国および東京都からの回答
東京都建築士事務所協会提出の要望書に対して
(一社)東京都建築士事務所協会は、平成27(2015)年9月1日に東京都へ、10月5日に国へそれぞれ要望書を提出しました。それに対する回答を、自由民主党東京都支部連合会、東京都議会自由民主党、東京都議会民主党よりいただきましたので以下に掲載します。
各要望理由は、『コア東京』2015年11月号および「コア東京web」(http://coretokyoweb.jp/?page=article&id=71)に掲載しました。
平成28年度国家予算、税制改正等に関する要望の回答について
自由民主党東京都支部連合会
政調会長 鴨下 一郎
政調会長代理 中川 雅治
担当議員 平沢 勝栄
要望1:2020年東京オリンピック・パラリンピック施設に関わる都市づくりの設計与条件の策定及びアドバイザリ一等の業務を都市づくりの専門家集団で構成する委員会に委嘱されるよう要望いたします。

(回答)
1. 2020年東京大会の関係施設やアクセス経路等については、大会に向けたハード・ソフト両面でのバリアフリ一化を図るため、大会組織委員会、東京都、国が主催し、有識者・関係自治体・障害者団体・障害者スポーツ団体等も参画するアクセシビリティ協議会を2014年11月に立ち上げ、Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインの取りまとめに向け、検討を行っております。本年春頃を目途にTokyo2020 アクセシビリテイ・ガイドラインを取りまとめ、国際パラリンピック委員会の承認後、その実現に向けて関係者に働きかけてまいりたいと考えております。

2. 本年2月には、2020年東京大会を契機として、競技会場等にとどまることなく、地方を含めた街づくり全体のユニバーサルデザイン・「心のバリアフリー」に取り組み、大会以降のレガシーとして残していくために、オリパラ推進本部の下に「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議」を設置したところであり、今後、有識者等の参画する分科会において、具体的な検討を行っていく予定です。

3. なお、東京都は、「2020年に向けた東京都の取組一大会後のレガシーを見据えてー」において、Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインを踏まえたバリアフリー化の推進について言及するとともに、選手村を「多様な人々が交流し、快適に豊かな都市生活を営むことができる、誰もがあこがれ住んでみたいと思えるまち」にすることや、「競技施設や選手村が集まるベイエリアの交通利便性を向上させ、アクセスを強化」することについても言及しており、今後検討が進んでいくものと考えております。
要望2:建築物の設計・工事監理業務の発注に際しては、改正建築士法の主旨である国土交通大臣が定めた業務報酬基準(告示15号及び告示第670号)に準拠した契約に基づくとともに、建築士事務所の賠償保険への加入促進が図られるような配慮を要望いたします。

(回答)
(業務報酬基準の活用について)
1. 平成27年6月25日施行の改正建築士法第22条の3の4において、設計・工事監理業務について、業務報酬基準に準拠した委託代金で契約締結することが努力義務化されており、業務報酬基準を活用して設計等の業務の報酬の算定に関する合理化及び適正化に努めるよう、地方公共団体、地方整備局、中央官庁の営繕担当部局に対して同年6月24日付けで技術的助言等を発出したところです。

2. 今後、法施行後の活用状況等も踏まえ、引き続き、業務報酬基準の活用について周知徹底を図って参ります。

(賠償保険の加入条件の考慮について)
3. 国土交通省の官庁営繕事業において、賠償責任保険への加入状況を入札手続きに活用することについては、当該保険の補償対象や、保険加入負担と競争環境確保のバランス等について考慮する必要があると考えています。
4. いずれにしても、平成27年6月25日に改正建築士法が施行され、損害賠償保険の契約締結について努力義務化されたところであり、今後の状況を注視して参ります。
要望3:建築物の設計・工事監理業務の設計者選定に際しては、品確法等の主旨に則り、入札方式によらないプロポーザル方式等の価格以外の要素を考慮した選定に依るよう、また、評価基準として「建築CPD情報提供制度」の活用や事務所協会会員であることの配慮がなされるよう要望いたします。
やむを得ず入札方式を採用する場合には、「最低制限価格の設定」を要望します。

(回答)
1. 国土交通省の官庁営繕事業においては、新築工事の設計業務を中心に原則としてプロポーザル方式を採用するとともに、一部の工事監理業務等では総合評価落札方式を採用しています。

2. プロポーザル方式等では、評価項目の1つとしてご要望にある「建築CPD情報提供制度」(事務局:(公財)建築技術教育普及センター)を活用し、同制度の証明書により評価しています。なお、評価にあたっては品質確保と競争性の確保の視点から、あくまでも業務を担当することとなる技術者の技術力を評価することとしております。

3. 設計者選定方式の考え方やその評価基準を記載している「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」は、ホームページで公表しており、広く周知を図っています。

4. また、公共工事に関する設計の品質確保のために、受注者の適正な利潤の確保やダンピングの防止措置は重要なことと認識しています。会計法の規定により国の事業では「最低制限価格」を設定しませんが、国土交通省の官庁営繕事業における建築物の設計・工事監理業務においては、一定規模以上の業務に「調査基準価格」を設定することとしており、今後も適切に対応してまいります。
要望4:既存不適格建築物で耐震改修促進法による建て替えやバリアフリー化による共同住宅等については、建て替えの促進を図るため、建て替える共同住宅の外形が既存とほぼ同じで、日影、容積等の都市計画関連諸元が建て替える前の状態と変わらない計画については、それらの現行規定の適用を建て蓄える前の共同住宅同様に「既存不適格」として取り扱い、建て替えを可能とする「許可申請制度」を設けるよう要望します。

(回答)
1. 既存不適格は建築基準法の各規定を、既存の建築物について適用すると、既存の適法な建築物が法令の改廃又は都市計画の決定、変更により違反建築物となるという不合理な場合が生じてしまうことから、既存不適格という状態を許容しております。

2. 建築行為の際には、その機会を捉えて既存不適格を解除し現行基準に適合させて建築物の安全性や市街地環境の改善を図ることとしている。(既存不適格状態からなるべく早く脱却させたい)

3. したがって、既存不適格建築物を増改築等する際には上記主旨を踏まえて建築基準関係規定も含め現行基準に適合させる必要があります。

4. ご要望の日影、容積等の規定を既存不適格扱いとする「許可申請制度」は、既存不適格状態を長引かせる結果となることから認めることは出来ません。

5. なお、国土交通省としても既存ストックの有効活用は大きな課題であると考えていることからより利用しやすい法体系とするためにも、既存ストックについて勉強してまいります。
要望5:既存建築ストックの有効活用の円滑化を図るため、既存ストック活用計画に対する建築基準法及び建築基準関係規定の現行法基準の適用の緩和と、既存ストック活用に関する建築基準に特化した法律の整備を要望します。

(回答)
1. 既存ストック活用は国土交通省としても重要課題と考えております。

2. このため既存ストックの有効活用を促進するためにも、一部の増改築等を行う既存不適格建築物については、構造関係規定などの一部の技術基準の適用が緩和されています。

3. 国土交通省としても既存ストックの有効活用は大きな課題であると考えていることから、より利用しやすい法体系とするためにも、既存ストックについて勉強してまいります。
要望6:既存建築ストックの有効活用の円滑化を図るため、検査済証の交付を受けていない「既存建築物の法適合確認」について、持ち主の過重な負担とならない「建築当時の法適合状況調査の方法」並びに「法適合確認手続きの方法」の簡素化を要望します。

(回答)
1. 建築主は、工事を完了したときは、建築主事等の検査を受ける必要があり、検査済証が交付された場合に建築物を使用することが可能となります。

2. このため、検査を受けずに建築物を使用することは違法であり、安全な建築物であるか判断できない状態にあります。

3. 近年、検査済証の交付を受けていないことが、当該建築物の流通や増改築に支障をきたすことが課題となっていることから「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(以下、ガイドラインという。)を平成26年7月に作成し、既存建築ストックの有効活用の円滑化や検査済証のない建築物の流通の促進を図っているところです。

4. 国土交通省では、ガイドラインの一層の活用を図るため改訂作業を進めており、既存建築ストックの有効活用をさらに進めてまいる所存です。
平成28年度東京都予算等に対する要望について
東京都議会自由民主党
幹事長  宇田川 聡史
政調会長 秋田 一郎
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予算要望に対する回答について
東京都議会民主党
政策調査会長 斉藤 あつし
要望1:東京都における空き家対策を策定するため、その撤去、利活用に関する方策の策定に資する実態調査等の業務を本会に委託するよう要望します。

(回答)
1. 空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、区市町村が空き家の実態を把握し、計画を作成することとなっております。

2. 都としては、平成27年度から、区市町村が行う実態調査や対策計画の作成等への財政支援を開始しております。
(都市整備局)
要望2:東京都教育庁所管の施設について、建築基準法第12条第2項に基づく「特殊建築物定期調査」及び同条第4項に基づく「建築設備定期検査」の一括業務委託を要望いたします。

(回答)
現在、都立学校施設・設備の建築基準法第12条第2項及び同条第4項に基づく定期点検については、一級建築士、二級建築士等、同法に規定された資格を有する者で希望する者の中から、地方自治法に定める競争入札の方式により請負者を決定して業務委託を行っており、特定の団体等に一括して委託することは困難です。
(教育庁)
要望3:建築物の設計・工事監理業務の発注に際しては、改正建築士法の主旨である国土交通大臣が定めた業務報酬基準(告示第15号及び告示第670号)に準拠した契約に基づくとともに、建築士事務所の賠償保険への加入促進が図られるような配慮を要望いたします。

(回答)
1. 東京都では、国土交通省告示第15号(平成21年1月7日)を遵守した内容で委託料積算標準及び委託仕様書等の改定を行い、平成21年4月から建築物の設計・工事監理業務の発注に当たってこれらを適用しています。平成27年5月施行の告示第670号についても、国の動向を注視してまいります。

2. 損害賠償保険の加入については、建築士法第24条の9の規定のとおり、建築士事務所の開設者の努力義務によるものと認識しております。

3. また、財務局では、各局及び区市町村に対し、毎年度、委託料積算標準等の説明会を開催し、情報を提供するとともに周知徹底を図っています。 (財務局)
要望4:建築物等の設計・工事監理業務の設計者の選定に際しては、品確法等の主旨に則り、入札方式によらない、プロポーザル方式等の価格以外の要素を考慮した選定方法により、評価基準のひとつとして「建築CPD情報制度」の活用や法定団体である事務所協会会員であることの配慮がなされるよう要望いたします。
 また、やむを得ず入札方式を採用する場合には、「最低制限価格の設定」を要望いたします。

(回答)
1. 東京都では、設計業務の品質確保を図るため、価格競争だけでない、プロポーザル方式の拡充と、併せて総合評価方式を試行しており、その効果を検証するとともに、今後は、さらに適用を拡大する方向で検討しています。また、積算能力のない不良不適格業者を排除することを目的として、まずは、財務局発注の土木設計業務を対象に、平成28年1月1日以降の公表案件から、入札参加者に内訳書の提出を義務付ける試行を実施しています。

2. また、財務局案件においては、プロポーザル方式の評価項目に、建築士等としてふさわしい研修の受講実績を評価するため、「建築CPD情報提供制度J による取得時間数を、平成26年度から追加しています。
(財務局)
要望5:都市計画関連規定の改正で既存不適格となっている共同住宅において、耐震改修促進法による建替えやバリアフリー化による建替えの促進を図るため、建て替える共同住宅の外形が既存とほぼ同じで、日影、容積等の都市計画関連諸元が建て替える前の状態と変わらない計画については、それらの現行規定の適用を、建て替える前の共同住宅同様に「既存不適格」として取り扱い、建替えを可能とする「許可申請制度」を設けるよう要望します。

(回答)
1. 既存不適格建築物の取扱いについては、建築基準法に規定されていることから、法令による対応が必要であり、都独自の判断で緩和することができないため、許可申請制度を設けることは困難です。

2. なお、法令改正については、国土交通省の所管となります。(都市整備局)
要望6:2020年東京オリンピック・パラリンピック施設に関わる都市づくりの設計与条件の策定業務及びアドバイザリー業務を都市づくりの専門家集団で構成する委員会に委嘱されるよう要望いたします。

(回答)
都立競技施設整備については、大会組織委員会、IOC、IPC などの関係者と緊密に連携し、東京に確かなレガシーを残すことのできる大会を目指して、取り組んでまいりました。平成26年10月には、設計内容等のチェック体制の強化及び設計内容の妥当性を確保することを目的に、建築や土木などの外部の専門家により構成される「都立競技施設整備に関する諮問会議」を設置しております。引き続き、関係者と緊密に連携し、施設整備を進めてまいります。
(オリンピック・パラリンピック準備局)
オリンピック・パラリンピック施設整備にあたり海上公園計画を変更する必要がある場合は、港湾審議会等における意見を踏まえ検討を進めてまいります。
(港湾局)
要望7:特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震診断、補強設計、耐震改修の助成期間に対し、更なる延長を要望いたします。

(回答)
1. 都は、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進するため、耐震診断や補強設計、改修工事に係る助成制度を通じて、建物所有者の負担を軽減してきました。

2. 耐震診断により耐震性不足が明らかになっても所有者等の合意形成に至らない建築物もあり、平成27年9月末時点の特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化状況は約8割にとどまっていることから、引き続き耐震化の取り組みを継続できるよう、耐震診断、補強設計及び改修工事の助成期限を延長します。

3. 平成28年度予算額10,107,571千円
(都市整備局)
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