第96回定時総会開催
令和5(2023)年6月15日@明治記念館
鈴木 文雄(東京都建築士事務所協会理事・研修委員会委員長・会誌専門委員会委員長・墨田支部、有限会社鈴木設計一級建築士事務所)
小山 充男(東京都建築士事務所協会会誌専門委員会・北部支部、建築工房 上二 一級建築士事務所)
大平 孝至(東京都建築士事務所協会会誌専門委員会副委員長・台東支部、株式会社ダイリン一級建築士事務所)
総会風景。議案の審議の様子。
 本年の定時総会は、ようやく新型コロナウイルス感染防止対策が撤廃され、人数制限なしの今まで通りの形式に加え、Web視聴も併用しての開催となった。事務局の永田知世子さんの司会により、昨年お亡くなりになられた会員6名と功労会員1名の名前が読み上げられ黙祷をささげた。その後、令和5(2023)年3月31日時点での会員数1,595名に対し、過半数となる798名が定足数であることが伝えられ、正会員出席者109名、書面及び電子評決837名の計946名で定足数が満たされ本総会が成立する旨が説明された。永池雅人副会長により開会が宣言され、臼井勝之副会長による「建築士事務所憲章」の朗読が行われ、児玉耕二会長の挨拶となった。
挨拶する児玉耕二会長。
児玉会長挨拶(要約)
 3年にも及ぶ制限や自粛での生活だったが、5月より新型コロナウィルスが5類に引き下げられたことから、ようやくアフターコロナの生活が実感できるようになってきた。Web会議やテレワークが常態化し、仕事も生活もWebとリアルを融合させた新しいやり方へと変容してきている。引き続き感染予防には気を遣いつつも、今後の会合もリアル開催による有効な議論や交流の場となり、活性化を取り戻していくことを期待したい。一方で、コロナ禍をきっかけとしてさまざまな課題が顕在化し、変化対応が加速され、協会の発展や活動の活性化に向けての対策を確実に進めていかなければならない。ピンチをチャンスに変え、未来を見据えて、設計業務も働き方も大きな変革が必要であると感じており、当会として、中長期的視野に立った業務改革や新しい技術や知識の研修等、山積する課題に積極的に取り組んでいきたい。
 今年度の東京会の決算は赤字決算であった。この10年間で増やしてきた資産を運用し凌いだというものとなってしまった。会員へのサービスを低下させることなく、活動を活性化させ、東京会を発展させていくためには、無駄な経費の節減、収益が見込まれる事業の拡大、そしてなにより組織強化につながる会員増強に努めていかなければならない。本会は利潤を追求する団体ではないため単年度の黒字にこだわる必要はないが、サステナブルな運営のために中長期的な安定した経営運営を図る必要がある。昨年1年をかけ総務・財務委員会にて過去の分析の上に今後を踏まえ初の中期事業計画を検討してきた。大きな方針となる骨格はまとまったが、基礎プランをまとめ実行に移す時が来ている。今後は財務体質の改善に努力する必要があり、会員ひとりひとりに、費用対効果のバランスがとれ活性化を意識した活動をお願いすることになる。
 建築設計界では、BIMの進展による設計プロセスの変化、Web活用による業務のデジタル化が進んでいる。建築士定期講習のオンライン受講もはじまり、また、建築士事務所の登録や変更がオンラインで行えるプログラムの試行も始まっている。官民問わずデジタル化の流れが加速されている。当会でも今後に備えてデータベースの構築整備を終え、活動を支える関連データの入力を開始しているところである。
 東京都では脱炭素社会実現に向けて、HTT:電力を減らす、電力を創る、電力を蓄める、を発信している。カーボンハーフ2030、カーボンニュートラル2050を目指して急ピッチで制度改正が進んでいる。当会でも相談窓口を設け、身近なところから地球環境の保全につながるところまで、積極的にグリーン化を推進していくつもりである。
 建築士事務所の開設者にはリタイヤの時を迎える方も少なくなく、また、建築設計界を目指す若者が減りつつあり、建築士事務所の数も減少の一途をたどっている。事務所継承や今後の人材育成のためにマネジメント支援センターにて建築士事務所の経営の基本にかかる研修を開始し、次世代の育成強化や、これからの事業を起こす若者を支援する活動を拡大していきたい。
 昨年、日事連は創立60周年を迎え、記念誌『60周年の“あるべき姿”を求めて』にさまざまな議論をまとめた。建築士事務所の経営、自然災害への対応、BIMの可能性、事業継承の座談会を行った。建築士事務所のあり方のシンポジウムでは、設計監理だけにこだわらないやり方、専門家としての建築士の仕事の拡大などの議論も行った。それぞれの事務所で考えるヒントにしていただければと思う。
 今年、当会は役員改選の年である。協会の運営体制の見直し改革を行う良いきっかけとなるときである。新しい体制で大きな一歩を踏み出していただき、さらなる建築士事務所の活性化と大いなる発展を願う。会員の皆様のこれまでにも増しての協力支援のほど、切実にお願いする次第である。
 会長の挨拶に続き、議案の審議へと移った。
議長団。左より丸山吉栄、佐藤吉弥、小野博文の各氏。
総会を中断して開催された新役員選任後の初理事会。
議案の審議
 事務局一任の声を受け選出された議長団が登壇した。議長団の自己紹介の後、議長一任の声を受けて議事録署名人2名が選任され審議が始まった。
 野越聖一事務局長から、第1号議案「令和4年度事業報告の承認」に関する議案書の説明が行われた。続いて、第2号議案「令和4年度収支決算の承認」の説明の前に、野越聖一事務局長から決算書の一部記載に誤りがあったことが伝えられ、お詫びと書類の差し替えのお願いの後に訂正内容の説明が行われ、事務局経理担当の河元幸男氏による議案書の説明が行われた。
 監査報告は広瀬淡監事が代表し、すべての書類は法令並びに定款に準拠し作成され、収支状況や財産状態を正しく示していること、理事の業務執行は法令並びに定款に違反することなく行われたことを認めたと伝えた。また、誤記については詳細な説明を受け収支全体に影響を及ぼす内容でないことから意見表明は付記しないことが報告され質疑へと移った。
 事前にオンラインおよび書面にて寄せられた6件の意見・質問書が読み上げられ、事務局から回答が行われた後、第1号議案と第2号議案は承認された。
 続いて第3号議案「役員の選出に関する件」について、役員候補者選出管理委員会の平松良洋委員長により、正会員理事・監事候補者が推薦された。続いて、同一業界関係者以外の理事候補者について児玉耕二会長により現専務理事の小松達也氏が推薦された。その後、事務局によりすべての理事候補者並びに監事候補者が読み上げられた。審議の前に事前に寄せられた質問書が読み上げられ、事務局から回答が行われた。また、役員選出方法が定款による選出規定と相違している旨の意見が会場からあり、児玉耕二会長により、正会員の声によりこの方法に至ったことの説明と、機構改革WGでの検討申し送りが約束された後、第3号議案が承認された。
 その後、選任後の初理事会の開催のため総会は休憩となった。理事会終了後に千鳥義典新会長の挨拶により総会は再開した。
千鳥義典新会長の挨拶で総会再開。
千鳥会長挨拶(要約)
 まずは、在任期間のほぼ半分をコロナ禍という未曽有の事態に遭遇しながらも乗り越えてこられた児玉耕二前会長に深く謝意を表したい。私の会長としての責務は、建築士事務所憲章とその精神を遵守し、まちづくりや建築に関する社会課題に真摯に向き合い解決に導くとともに、その活動の成果の発信を通して、地域の理解と信頼を高め、当協会が社会にとってなくてはならない団体であるという確固たる地位を築くことを第一と考えている。さらに、継承と革新の両立、すなわち、これまでの当会の活動の積み重ねの中で、優れたところは継承する一方、常に新しいことに挑戦し自己変革を続ける未来志向の組織を目指す。そのためには会員の皆様の融和と円滑な組織運営が欠かせない。さまざまな価値観を持つ会員の皆様の意見を、議論を通してまとめていく合意形成のプロセスを大切に運営に当たる所存である。
 令和5年度の事業計画は、総務・財務委員会で検討された中期事業計画の内容が前倒しで盛り込まれている。会員事務所の経営支援と技術支援に向けた取り込み、社会課題や政策動向を見据えた取り組みの推進、組織強化と財務状況の健全化に向けた取組みの3つの重点施策をひとつひとつ着実に進めて行きたい。
 協会の明るい未来に向けて、さらなる発展のために誠心誠意努めてまいる所存であり、会員のみなさまのいっそうのご理解ご協力ご支援をお願いしたい。
 新会長の挨拶の後に今期からの副会長、専務理事、常任理事が紹介され、議事が再開された。
 事務局から「令和5年度事業計画の報告」と「令和5年度収支予算の報告」が行われ議事は終了し議長団は退席した。
退任役員等を代表して、臼井勝之前副会長が表彰された。
退任役員等を代表して、福田邦人前八王子支部長が表彰された。
(株)賢プランズ設計事務所の福島賢哉氏が30年以上在籍した19事務所を代表して表彰。
会員増強優良支部として、新宿支部、台東支部、北支部、江東支部、八王子支部が表彰。
表彰
 退任役員等22名の表彰となり、代表して臼井勝之前副会長と福田邦人前八王子支部長に表彰状および感謝状が贈呈された。続いて、当協会に30年以上在籍し、本会の発展に寄与された会員19事務所が紹介され、代表して(株)賢プランズ設計事務所の福島賢哉氏(中野支部)に表彰状が贈呈された。次に、会員増強優良支部が永池雅人副会長から読み上げられた。新宿支部、台東支部、北支部、江東支部、八王子支部で、どこも目標数値ぴったりのため順位のない優秀賞となり、代表して新宿支部に表彰状が贈呈された。最後に富樫亮副会長の閉会の辞で閉会となった。
(鈴木 文雄)
東京建築賞表彰式。千葉学東京建築賞選考委員会委員長の総評。
登壇した東京建築賞選考委員の方々。
東京建築賞表彰式
 第49回東京建築賞の表彰式が、宮原浩輔東京建築賞特別委員会副委員長と東京建築賞特別委員会委員の川瀬普也さんの司会で始まった。司会者から東京建築賞の選考基準と応募数は97作品あったとの説明があり、選考委員の方々の紹介と受賞作品の設計者、建築主、施工者などの紹介があった。
 東京建築賞選考委員会委員長の千葉学先生から、応募の97作品から書類審査で33作品を選び、その後、現地審査を行ない受賞作品が選考されたと説明があった。また、賞の選考を通じて印象深かったのは、作品の敷地条件や個別の課題に誠実に取り組んだ結果、その建築の普遍的な強さや個別の美しさになっているなどと印象を語られ、部門ごとに各受賞作品の講評が紹介された(詳しくは『コア東京』6月号参照)。
 表彰に先立ち小野幹雄東京都都市整備局技監から挨拶があった。その中で東京都知事賞は防災・福祉・都市景観などの観点から都民生活に寄与する作品に送られるなどと語られた。その後、部門ごとに賞状・記念品が贈呈され、最後に児玉前会長の挨拶があった。挨拶では、素晴らしい作品は建築主、設計者、施工者の良いコラボレーションが不可欠だと語られ、受賞者へのお祝いの言葉と選考委員への謝辞が述べられた。
千鳥新会長による挨拶と新副会長・専務理事の紹介。
菅野弘一東京都議会自由民主党政務調査会長。
東村邦浩都議会公明党幹事長。
東京都都市整備局および住宅政策本部の方々。左端が東京都都市整備局の小野幹雄技監。
白井勇一般社団法人日本建築士事務所協会連合会副会長の乾杯で開宴。
懇親会
 懇親会は総会と東京建築賞の出席者のほか、多くの来賓の臨席を賜り、児玉前会長の挨拶から始まった。
 児玉前会長は挨拶の中で、コロナ禍でWeb会議やテレワークが常態化していたが、アフターコロナへ向けてWebとリアルが融合するようになり、さらに今日のように懇親会を対面で開催できたことは、アフターコロナへ向けて更なる活性化になると思っているなどと語られた。またこの定時総会をもって会長職を退任するにあたり、関係団体や会員の皆様への謝辞を述べられ、千鳥新会長への期待の言葉で締めくくられた。
 その後の千鳥新会長の挨拶では、社会の諸問題や建築に関する課題やコロナ禍で大きく変化した建築士に求められる職能は、ますます多様化していて、その課題に的確に応えていきたいなどの抱負が語られた。
 千鳥新会長から新しい副会長が紹介された後、ご来賓の東京都議会自由民主党を代表して菅野弘一政務調査会長、都議会公明党を代表して東村邦浩幹事長からご挨拶をいただいた。続いて東京都都市整備局および東京都住宅政策本部の方々が登壇し、代表して東京都都市整備局の小野幹雄技監からご挨拶をいただいた。
 その後、黄綬褒章を受章された宮原浩輔氏が登壇し、児玉前会長から祝辞と記念品の贈呈が行なわれ、ご本人からの挨拶があった。
 乾杯は白井勇一般社団法人日本建築士事務所協会連合会副会長のご発声で行なわれ、和やかに歓談が始まった。
 最後は塚本達二相談役の威勢のよい発声のもと三本締めが行なわれ懇親会は閉会した。
(小山 充男)
鈴木 文雄(すずき・ふみお)
東京都建築士事務所協会理事・研修委員会委員長・会誌専門委員会委員長・墨田支部、有限会社鈴木設計一級建築士事務所
1984年 東海大学建築学科入学/1987年 同校中退、東京デザイナー学院建築デザイン科入学/1989年 同校卒業/有限会社鈴木設計一級建築士事務所入社、現在に至る
小山 充男(こやま・みつお)
東京都建築士事務所協会会誌専門委員会・北部支部、建築工房 上二 一級建築士事務所
1967年長野県松本市生まれ/武蔵野美術大学建築学科卒業
大平 孝至(おおひら・たかし)
東京都建築士事務所協会会誌専門委員会副委員長・台東支部、株式会社ダイリン一級建築士事務所
1984年 東京電機大学建築学科卒業/株式会社ダイリン一級建築士事務所勤務。マクドナルド、松屋、鳥貴族等、チェーン展開の飲食店の建築設計及び店舗デザイン設計をする
タグ:総会