「⾠野⾦吾の名作を体験しよう」⽇本銀⾏本店⾒学会
千代田支部|令和5(2023)年8月21日@日本銀行本店
古田 秀行(東京都建築士事務所協会千代田支部編集員、株式会社エノア総合計画事務所)
❶ 中庭・正門玄関で記念撮影
❷ 中庭入口・正門上部のキーストーン
❸ 中庭の列柱
❹ 庭の給水栓・馬の休憩用
❺ 地下金庫の国産金庫扉
❻ 地下金庫壁と天井
❼ 地下⾦庫⾒学の様⼦
❽ 客溜りの吹抜け空間
❾ 中庭正面玄関上部のステンドグラス
❿ 客溜りのガラス天井
 残暑が厳しい折、⽀部⾒学会として⽇本銀⾏が主催する「⽇本銀⾏本店ツアー」に12名が参加した。昨年9⽉から⽀部⾒学会の企画がスタートし、今回はその第4弾となる。
 ⽇本銀⾏本店は、⾠野⾦吾の設計により明治29(1896)年に完成。今年で127年⽬を迎え、国の重要⽂化財に指定されている。配布された⾒学資料をもとに、⽇本銀⾏の歴史に触れつつ、⾒学したコースを写真と共に振り返ってみる。
 キーストーンの⻘銅製双獅⼦額(制作彫刻家・菊池鋳太郎、写真❷)を仰ぎ⾒つつ、正⾨から中庭に⼊ると、そこは地下⾦庫への搬⼊ルートであったことから閉鎖的な空間となっている。本店設計にあたってはベルギー国⽴銀⾏、イングランド銀⾏を参考にしているとのことで、1階は岡⼭県産の北⽊⽯(花崗岩)製のドリス式の列柱(写真❸)、2、3階は同じ⽯種でコリント式の柱となっている(写真❶)。⾺の⽔飲み場(写真❹)は本店建設当時、⾺⾞が使われていたことから中庭に設けられたものである。
 関東⼤震災にも耐えたとされる構造は、⽯積煉⽡造とのこと。令和元(2019)年に免振レトロフイット⼯事を終えており、その納まりも⾒学で確認できた。
 室内に入ると、2階は歴代総裁の肖像画と写真、また本館の図⾯等が展⽰されていた。地下1階では創建当初の姿で地下⾦庫が残っており、イギリス・ホッブスハート社製の⾦庫扉を基に制作されたという国産の⾦庫扉(写真❺)は興味深い。⾦庫内部において、天井の煉瓦はアーチ状に積まれ(写真❻)、耐⽔性を⾼めるために壁を含めて愛知県産の⽩⾊釉薬煉⽡が積まれていた(写真❼)。体験コーナーとして1億円相当の模擬券が置かれ、その重みを体験できたのは楽しかった。
 最後に1階に戻り、客溜の空間を⾒学。古典様式のさまざまな装飾が⾒事である(写真❽)。中庭正⾯⽞関扉上部のステンドグラス(写真❾)は、⽇本のステンドグラスの創設者、宇野澤⾠雄によるものである。客溜上部の屋根は竣⼯時ガラストップライトで、そこから降り注ぐ⾃然光が、客溜りの吹き抜けを通して2階の廊下や緒室を照らす設計となっていた。関東⼤震災によりガラストップライトは被災し屋根が架けられたため、震災復興後は⼈⼯照明がガラス天井(写真❿)を照らしている。
 今年は関東大震災から100年を迎えたが、本館の震災復旧⼯事は⾠野⾦吾の弟⼦、⻑野宇平治の設計によるもので、長野は本館横の1号館(すでに解体)、2、3号館増築、他5つの⽀店の設計も担当した。
 正味1時間ほどの⾒学時間であったが、⽇本銀⾏本店の歴史と建築的価値を知る上でたいへん有意義な⾒学会であった。千代⽥⽀部として今後もさまざまな⾒学会等の実施を通じ、⽀部活動の活性化につなげていきたいと思う。
古田 秀行(ふるた・ひでゆき)
東京都建築士事務所協会千代田支部編集員、株式会社エノア総合計画事務所
1957年 東京生まれ/1979年 日本大学生産工学部建築工学科卒業/株式会社間組建築設計部を経て、2003年 株式会社エノア総合計画事務所入社、現在、取締役 計画設計部統括部長