国および東京都からの回答
東京都建築士事務所協会およびTARC(東京建築設計関連事務所協会協議会)の要望書に対して
 当会は、令和2(2020)年10月1日に国に対し要望書を提出すると共に、(一社)東京構造設計事務所協会、(一社)東京都設備設計事務所協会および(一社)日本建築積算事務所協会関東支部の3団体と共同して、令和2(2020)年8月31日および9月1日に、東京都に対し要望書を提出した。各要望理由は、『コア東京』2020年10・11月号と「コア東京web」に掲載している。
令和3年度国家予算、税制改正等に関する要望の回答について
自由民主党東京都支部連合会
会長 鴨下 一郎
政調会長 井上 信治
担当議員 若宮 健嗣
要望1:
 建築物の質を向上させ設計等を委託する建築主の利益保護を図る建築士法 (以下「法」)の趣旨を全うするため、建築設計を管理する責任を持つ管理建築士に対し、定期的な講習の受講義務を課すよう要望致します。
【回答】
○ 建築士の資質・能力の向上や建築士事務所の業務の適正化を図っていく上で、団体による自律的な体制を確保し、建築士の業務を遂行していく上で発生する諸問題の解決を図ることはたいへん重要であると考えます。
○ 管理建築士*の資質・能力の向上については、建築士として3年以上の設計等の業務に従事した後、法定講習の課程を修了することを要件とするとともに、管理建築士になった後も、建築士事務所に属する建築士として、定期的(3年ごと)な法定講習の受講義務を課すこととしています。これらの受講義務に加え、新たに定期的な講習の受講義務を課すことは、管理建築士に対して、負担が増加することになるため、慎重な判断が必要と考えています。
*建築士事務所の業務の技術的事項を総括する立場の建築士
(国土交通省住宅局)
要望2:
 建築士法(以下「法」)第27条の5は、設計等を委託する建築主の利益保護を図るため、苦情解決制度を定めております。同制度における調査に伴う文書提出要求等に対する応答義務の主体を、建築士事務所協会の会員に限定せずより広く建築士事務所の登録をしている開設者とするよう要望致します。
【回答】
○ 法第27条の5の規定については、建築士事務所協会に対して強制的な調査権限を付与する規定であるため、関係団体との調整に基づき、非会員の建築士事務所まで強制的な調査が及ぶことがないように、対象を会員の建築士事務所のみとすることとしたものであります。
○ なお、国土交通省及び都道府県においては、建築士事務所協会の役割等について共通認識を構築してきており、建築士事務所の登録時に指定建築士事務所登録機関※を通じて協会の役割を周知等しているところです。
※令和2年4月1日時点で、44都道府県において指定建築士事務所登録機関として都道府県建築士事務所協会が指定されている。
○ こうした取り組みを通じて建築主の利益の保護等を進めて参る所存です。
(国土交通省住宅局)
【参照条文】
○建築士法(昭和25年法律第202号)(苦情の解決)第二十七条の五 建築士事務所協会は、建築主その他の関係者から建築士事務所の業務に関する苦情について解決の申出があったときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、その苦情に係る事情を調査するとともに、当該建築士事務所の開設者に対しその苦情の内容を通知してその迅速な処理を求めなければならない。
2 建築士事務所協会は、前項の申出に係る苦情の解決について必要があると認めるときは、当該建築士事務所の開設者に対し、文書若しくは口頭による説明を求め、又は資料の提出を求めることができる。
3 協会会員は、建築士事務所協会から前項の規定による求めがあったときは、正当な理由がないのに、これを拒んではならない。
(国土交通省住宅局)
要望3:
 マンションの高経年化、耐震性不足、居住者の高齢化といった課題を克服し、マンション再生、さらには都市の更新を進めるため、マンションの建て替えの円滑化に資するマンション敷地売却制度の利用拡大に向けたきめ細かな運用を要望致します。
【回答】
① 制度の利用拡大を図るため耐震診断経費を2/3補助から状況に応じ最大全額補助とすることについて
○ マンションの耐震診断については、防災・安全交付金等を活用し、国と地方あわせて耐震診断に要する費用の2/3を支援しています。
○ また、耐震診断が義務付けられたマンションの耐震診断については、国の補助率を通常の1/3から1/2まで拡充することを可能としているところです。
※(通常)国1/3、地方1/3 → (義務付け)国1/2、地方1/3
(国土交通省住宅局)
② マンション敷地売却事業における分配金の算定にあたって面積比だけでなく環境価値(位置別効用比)を考慮に入れるなどのきめ細かな制度改善の実施要望について
○ マンション敷地売却事業における「分配金の額の算定方法」は、管理組合によるマンション敷地売却決議で定めることとされており、その方法について法令上の定めはありません。国土交通省が作成しているガイドラインでは、「敷地の持分割合で配分する方法」のほか、階層や日照、眺望等各住戸の個別性を反映した「効用比で配分する方法」も考えられるとしています。
(国土交通省住宅局)
③ 容積率の緩和特例が日影規制などの建築規制のため画餅とならないよう国会審議における付帯決議にもあるように建築規制の在り方について「多角的な観点から総合的に検討する」ことについて
○ 建築基準法の日影規制は、地方公共団体が条例で区域や基準を定めるほか、適用除外することも可能であり、地方公共団体の判断で適切な運用が可能となっております。国土交通省では、地域の実情に応じた適用除外の事例を周知し、柔軟な運用の促進を図っているところです。
(国土交通省住宅局)
令和3年度東京都予算に対する要望について
東京都議会自由民主党
幹事長 山﨑 一輝
政調会長 三宅 正彦
要望1:
 建築物の設計・工事監理業務の発注・契約に際しては、品確法等の主旨に則りプロポーザル方式等の価格以外の要素を考慮した選定方法を要望致します。
 また、やむを得ず入札方式を採用する場合には、早期かつ全面的に最低制限価格制度を導入してくださいますよう要望致します。
【回答】
 設計者の選定に際しては、設計業務の品質確保を図るため、高度な知識並びに構想力及び応用力等が要求される業務等に、設計プロポーザル方式を採用してきました。
 これに加え、価格以外の技術的な要素も考慮して設計者を選定する方式として、令和元(2019)年度からは総合評価方式の運用も開始しています。
 また、設計等委託におけるダンピング防止対策としては、令和2(2020)年10月より財務局契約の一部の案件で最低制限価格制度の試行を開始しています。この試行状況を注視しつつ、さらに令和3(2021)年度中を目途に各局契約の一部の案件にも試行を拡大し、その後の本格実施に繋げていく予定です。
(財務局)
要望2:
 特定沿道建築物に加え、東京都内の主要な防災拠点や区市町村庁舎と震災時に実際に避難住民が滞在する避難所との間を結ぶ道路の沿道建築物についても、耐震診断を義務付ける措置を講じて頂きますよう要望致します。
【回答】
 災害時に住民の円滑な避難などが実施できるように、広域防災拠点から避難所など地域の防災拠点までの通行機能を確保することは重要です。
 都は、広域的な観点から、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を促進するとともに、緊急輸送道路から避難所などに至る道路の沿道建築物の耐震化については、地域特性を踏まえた対応が求められることから、区市町村が主体的に取り組めるよう後押ししてまいります。
 地域の防災拠点につながる道路ネットワークを確保し、東京全体の安全・安心なまちづくりを進める観点から、区市町村に対し、沿道建築物の耐震化に関する指針を示した上で、地域の実情に即した具体的な取組が進むよう技術的支援を行ってまいります。
令和3年度予算額:耐震改修促進事業 4,444,831千円
(都市整備局)
要望3:
 新型コロナウイルスを含む感染症の流行期に大規模地震や水害等の災害が発生した場合、都内の避難者を収容するには区市町村所管の施設のみでは不十分であり、補完的に東京都所管の施設を避難所として使用することを想定する必要があることから、避難所として使用可能な東京都所管施設の収容人数を調査すること、および、一般社団法人東京都建築士事務所協会(以下「東事協」)への当該調査の一括業務委託を要望致します。
【回答】
 新型コロナウイルス等の感染症対策の観点を踏まえ、各避難先における十分なスペースを確保するためには、より多くの避難先の確保が求められます。そこで都としては、都立施設を避難先として活用するにあたり、区市町村の希望や活用上の課題を踏まえ、避難先の拡大に向けて区市町村と連携を図っています。
 各施設における具体的な運用に向けては、受入れ可能なスペースに関する情報等の提供を通じて、区市町村が収容可能な人数を想定しています。
 引き続き、区市町村と連携し、十分な避難先の確保に向けて取り組んでまいります。
(総務局)
要望4:
 東京建築設計関連事務所協会協議会(以下「各協会」)は、それぞれ業界団体として会員向けの講習会やセミナーを通じて会員の建築士事務所等(以下「事務所」)の資質向上に努めるとともに都民に対して消費者相談等を行っています。さらに、一般社団法人東京都建築士事務所協会(以下「東事協」)では建築士法第27条の2第3項に定める業務等も実施しています。今次のコロナ禍においてもこれらの活動を維持していくとともに会員事務所の経営支援を実施するために、各協会に対して助成などを実施して頂きますよう要望致します。
【回答】
 都は、中小企業団体への支援として、「中小企業新戦略支援事業(団体向け)」を実施しています。本事業では、中小企業団体等が策定した販路開拓や人材育成などの事業計画を実行する際に、専門家を派遣するとともに、その計画の実施に必要な経費の一部を助成しています。
 今後とも、こうした取組の実施に努めてまいります。
 令和3年度予算額:中小企業新戦略支援事業(団体向け) 598,608千円
(産業労働局)
要望5:
 学校内部の教室や体育館は、学習指導、スポーツ及び式典開催等のさまざまな用途に使用されます。さらに加えて地震等の災害が発生した場合には避難所として使用される可能性もあります。このような多目的の用に供される教室や体育館について換気や気流等に関する環境実態調査を行い建築的側面及び設備的側面から対応策を策定するよう要望致します。
【回答】
 都立学校においては、児童生徒に対し、衛生的かつ良好な教育環境を提供するため教室や体育館等において、空調設備や換気設備等の整備を進めています。
 また、都立学校では、学校薬剤師が「学校環境衛生基準」に従い、「環境実態調査」として年2回以上の二酸化炭素や一酸化炭素濃度による換気状態及び気流速度の測定と、その結果に基づいた指導助言を行っているほか、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に基づく「特定建築物」となる学校では、「建築物環境衛生管理技術者」により、「建築物環境衛生管理基準」に従い、空気環境の調整等の環境衛生上良好な状態を維持するために必要な措置を行っています。
 上記のような環境実態調査とそれに基づく指導及び助言などを通じ、都立学校では、教育の場として継続的に良好な環境を提供できるよう努めており、こうした取組が避難所としての環境の整備にもつながっていると考えています。
 今後とも、定期的な環境測定を行い、必要な措置を講じるとともに、都立学校の改築・改修工事等に当たっては、建物環境衛生に配慮した整備を行ってまいります。
 なお、区市町村立学校に関しては、設置者である区市町村が管理し、その経費を負担することとされており、区市町村において必要な措置を行っています。
 令和3年度予算額:建築物環境衛生管理技術者 64,143千円(都立学校)
(教育庁)