思い出のスケッチ #305
あだち五色桜と都市農業公園── 桜と公園 ──
横村 隆子 (東京都建築士事務所協会足立支部、横村隆子YHT環境設計)
 鹿浜にある都市農業公園の古民家としだれ桜です。あだちは昔、農村地帯でした。「あだちのおいしい給食」で使われる「あだち野菜」の農地が今も点在しています。都市農業公園は、昭和五九(一九八四)年、区政五〇周年記念として江戸時代後期の元花畑町の茅葺き屋根の農家(区有形民俗文化財)を解体移築して農景観をつくり、自然と触れ合い、農業を学ぶ公園として開園しました。隣接する荒川河川敷の花壇と共に花の公園として有名です。
 三月末からの染井吉野(淡紅色)から五月のひよどり桜(紅紫色)まで、約五〇種類二九〇本の桜があり、荒川姉妹河川のワシントン、ポトマック河畔から里帰りした三三種類八五本の五色桜(五色とは多くの色や種類の意)も楽しめます。鬱金(淡黄緑色)、御衣黄(淡緑色)、関山(濃紅紫色)、江北匂(淡紅色)、普賢象(淡紅色後白色)、薄墨(白色)など珍しい品種も多くあり、四月初旬〜中旬に開催される「五色桜まつり」は一重や八重の桜で彩られます。
 明治一八(一八七七)年ごろ、荒川堤には七八種約三、〇〇〇本の五色桜がありました。足立区の木は「桜」で、あだち五色桜の復活を願った「平成五色桜オーナー事業」により荒川堤の桜並木が復活され、多くの公園や通勤路の桜並木の開花、新緑、紅葉、落葉が、日々の生活に四季の移ろいを伝えてくれています。また、江北北部緑道公園には、秋の桜まつりがあったらよいと思えるほどの約一〇〇本の十月桜の散歩路があり、向寒期に淡紅色の花が生命力と元気を与えてくれます。
 あだち五色桜もお花見のひとつに加えていただけましたら幸いです。
横村 隆子(よこむら・たかこ)
東京都建築士事務所協会足立支部、横村隆子YHT環境設計
1955年 東京都生まれ/1977年 日本大学理工学部建築学科卒業後、黒澤隆研究室、板垣元彬建築設計、水沢工務店設計部、UG都市開発を経て、1996年 横村隆子YHT環境設計設立