熊本大会参加 支部研修旅行
台東支部|令和4(2022)年9月30日(金)〜10月2日(日)
文:鳥山 暁子(東京都建築士事務所協会台東支部)
写真:大平 孝至(東京都建築士事務所協会台東支部)
 第44回建築士事務所全国大会(熊本大会)への参加を兼ねて、9月30日から2泊3日の旅程で総勢12名の台東支部メンバーが、熊本県内の名所・名建築を巡った。
鞠智(きくち)城。
鞠智城で記念撮影。
八千代座外観。
八千代座内部。
八千代座舞台方向を見る。
熊本大会会場の熊本城ホール。
桜の馬場城彩苑
1日目:鞠智城〜八千代座〜熊本大会
 仮設の熊本空港ビルに到着し、熊本がまだ平成28(2016)年の震災から復興の最中であることを早速実感した。建設中の新空港ビルを横目に見ながら移動の途中、阿蘇山の下に広がる田園風景の中に赤や白の彼岸花のコントラストが印象的であった。
 最初に訪れたのは山鹿市の熊本県立装飾古墳館分館「鞠智城」。歴史公園の中には、飛鳥、奈良、平安時代の遺跡が出土した跡が保存されており、中でも目玉である復元された「八角形鼓楼」には、その柱だらけの特殊な構造が皆の注目を浴びていた。
 昼食は郷土料理の彩座で熊本の郷土料理をいただき、その後、国指定重要文化財の「八千代座」を見学。200年以上前の木造建築が、復興活動により見事に再現されており、その空間の美しさ、7間ほどの大スパンを飛ばした構造技術の高さに圧倒された。
 その後、「熊本城ホール」に移動して熊本大会に参加。夜は、熊本城入口横、桜の馬場城彩苑の一番奥の店の花雅にて、見た目にも楽しい郷土懐石をいただいた。
不知火文化プラザ(北川原温)
八代市立博物館未来の森ミュージアム(伊東豊雄)
八代市民俗伝統芸能伝承館 お祭りでんでん館(平田晃久)
松浜軒
熊本警察署(篠原一男)
2日目:熊本城エキスカーション〜宇土小学校〜不知火文化プラザ〜未来の森ミュージアム・お祭りでんでん館・松浜軒〜熊本警察署
 この日は、朝から二手に分かれて行動。前日にくじ引きで当たった3名が特別に「エキスカーション熊本城復興状況視察」に参加し、ヘルメットをかぶって、一般客は入れないルートから、名物である長塀の裏手、飯田丸五階櫓、南棟櫓群の復興工事状況や、仮設の特別見学通路を見学し、文化財として勝手に解体できない中での苦労や工夫など貴重なお話を聞くことができた。その後、路面電車で安藤忠雄の設計による「熊本駅」、そこから電車で八代駅へと向かった。
 残りの9名は、バス移動で、まずはシーラカンス設計による「宇土小学校」の外観を見学、次に北川原温の設計による「不知火文化プラザ」に移動。ちょうどマルシェが開催されていて、明るい時間からクラフトビールを楽しむ人もちらほら。ほろ酔いで八代神社を参拝し、ランチのレストランで熊本城組と合流した。
 午後は伊東豊雄の設計による「八代市立博物館未来の森ミュージアム」からスタートし、徒歩で廻れる範囲にある平田晃久の設計の「八代市民俗伝統芸能伝承館 お祭りでんでん館」、そして八代城主・松井直之が元禄元年につくった御茶屋である「松浜軒」の美しい庭園を各自思い思いのペースで楽しんだ。その後、熊本市内に戻りガラス張りの「熊本警察署」を見学後、「くまモンスクエア」で一旦解散、各自お土産の購入を楽しんだ。夜は、「城見櫓」の個室を貸切り、熊本城の夜景を楽しみながら美味しい熊本のお酒を堪能した(ちょっと飲みすぎました)。
熊本城
通潤酒造
通潤橋
阿蘇草千里ヶ浜
3日目:熊本城天守閣〜通潤酒造〜通潤橋〜阿蘇草千里ヶ浜〜旧阿蘇大橋
 この日は朝から、メンバー全員で一般ルートから熊本城を見学した。エレベーターで天守閣まで行けるようになり、以前の熊本城を知っている人は非常に見学しやすくなったとのことだったが、まだまだあちこちが崩れている様子を目の当たりにし、復興の状況を隠すのではなく見どころに変えてしまう転んでもただでは起きない熊本魂も感じた。次に、一番メンバーが楽しみにしていた酒造「通潤酒造」に移動。震災で大きな被害を受けながらも見事に復興、リノベーションされたお酒の香りあふれる蔵やレストランを見学させて頂き、皆、たっぷりお酒を買い込んでいた。ランチの後は「通潤橋」を訪ねた。農業用水を送るため建設された石造りのアーチ水路橋で、ちょうどタイミングよく迫力のある放水を見ることができた。
 最後は建築だけではなく熊本の大自然も体感しようと阿蘇草千里ヶ浜へ。雄大な景色を堪能した。空港に向かう帰り道、震災で滑落した旧阿蘇大橋の現場に止まってもらい、そのショッキングな光景に息を飲んだ。
 熊本地震の爪痕や復興のたくましさ、自然の雄大さ、数々の建築物に触れ、天気にも恵まれた本当に気持ちのよい3日間となった。熊本の皆様、ありがとうございました。
鳥山 暁子(とりやま・あきこ)
東京都建築士事務所協会台東支部、一級建築士事務所あとりえ・あとりえ不動産代表、東京理科大学非常勤講師ほか
1978年生まれ/東京理科大学大学院修了、不動産会社設計部勤務を経て2006年に現事務所設立、2022年宅建業登録