一般社団法人東京都建築士事務所協会 第89回定時総会
 
栗田 幸一、青木 雅哉、安田 浩司、田口 吉則(東京都建築士事務所協会編集専門委員会)
2016年6月30日、東京・新宿の「京王プラザホテル」にて、「一般社団法人東京都建築士事務所協会 第89回定時総会」が開催された。4部構成で、第1部「定時総会」、第2部「第42回東京建築賞表彰式」、第3部「定時総会特別講演会」が同ホテル「花の間」で、第4部「懇親会」が「コンコードボールルーム」で開催された。
挨拶する大内達史東京都建築士事務所協会会長。
議長団。左より、金井修一新宿支部長、山崎眞豊島支部長、鈴木文雄墨田支部長。
理事席。
三井雅貴新理事。
家泉慎司前登録センター長。
第89回定時総会(13:30〜14:50、4階「花の間」)
定時になると、高橋浩事務局長の司会進行で、物故者への黙祷がありました。続いて定款第31条第1項に基づき、総会定足数1,556名の過半数779名に対し、出席者104名、その他の表決706名の計810名で定足数を超え、定時総会が成立することの報告があり、定時総会開会の宣言がなされました。引き続き、加藤昇副会長による「建築士事務所協会憲章」の朗読があり、一同身の引き締まる思いがしました。議事に先立って大内達史会長からは、以下の内容の挨拶がありました。
(一社)日本建築士事務所協会連合会総会において会長に再選されたこと。2015年9月に現在の場所へ当協会事務所を移転したこと。青年部会に力を入れていくこと。2020年へ向けて東京都に対してデザインビルド関係の提案をしていること。開かれた(一社)東京都建築士事務所協会となるため機構改革に取り組んでいること。改正建築士法の普及に取り組んでいること。特に設計事務所の廃業が余りにも多く、会員の増加が思うに任せないが、会員事務所の青年層に働きかけて、総数の30%を当会の会員にしていきたい。そして、本会が日本全体の設計事務所に主体的に働きかけていきたい、との挨拶でした。
山崎眞豊島支部長が議長に、金井修一新宿支部長、鈴木文雄墨田支部長が副議長に、山口久男荒川支部長、田中良治世田谷支部長が議事録署名人に選任されました。
議案の審議に移り、第1号議案「平成27年度事業報告の承認に関する件」は前川秀則専務理事から報告があり、建築士法改正施行への取り組み、会員増強により64事務所が入会したが、廃業などによる会員の減少を差し引いて純増は5事務所にとどまったことなどの報告がありました。
続いて第2号議案の「平成27年収支決算の承認に関する件」が発表され、事務所移転に関して出費が大幅に増えたことが河元幸男経理課長により、監査結果が平松良洋監事により報告されました。
続いて第3号議案「役員の改選に関する件」が岡部成役員選出管理委員長から発表され、三井雅貴さんが新たに理事に選任されました。
ふたつの質疑の後、1〜3号議案が承認されました。
報告事項として「平成28年度事業計画」、「平成28年収支予算」がそれぞれ話されました。
続いて前登録センター長の家泉慎司さんの永年の功績に対しての表彰がなされ、西倉努会長代行の挨拶により総会がお開きとなりました。
(栗田 幸一/編集専門委員会)
左:栗生明東京建築賞選考委員会委員長による講評。右:東京都知事賞の表彰状授与。
左:上野雄一東京都都市整備局技監。中:可児才介東京建築士会副会長。右:藤沼傑日本建築家協会関東甲信越支部支部長。
第42回東京建築賞入選作品のパネル展示。
第42回東京建築賞表彰式(15:10〜16:10、4階「花の間」)
定時総会に引き続き、第42回東京建築賞表彰式が行われた。
まず宮原浩輔理事より開会の挨拶があり、続いて受賞者が1組ずつ紹介された。その後は選考委員会の栗生明委員長より各作品に対する講評が述べられた。いずれも力作揃いで、特に上位となる作品の審査にはご苦労されたことがうかがえる。
本年は東京都知事賞1作品のほか、4部門で16作品が受賞した。受賞者を代表して都知事賞の松田平田設計には東京都都市整備局の上野雄一技監より、また各部門の最優秀賞3組には大内達史会長より、賞状と記念品が贈呈された。各受賞者の神妙な面持ちがとても印象的であった。
続いてご来賓の方よりお言葉を頂戴した。東京都都市整備局の上野技監からは、「諏訪2丁目住宅建替事業は、建替後に多くの若い世代が入居し地域が活性化されるなど、今後の団地再生のモデルとなる画期的な事業であり、都知事賞に相応しい作品」、また東京建築士会の可児才介副会長からは「3会が協働すれば大きな力となるので、業界発展のためにこれからも力を合わせていきたい」、日本建築家協会関東甲信越支部の藤沼傑支部長からは「都市景観に正面から取り組み、美しい日本を実現させたい」というご挨拶をいただいた。最後に西倉努会長代行より閉会の挨拶があり、東京建築賞の表彰式は16時過ぎに無事終了した。
(青木 雅哉/編集専門委員会)
特別記念講演「災害で一人の犠牲者も出さない、燃えない燃え広がらないまちづくり」講演風景。
講演する西川太一郎荒川区長。
特別記念講演──災害で一人の犠牲者も出さない、燃えない燃え広がらないまちづくり(16:25〜17:25、4階「花の間」)
表彰式に引き続き、同じく4階「花の間」にて、特別区長会会長の西川太一郎荒川区長による「災害で一人の犠牲者も出さない、燃えない燃え広がらないまちづくり」と題した特別記念講演が行われた。
日ごろから親しくお付き合いさせていただいているという山下登副会長の司会で開演。西川氏は都議会議員から衆議院議員を経て平成16年から荒川区長を務め、平成23(2011)年からは特別区長会会長を務めている。
講演は「東京の防災状況の脆弱性」から始まった。荒川区は「震災危険度ワースト1〜2」といわれているらしい。小川が多く、染物の町として栄えたが、現在その小川は暗渠となっており「狭あい道路」が多くあるため、災害時には消火や救急上での大きな問題となっている。
石原都政の時に区内の70%を不燃化するため「不燃化特区」を申請したが、都の予算がなく、とりあえずできることからとの思いから「水を張った防災赤バケツ2万個」を各地域に設置した。しかしタバコの吸い殻を捨てる不心得者もいるそうだ!
また「永久水利(全6箇所)」と銘打って区内に3箇所の「深井戸」も掘り、日常生活や消火に利用できるようにすると共に雨水利用に関する助成も行っている。区内の中学校10校には「防災部員」が320人もいるといい、毎年まるで運動会のような「荒川防災まつり」を行い、お年寄りから子供まで「防災意識」を持ってもらっているとのこと。防災備品に割れガラス対策のため「運動靴を入れている」というのも素晴らしいアイディアだが、火を使わないことを推進するため「電磁調理器」にも助成をしている。
このほかにも「空き家対策をしたいが持ち主不明の物件が多く除去できない」など、法制度に関わる問題点や、「公園敷地内に保育園を建設できる特区」などと多くの課題や対策を指摘された。
われわれ建築士も地域に根差し、ルーチン業務にとらわれずに色々なアイディアを出して、「楽しい暮らしができるまちづくり」に貢献しなければならないと痛感した。「“家”は資産ではなく、快適に暮らすための“道具”である」との言葉が心に残る。
途中ちょくちょく「脱線」しながらも、色々なエピソードと巧みな話術で、受講者の笑いを誘う場面も多々あり、あっという間の1時間であった。
(安田 浩司/編集専門委員会)
懇親会での大内会長挨拶。
懇親会来賓挨拶風景。
ヴァイオリンとピアノ演奏。
懇親会(18:00〜20:00、5階「コンコードボールルーム」)
桐朋学園大学の女性ふたりのピアノとヴァイオリンによる快い演奏をバックに、お待ちかねの懇親会は事務局の岩渕さんの司会で始まった。まず大内会長が総会が無事終了したことを報告し、建築士法、国立西洋美術館の世界遺産登録、熊本地震の支援について話をした。
来賓の議員さんからは、「東京オリンピック・パラリンピック後の東京のまちづくりをどうするか、力を貸していただきたい」、「皆さんの要望である最低制限価格制度の導入には、プロジェクトチームを組んで頑張っている」、「住宅対策はすべての政策のベースである、住宅の耐震化・防災・空き家対策などに皆さんの力を借りたい」といった期待と励ましのお言葉をいただいた。そして参議院選挙を間近に控えて「わが党をよろしくお願いします」といった訴えの言葉を付け加えることも皆さん忘れていなかった。
邊見隆士東京都都市整備局長は、「皆様方のお蔭で特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震診断は9割以上完了することができた、今後はそれらの中から未工事のすべての建物について個別訪問を実施していくので、引き続きご協力をお願いしたい」と述べられた。続いて関係団体のご来賓の方々が登壇し、宮原克平埼玉県建築士事務所協会名誉会長の乾杯の音頭で歓談となった。
美味しい料理と生演奏で和やかな雰囲気で会話が進む中、賛助会員の紹介があり、佐藤登賛助会会長が代表して挨拶を述べた。そして恒例の中村栄太郎相談役の中締めで盛り上がったところで、竹松和利副会長の閉会の辞によりお開きになった。
(田口 吉則/編集専門委員会)
栗田 幸一(くりた・こういち)
東京浅草生まれ/祖父、父と3代目/1970年 東海大学工学部建築学科卒業/1970〜74年 伊奈建築設計事務所/1975年 父の経営する株式会社栗田建築事務所入社し、現在に至る/(一社)東京都建築士事務所協会台東支部支部長、編集専門委員会委員長
青木 雅哉(あおき・まさや)
1962年静岡県清水市生まれ・静岡市育ち/1985年京都工芸繊維大学意匠工芸学科卒業/1985年〜アパレル、工芸、飲食業界などを経て/現在(株)日建設計広報室課長、東京都建築士事務所協会編集専門委員
安田 浩司(やすだ・こうじ)
建築家、アーキテム・安田計画設計室、東京都建築士事務所協会編集専門委員会、渋谷支部
1954年生まれ/1978年 東京デザイン専門学校卒業
田口 吉則(たぐち・よしのり)
1953年東京生まれ/(株)チーム建築設計代表取締役/東京都建築士事務所協会編集専門委員
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