支部研修会:森鷗外記念館見学セミナー
文京支部
片山 茂樹(東京都建築士事務所協会文京支部、日本建設株式会社東京支店)
外観。
外観。
建物を巡りながら説明する陶器二三雄さん。(撮影:筆者)
 千代田線千駄木駅から西へ上がる「団子坂」を登りきったところに、「文京区立森鷗外記念館」がある。完成後4年半を経て、今はまちなみみにすっかり溶け込んだような佇まいである。
 梅雨明け翌日の平成29(2017)年7月20日に、第10回文京支部研修会として森鷗外記念館見学セミナーを開催した。講師は設計者である陶器二三雄さんにお願いし、建物見学とその後の講義室でのスライドで森鷗外記念館の設計について詳しくうかがった。陶器さんは、この作品により2014年度(第71回)の日本芸術院賞を受賞されている。
 「文京区立森鷗外記念館」は、森鷗外の旧宅であった「観潮楼」の跡地に建っている。昭和37(1962)年から「鷗外記念本郷図書館」として利用された後、平成24(2012)年11月に新たに開館した。地下2階、地上2階、延床面積1,360㎡、地下に展示室・収蔵庫、地上に図書室・講義室・事務室等の施設がある。
 小さな建物であるが、存在感を示すそのひとつが煉瓦貼りの外壁である。レンガを貼った後、現場で目地と一緒に削ったもので、職人それぞれの手による研磨が、微妙な凹凸の肌合いとなり、他では例を見ない豊かな外壁をつくり出している。また地下に大半の施設を配置したため、エントランスから目的の空間である地下展示室への導入が計画上の大きなポイントであった。
 展示室へのシークエンスに対し、遠近法、光、空間構成等多様な手法を使い、気持ちが倦むことなく自然に展示室に到達すること実現していた。「色あせない静かな燐とした建築」をめざし、建物は道路に面して低く構え、街に溶け込むプロポーションを見せていて、時間の経過とともに周辺ともますます馴染んでいる。
 セミナーの後半は「先達に学ぶ」として、意匠の講義もしていただいた。参加者は1学期の終業式を終えた中学生、建築を学ぶ大学生、第一線で活躍されている建築士の方々まで幅広い方々37名の参加が得られ、好評のうちに終了した。セミナー後は陶器さんを囲み恒例の懇親会を開き、興味深いさまざまな話に、改めて建築士として初心にかえる充実した1日であった。
●文京区立森鷗外記念館利用案内(文京区ホームページより抜粋)
【所在地】文京区千駄木1-23-4
【お問い合わせ先】03-3824-5511
【開館時間】10時00分〜18時00分(入館は17時30分まで)
【休館日】第4火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日〜1月3日)、燻蒸期間等
【主な施設】
2階:図書室、講座室
1階:受付・ショップ、カフェ、庭園
地下1階:展示室1・2、映像コーナー
片山 茂樹(かたやま・しげき)
1957年 岡山生まれ/1982年 日本建設株式会社入社/現在、日本建設㈱東京支店勤務
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