賛助会員会主催特別講演会「測位衛星を用いた新しい地震予測の展望」
谿口 阿佐美(東京都建築士事務所協会賛助会員会情報委員、JFE鋼板株式会社)
講演風景。
 東京都建築士事務所協会賛助会員会は、平成29(2017)年6月1日15時半より、東京都建築士事務所協会会議室にて特別講演会を開催した。
講師には測量工学の権威である村井俊治東京大学名誉教授をお招きし、『測位衛星を用いた新しい地震予測の展望』というタイトルで講演いただいた。
 講演会には正会員・賛助会員あわせて70名が参加した。
 大内達史東京都建築士事務所協会会長のご挨拶から始まり、佐藤登賛助会員会会長の開会のご挨拶ののち、村井教授の講演が始まった。
 前述の通り村井教授は測量工学の研究をされてきたが、地球は地震の時に大きく動くだけでなく、地震の前にわずかに前兆として異常に動くことを検証し、この前兆を測量すれば地震予測に役立つと15年前に考え、世界で誰も成功していない最も難しい技術である地震予測を人生の第二のテーマとして研究を始めた。東日本大震災の前にも異常な前兆を把握していたが、その時は発信する手段がなく、科学者として悔いが強く残り、「命を救いたい」との思いから株式会社地震探査機構を設立した。
 病気の診断を例に「過去の病歴だけで将来の健康を予測する方法」ではなく「現在の健康診断から将来の健康を予測する方法」で地震予測している。具体的には測位衛星(一般的にはGPSとして知られている)で観測される電子基準データより地殻変動による異常を発見し、地震を予測する。最近ではNTTドコモが支援する独自の電子観測点のリアルタイムデータの利用で精度が向上した。講演会では過去に起きた地震の検証と今後起きる可能性のある地震の予測についてお話いただいた。講演会後は質疑応答の時間も設けられ、参加者からの質問も多くいただき、予定時間を超過して終了となった。
 日本では挑戦した勇気より失敗したことに対する叱責の方が大きいが、命を救うために当たる当たらないに惑わされず、科学的根拠に基づき信念を持って「異常は異常」と発信する強い姿勢に村井教授の「人の命を救いたい」という想いが伝わった。株式会社地震探査機構は政府の援助などは受けておらず、メールマガジンの会員の会費のみで運営し、電子観測点も自ら設置し、精度の向上に日々努めている。
谿口 阿佐美(たにぐち・あさみ)
東京都建築士事務所協会賛助会員会情報委員、『コア東京』コントリビューター、JFE鋼板株式会社 流通営業部第一室
記事カテゴリー:支部 / ブロック情報