VOICE
 
奥山 安雪(建築設計アトリエ80、東京都建築士事務所協会北部支部)
最近ふとこんな事を考えてみた。
昨年夏に宮城県に行ってきた時、行きは車に便乗し、帰りは新幹線で帰宅した。行きは長旅であったが充実感を持てた。帰りは仕事がありそのために新幹線にしたのだが、あまりにも速く、物足りなさを感じた。若い時に普通列車を使って東北へ2週間ほどのひとり旅をしたことがあり、周りの景色を見ながら駅弁を食べて楽しんだことを懐かしく思い出した。
旅行気分で出掛ける者は、のんびりした時を過ごしたいが、用事を済せて早く帰りたい者にとって新幹線はありがたい。そこから考えが膨らんで、真逆の言葉を思い浮かべてみた。緩急、強弱、剛柔、広狭、高低、高安、軽重、厚薄、長短、寒暑、冷熱、明暗等々、いろいろと出てきた。
建築の材料では、厚いもの、薄いもの、固いもの、柔らかいものがあり、その時々の用途に合わせ仕様を変えている。また、土地の広狭によっては建物を高層にすると効率が良くなり、低層にすると横の繋がりができる。それぞれの事情で選択しているのだが、これは、どちらが良いか悪いかという問題ではないだろう。
この旅も時間があればのんびりしたかった。今の時代は交通やインターネットの高速化で急速に発展し便利になったが、いつの間にか通過してしまい、その過程(足元)が見られないこともあるのではと考えた。ちょっとした旅から、ふと思いを巡らせた。
奥山 安雪(おくやま・やすゆき)
建築家、建築設計アトリエ80主宰、東京都建築士事務所協会北部支部
1953年生まれ/野地建築設計事務所を経て1980年に独立/趣味は「書道」と「躰道」という武道
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