スパイラルアップ事業好事例発表会
令和3(2021)年3月3日(水)@本会会議室(Web発信)
磯永 聖次(東京都建築士事務所協会港支部、タキロンシーアイ株式会社一級建築士事務所)
本会会議室からの発信。
取組事例集。
 一昨年より実施した、団体別採用力スパイラルアップ事業の締めくくりとして参加いただいた企業から、好事例の発表を3月3日(水)にオンランで開催した。発表者は鳥山暁子一級建築士事務所あとりえ代表、小野博文(有)ヒロ空間企画代表、松久保秀昭(株)エフ・デザイン代表で、進行を寺田宏ワーキング主査、まとめを横村隆子委員で実施した。当日は45名の参加をいただき、人材確保、雇用継続などの働き方改革に係わる情報を共有し、今後の働き方を考える場として開催できた。
 冒頭に、寺田主査より「少子高齢社会では、本業界の担い手確保と雇用継続は喫緊の課題で、人材復帰支援事業を平成29、30年に実施、さらに令和元年よりスパイラルアップ事業と計4年間にわたり人材対策に取り組んできた。スパイラルアップ事業では、企業側の環境整備に重点を置き、本日はその締めくくりとして好事例発表会を開催する」と説明があった。
好事例発表
 トップバッターとして所員4名で外部パートナー(子育て中の女性など)と連携され効率的な事務所運営をされている鳥山暁子さんから発表があった。最近では、こども園や教育関連施設などさまざまな用途に活動の幅を広げられているが、鳥山さんは、学生の頃から、「もし自分が人を雇う立場になったら、きちんと働きやすい職場にしたい」と考え、そのために、全員残業しないを基本に、週休3日制とその理解を得るための発注者への活動を紹介された。今後も就業規則を法改正等に合わせ、あるいは職員の意見を聞いて随時修正していきたいと発表があった。
 ふたり目は小野博文さんで、主に、商業施設、リゾート施設、飲食店、自然素材の住宅などを手掛けてこられ、現在は10名体制で事務所を運営されている。今回は建築士の裁量労働制の適用を視野に、就業規則の改定に着手、平成3(2021)年4月から有資格者の裁量労働制への移行に取り組まれたとの発表があった。その目的のひとつは建築士とそれ以外の従業員の働き方を線引きすること、もうひとつが、建築士のモチベーション向上とのこと。裁量労働制をいい意味で従業員の責任感や成長につながるよう活用し、子育て中の方、若い社員の方には、残業時間をなくして、自分の時間を持って成長していただきたいと発言があった。
 最後に松久保秀昭さんが発表された。今年で設立30年目、社員16名の事務所で、店舗デザインを中心に、建築設計からまちづくりまで、幅広く活動されている。本事業への参加は、設計事務所の魅力を高め、いつまでも安心して働ける設計事務所を目指したいとされ、課題としては、①優秀な人材を確保し、離職者を減らす、②就業規則の見直し、③リモートワークのルールづくりの3つを挙げられた。エフ・デザインは、街に開き路面に面した事務所として、地域に扉を開き、地域とともに仕事をし、地域の人や企業とコラボしてここでしかつくれないものをつくり続けることが大切だと締めくくられた。
ディスカッションと総括
 その後、発表3社および聴取者の質問に答える形でディスカッションを行った。内容としては、①コロナの自粛期間を過ごして会社がどのように変わったか、②今後の設計者の働き方としてどのようにすればよいか、③多様な働き方が日常となったが、何か不足することがあるかなど。ディスカッションの最後のメッセージとして、鳥山さんからは「女性が働きやすい環境は、誰でも働きやすい環境(女性だけではない)」、小野さんからは「5歳の子どもがいて、妻が働いていることもあり、いろんな人が働ける環境をつくること」、松久保さんからは、「チームワーク(介護、育児など周りでどれだけ助け合えるか)」がキーワードとして挙げられ終了した。
 まとめとして横村委員が、本日の内容を今後も当協会の中でロールモデルとして活用させていただきたい。参加企業のみなさまも、もう一度、就業規則などの見直すきっかけとして、本日の内容を生かしていただきたい、と締めくくった。
(磯永 聖次)

 最後に、ワーキングより報告いたします。これからの人材確保のための企業環境整備を目指した本事業は目標を達成し、3月に終了できました。ご協力いただいた応募企業、会員の皆様、関係の皆様には厚く御礼申し上げます。なお、取組事例集としてまとめたものを『コア東京』5月号に同封いたします。ぜひともご一読いただき、会員各位の改革のご参考になさってください。
(スパイラルアップ事業推進ワーキング委員一同)
磯永 聖次(いそなが・せいじ)
東京都建築士事務所協会港支部、タキロンシーアイ株式会社一級建築士事務所 管理建築士
1985年 国立徳山工業高等専門学校建築専攻卒業後、東京理科大学建築学科編入/1988年 川鉄エンジニアリング株式会社入社/1998年 財団法人建築行政情報センター/2007年 同行政部(日本建築行政会議)/2010年 同 建築行政研究所 上席研究員/2014年 タキロン株式会社/2017年 タキロンシーアイ株式会社