法規勉強会「建築物省エネ法・戸建低炭素住宅」
台東支部
高安 重一(東京都建築士事務所協会台東支部)
浅草文化観光センターでの勉強会風景。
 2015年度、東京都建築士事務所協会台東支部では「法規勉強会」を2ヶ月に一度のペースで行ってきました。会場は「浅草文化観光センター」(設計:隈研吾建築都市設計事務所、2012年竣工)の会議室。他支部の参加も含めて毎回20〜25人程度の参加者となりました。
 各回のテーマは会員からの希望を募ったもので、台東区内にある指定確認検査機関の日本建物評価機構株式会社の協力により、解説・質疑応答が気軽な雰囲気で進行しました。
・第1回(2015年7月)「改正基準法のポイント」
・第2回(2015年9月)「増築関連法規」
・第3回(2015年11月)「木造耐火の手法」
 そして2016年1月14日の、第4回「建築物省エネ法・戸建低炭素住宅」で、今年度の最終回を迎えました。
建築物省エネ法について
 「建築物省エネ法」は、名称が今まで「省エネ法」と呼ばれていたものと似ていて、紛らわしいので注意が必要です。「省エネ法」(エネルギーの使用の合理化等に関する法律、公布・施行:昭和54年)と、「建築物省エネ法」(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律、公布:平成27年7月、施行:平成28年4月)の違いや、今後の導入見通し等が最初に説明されました。
 「建築物省エネ法」は、平成28年4月に誘導的措置が導入、平成29年4月規制措置がスタートと、今後、段階的に進んでいく予定です。
 平成28年4月からは300㎡以上の中規模建築物が対象となり、省エネ性能の優れた建築物については認定により容積率の特例などを受けられるようになります。
 平成29年4月から、2,000㎡以上の大規模な非住宅建築物は、エネルギー消費性能基準の適合性判定の通知を得てから確認済証が下りる、という手続きに変わり、中規模建築も届出が必要になります。それに伴い現行「省エネ法」は廃止となり、省エネ法の定期報告制度や、「省エネラベル」も廃止予定です。
 質疑では、商業ビルなどで内装が決定されていない場合の対応についてなどの考え方が共有されました。
認定低炭素住宅について
 「エコまち法」(都市の低炭素化の促進に関する法律、公布・施行:平成24年)における「認定低炭素住宅」では、新築の場合、認定を受ければ税の軽減や、低炭素化のための床面積に対する容積率の緩和などの優遇措置が受けられます。
・控除対象借入れ限度額が5,000万円、ローン控除が年間500万円と優遇
・登録免許税の税率が0.1%
・省エネ性能向上設備のための床面積の容積非算入
・フラット35Sの金利Aプラン適用可能
 というように利点も多いのですが、現在の生活に浸透しているエアコンや、床暖房を利用する計画だと、低炭素住宅の基準を満たしにくくなるなどの矛盾点も指摘されました。
省エネルギーサポートセンター
 このように法律が変化していくなかで、設計者は新たな知識の獲得が必要であり、その労力の負担はかなり大きなものになることは間違いありません。解説をお願いした日本建物評価機構でも、そのような業務をサポートする「省エネルギーサポートセンター」の体制を整えているとのことです。
 小規模ではありますが、この4回の勉強会を通して、単純な疑問なども遠慮なく相談することができたことは大きな収穫でしたし、事務所間での情報交換も進んだように感じます。
 今後は年に数回、日常の仕事で感じる単純な疑問なども持ち寄って勉強会を開くことで、各事務所間と検査機関も含めた協働体制ができると良いと考えています。
高安 重一(たかやす・しげかず)
建築家、有限会社アーキテクチャー・ラボ代表取締役、東京都建築士事務所協会台東支部 副支部長・情報委員会委員
1966年千葉県生まれ/1989年 東京理科大学卒業/1995年 一級建築士事務所 建築研究室高安重一事務所 開設/2003年 現事務所に改組/2014年〜日本大学助教