計
神奈川県横浜市生まれ/慶應義塾大学総合政策学部卒業/現在、株式会社日建設計広報室課長
神奈川県横浜市生まれ/慶應義塾大学総合政策学部卒業/現在、株式会社日建設計広報室課長