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倉持 健夫
東京都指定有形文化財となっている「百段階段」。昭和10(1935)年に建てられた木造建築物である。目黒にある「ホテル雅叙園東京」にあり、現存する貴重な建築物である。
雅叙園は宿泊所の印象が強いが、もともとの歴史は料亭であった。食事を楽しみ、晴れやかな宴が行われた7つの部屋を、直通型の99段の長い階段が繋いでいる。99段の階段の踊場ごとに部屋が配置され繋がっているような感じである。空間を体感するとこの立体配置が把握できると思う。ちなみに7部屋はフロア下から順に、十畝の間、漁礁の間、草丘の間、星光の間、清方の間、頂上の間というふうに、部屋ごとに名前がついており、それぞれ雰囲気や趣向が異なっている。各部屋の天井や欄間、壁面は、驚くほどの絵画、彫刻、装飾が施されている。当時の著名な画家たちがそれぞれつくり上げたもので、このような豪華な装飾が現存するのは珍しいと思う。
この百段階段はいつも多くの人で賑わっている。それは、人を集める仕掛けにあると思う。この7つの部屋を使って年に数回アート展等が催されていて、いずれもこの7つの間の雰囲気を損なわないことを意識した展示であることだ。たとえば、お雛様の展示も有名であるし、和の灯を展示したりと、和文化が多いことも演出として面白い。催事の度に足を運べる名所である。
情報委員会を経て、重鎮から編集専門委員会に誘われ、あれよ、あれよと8年が過ぎました。どっぷりつかりましたので、今回卒業をさせていただきます。また新しい風が吹いてすばらしい『コア東京』に進化していくことでしょう。私としては、本業、支部活動、そして趣味に、がんばって生きます!!
倉持 健夫(くらもち・たけお)
東京都建築士事務所協会編集専門委員、墨田支部副支部長、株式会社倉持設計工房
1970年生まれ/1992年 浅野工学専門学校 建築工学科卒業
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