伊豆韮山 世界文化遺産を巡る研修旅行
大平 孝至(東京都建築士事務所協会台東支部監事、株式会社ダイリン一級建築士事務所)
 台東支部では年1回研修旅行を行っています。今年(平成29/2017年)は爽やかな風薫る6月9〜10日の2日間、平成27(2015)年7月に世界文化遺産に登録された明治日本の産業革命遺産のひとつ「韮山反射炉」を中心に巡りました。
楽寿園にある旧小松宮彰仁親王の別邸、楽寿館。明治23 (1890)年の建築。
楽寿館。
三嶋大社で記念撮影。
車中。三嶋大社以降はアルコール解禁。
 初日早朝台東区役所近くに集合して、伊豆三島の「楽寿園」(上野公園に銅像のある小松宮彰仁親王の別邸)に向けて出発。移動中は栗田幸一支部長の説明もあり、内部見学は飲酒者不可とのことから静かな車中です。明治時代の京風数寄屋造りの建築を見学。続いて「三嶋大社」を参拝し記念撮影。
江川邸内部を見学。
 韮山まで移動して韮山代官屋敷で昼食。一休みして反射炉を建造した江川家の住宅「江川邸」(韮山役所跡)を見学。主屋の大屋根を支える豪壮な小屋組を土間から見上げて、各自カメラで撮影。
韮山県地図。黄色の部分が韮山県を示す。大日建設(株)HPより転載。
 伊豆韮山は代官支配の名残で江戸幕末から明治維新直後までの3年間ですが韮山県(伊豆・相模・武蔵・駿河・甲斐の幕府直轄地)があり、県庁は伊豆韮山。韮山の代官は鎌倉時代からの豪族を起源とする江川家が世襲していました。
韮山反射炉ガイダンスセンター。背後に韮山反射炉が見える。
韮山反射炉。
木陰でガイドから説明を聞く。
韮山反射炉で記念撮影。
畑毛温泉「大仙家」で記念撮影。
 次に向かう韮山反射炉は大砲鋳造のため嘉永6(1853)年に江川英龍の建言によりにつくられた反射炉で、ここでつくられた鉄製大砲は台場の砲台に設置されました(台場は韮山県だったため)。江川英龍は軍用の携帯食として日本で初めてパンを焼いたことからパン祖とも呼ばれていて、土産売店には「日本で最初のパン」が売られています。
 韮山反射炉周辺も近年整備され、「韮山反射炉ガイダンスセンター」(設計:INA新建築研究所)も平成28(2016)年12月にオープンしたばかりで、コルテン鋼の外壁の建物は内部の展示内容と共にたいへん興味深いものでした。
 夜は伊豆の国、畑毛温泉にて疲れを癒やして、宴会とカラオケで懇親と親睦を深めた会となりました。
伊豆の国市にある願成就院。仏師運慶の数少ない真作の仏像を安置する。
願成就院。
願成就院。
明治期から昭和中期まで利用されていた沼津御用邸。明治26(1893)年に造営された。
沼津御用邸。
沼津御用邸。
沼津御用邸。
沼津御用邸で記念撮影。
 2日目は「願成就院」(源頼朝公祈願所・北条時政公菩提所・足利茶々丸公方菩提所)へ。開館時間前に到着して、ボランティアの観光ガイドの方も滅多に聞けないという住職の説明で、運慶作の国宝仏像、阿弥陀如来坐像、不動明王および二童子立像、毘沙門天立像を見学。台東区浅草との関係がたいへん深い願成就院で、灯籠や壁に掛かる浅草の名士の名前にも全員が感動。折しも運慶の国宝仏像は上野公園の東京国立博物館で開催される特別展(2017年9月26日 〜 11月26日)で台東区にやってきます。
 バスは最後の見学場所「沼津御用邸」へ。沼津御用邸ではボランティア観光ガイドの説明を聞きながら、建物内部や調度品を見学。中庭のサツキがちょうど満開の素晴らしい景色も見ることができました。外に出て建物外観を楽しみながら庭園の散策。粋な生垣や花々を見、御用邸記念公園前の島郷海岸からは駿河湾と伊豆の山々を眺めて伊豆の自然を満喫しました。
 伊豆韮山の世界文化遺産を巡る研修旅行は、幕末から明治、大正と日本の産業革命の歴史を建築と鉄鋼を徹して感じられる旅行で、広大な韮山県の姿や一時期ですが同じ県であった台東区と韮山役所跡の江川邸や願成就院が、古くから深い関係があることに感銘を受ける研修旅行となりました。
伊豆韮山研修旅行マップ。
大平 孝至(おおひら・たかし)
1984年 東京電機大学建築学科卒業/株式会社ダイリン一級建築士事務所勤務。マクドナルド、松屋、鳥貴族等、チェーン展開の飲食店の建築設計及び店舗デザイン設計をする。
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