VOICE
『コア東京』2015年7月号編集後記
中田 千恵子(東京都建築士事務所協会編集専門委員会副委員長)
半年前のことです。人と人のつながりの不思議・機微を痛感する出来事を体験しました。20年来、ご無沙汰していた大先輩からの電話で、ある仕事の実施設計を手伝うことになったのです。やったことのない鉄骨平屋の厩舎です。知らないジャンルで興味だけで引き受けたようなものですが、大反省することになりました。
躓いたのが馬たちの出入口の吊戸です。馬力に見合う扉・吊り金物・振れ止めなどの設計です。メーカーに相談してもよい返答がもらえず、知り合いはもちろん、ネットなどで探しましたが思うようにいきません。周りを巻き込んで、相当迷惑を掛けました。ストレスで眠れない日が続いたそんな時、年2・3回の間隔で営業に来所する設備関係の女性が見えたので、女性同士の気安さから愚痴を聞いてもらったところ、中央競馬場の設計をしている建築士を知っているとのことです。渡りに船、いいえ、彼女が天使に見えました。紹介していただいたその方は、(よほど私が悲壮感を漂わせていたのかもしれませんが)同じような条件の設計図書を選んで見せてくださいました。それのみならず、扉の製作会社を紹介してくださったのです。おかげさまで、それから、とんとん拍子に事が運びました。
大勢の人に助けていただいて感謝の念に堪えません。ちょっとした人のつながりがこんな風につながったことに、一種の畏怖を感じました。つくづく、人との出会いは大切にしなければ……と思います。反省と感謝、出会いの大切さを実感した出来事です。
夏真っ盛り! 現場監理など外出が多いと思います。熱中症にお気を付け下さい。水分補給と塩アメがいいとか。
中田 千恵子(なかだ・ちえこ)
1953年東京生まれ/インテリア設計事務所スペース201、日研学院講師を経て現在、一級建築士事務所ハウジング工房代表/東京都建築士事務所協会編集専門委員
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