東京消防庁優良防火対象物認定表示制度について
東京消防庁からのお知らせ 第7回
東京消防庁予防課
1 優良防火対象物認定表示制度とは
 東京消防庁(以下「当庁」)では平成18年10月から、火災予防条例に基づく優良防火対象物認定表示制度(以下「優マーク制度」)を実施しています。
 この制度は、法令を遵守し、かつ、防火安全性の向上に自主的・意欲的に取り組んでいる防火対象物を「優良防火対象物」として認定する制度で、防火対象物の防火安全性を向上すること及び利用者に安全情報を提供することを目的としています。
 この制度の対象は、防火管理者の選任が義務付けられている防火対象物としており、劇場、百貨店、ホテルなど不特定多数の方が訪れる用途のほか、オフィスビル、社会福祉施設など、あらゆる用途を対象としています。
 認定を希望する場合は、防火対象物の所有者等管理権原者が消防署長に申請します。申請は、防火対象物単位で行うため、複数の管理権原者がいる場合は、原則として全管理権原者の連名で、全員の総意で申請することになります。
 申請により、消防署長が認定基準に適合していることを確認・審査し、優良防火対象物として認定します。
 認定された防火対象物では、入口など見やすい場所に優良防火対象物認定証(以下「優マーク」)(図①参照)を掲示したり、ホームページに表示したりすることで、防火安全性が高い優良な防火対象物であることを利用者にアピールすることができます(図②参照)。
 当庁では本部庁舎及び管轄署に備え付けの一覧表で、認定された防火対象物を公表しています。さらに当庁ホームページでも公表し、地図上で検索すると認定された防火対象物が表示されるようにしています(図③参照)。
 認定基準は、消防関係法令及び建築関係法令(防火に関する規定)への適合状況に加え、次の項目について基準に達しているかどうかを確認しています。
(1)避難安全性の確認
(2)自衛消防組織とその活動能力
(3)過去の法令遵守の状況
(4)過去の火災発生の状況
(5)自主的な各種防火対策
(6)過去の認定取消状況
 申請時点での防火安全性のみではなく、過去から申請時に至るまでの防火安全の継続性を確認します。さらには自衛消防活動の実効性を評価します。
図① 優マーク(優良防火対象物認定証)
図② 優マーク制度の流れ
図③ 当庁ホームページ・地図情報表示の例
2 優マーク制度の変遷
 平成18年10月の制度開始から、優マークに認定されている建物はおおむね900件前後を推移しています。
 平成27年3月末現在では899件認定されています。様々な用途の建物が認定されていますが、最も多いのは事務所関係の建物で、次いでホテル・旅館等が多くなっています。東京スカイツリーや東京ドームなども認定されています。
 国際都市東京に暮らし、又は訪れる人々の安全・安心の更なる確保のためには、より多くの建物に対して、防火安全対策の向上に係る自主的・意欲的な取組を評価し、防火安全性の高い建物へ誘導する必要があります。
3 新しくなった優マーク制度
 優マーク制度は、申請手続きの煩雑さなどにより、認定基準を満たしていても申請されない状況が見受けられました。
 こうした状況に対して、防火対象物の防火に関する安全性を保持しつつ、制度の一層の充実を図るため、外部有識者を交えた検討部会を開催し検討を行いました。
 平成22年から平成24年の延焼率(延焼火災件数÷対象物火災件数)の平均をみると、防火管理者選任対象物が14.2%、その他の対象物が33.5%であるのに対し、優良防火対象物は0%であるなど、これまで認定された防火対象物において優良な状態が継続して維持されていることが確認されました。
 検討結果を踏まえ、火災予防条例等の一部改正がなされ、平成26年4月1日に施行されました。
 優マーク制度の主な改正点は次のとおりです。

(1)認定期間の延長
 これまで認定された防火対象物において、火災発生時の活動の状況や被害が小さく抑えられていること、優良な取組が継続されていることなどを踏まえた改正により、認定期間が2年から3年に延長されました。
 認定期間の延長に伴い、認定基準のうち、過去の法令遵守状況、過去の火災の発生状況及び過去の認定取消状況についての確認期間も、2年から3年に延長しました。

(2)認定証のデザインの変更
 2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会の開催地が東京に決定し、これまで以上に外国人の訪問者や居住者の増加が予想されることから、外国人の利用者にも認識できるよう、認定証に英語表記を追加しました。
 また、認定証の意味を示す日本語と英語を併記した説明文(図④参照)を認定証の近くに表示できることとしました。防火対象物の利用者に応じ、中国語、韓国語、フランス語など、他言語の表記も可能です。
図④ 認定証に関する説明文
(3)申請手続きの簡略化
 防火対象物に複数の管理権原者がいる場合は、全員の連名で申請することを原則としていますが、多数の管理権原者がいる防火対象物では、事務手続き上の負担が大きいため、これまでも、一定の条件に適合する場合は代表者による申請を可能としていました。ただし、申請図書に、申請について全員の同意を得ていることが確認できる資料や、委任状、規定の様式の管理権原者一覧表などを添付する必要がありました。
 統括防火管理制度の施行に伴い、統括防火管理者の選任が義務付けられる防火対象物では、「主要な者等」による申請の場合、任意の様式で管理権原者一覧表を提出してもらうことで、それ以外の資料の添付を不要とし、申請手続きの簡略化を図りました。
 この申請の場合でも、防火対象物全ての管理権原者の総意で申請することは、これまでと変わりません。

(4)避難安全性の確認方法の変更
 これまでは、全ての防火対象物について、当庁で定める火災避難シミュレーション等(以下「火災避難シミュレーション等」)を活用した検証を行い、その結果を申請図書に添付することが義務付けられていました。
 改正により、法令で検証の実施が義務付けられない防火対象物は、火災避難シミュレーション等による方法以外により避難安全性を確認することとし、火災避難シミュレーション等を活用した検証の結果を添付しなくても申請できることとしました。

 条例等改正後、優マークに認定されている建物は、一年間で84件と着実に増加しています(図⑤参照)。
図⑤ 改正後における優良防火対象物認定件数の推移
4 優マーク制度の安全性と更なる推進
 過去5年間の当庁管内における火災統計によると、優良防火対象物は、それ以外の対象物と比較し、焼損床面積及び死傷者数が低く、高い安全性が明確に表れています。(図⑥、図⑦参照)
 このことから、東京を代表する建物及び多くの都民や来訪者が利用する施設を中心に、積極的に認定に向けて働きかけています。
図⑥ 延焼火災100件あたりの焼損床面積の比較
図⑦ 火災100件あたりの死傷者数の比較
5 防火対象物適合表示制度との関係性
 平成24年5月に発生した広島県福山市ホテル火災を踏まえ、平成25年10月に総務省消防庁から「防火対象物に係る表示制度」が示されました。この制度はホテル・旅館等の利用者へ安全情報の提供及び施設の人命安全対策の確保を図るものです。
 当庁では、「防火対象物適合表示制度」として平成26年10月から運用を開始しています。
 消防法第8条第1項の適用を受ける防火対象物で、地階を除く階数が三以上であるもののうち、消防法施行令別表第一⑸項イに掲げる防火対象物の用途に供する部分が存するもの(同表(16)項イに掲げる防火対象物を含む)が対象となっています。
 すでに優マーク制度により認定された優良防火対象物については、申請書には、数種類の書類の添付が必要となりますが、すべての添付書類を省略(一部条件付き)することができます。また、現地調査も省略できるなど、優良防火対象物認定の審査及び検査の際に確認した項目と防火対象物適合表示制度の表示基準の項目が重複する場合は、表示基準の審査及び検査を省略することができることとしています。
 これは、優マーク制度の認定基準は、防火対象物適合表示制度の表示基準より高い安全性が認められていることから、申請者の負担軽減及び双方の制度の一体的かつ円滑な運用を考慮したものです。
 防火対象物適合表示制度は、ホテル・旅館等について全国統一基準による最低限度の安全性を表示する制度です。このため、法令基準以上の高い防火安全性を示す優マーク制度の認定を前提として運用していきます。
6 優マーク制度の今後
 優マーク制度が浸透し、防火安全性の高い防火対象物が増加することにより、都市全体の防火安全性が向上することから、今後も当庁では、建物利用者に防火上安全な建物の情報を広く提供できるよう、優マーク制度の更なる周知に取り組んでいく予定です。
 さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えて、関連施設等に優マークの認定を促進し、「世界一安全・安心な都市、東京」の実現を目標としています。
記事カテゴリー:建築法規 / 行政