文化庁国立近現代建築資料館を訪ねて
ブロック報告 第2ブロック研修会
栗田 幸一(東京都建築士事務所協会 台東支部支部長)
我が国初の国立建築アーカイブズ
 去る2015年4月23日(木)、文京、北、荒川、台東の各支部からなる第2ブロックが、研修会+懇親会を開催しました。今回の研修会担当支部は文京支部。ブロック長の平松良洋さん(文京支部)の手配により、文京11名、台東8名、荒川7名、北2名、総勢28名が参加しました。
研修場所は「文化庁国立近現代建築資料館」。台東区池之端の都立旧岩崎邸庭園に隣接して、旧湯島地方合同庁舎の新館(1984年竣工)と別館(1971年竣工)の一部を改修して2013(平成25)年にオープン。日本の重要な近現代建築に関する図面や模型などの資料の海外流出や散逸を防ぐため、文化庁が設置し運営しているもので、日本で初めての建築資料のアーカイブを専門とする国立の施設です。
ここを研修場所として指定したのは文京支部の米田正彦さん。催事がないときを狙って開催したため、当然見学者は第2ブロックのメンバーしかおらず、ご案内いただいた主任建築資料調査官の桐原武志さんから、職員食堂でじっくり説明を拝聴することができました。
桐原さんからは、資料館の設立背景、施設概要、総勢13名の職員で構成されていること、運営委員会の構成、資料の収集方法、業務内容などをうかがいました。それによると、資料館としての事業は、①情報収集、②資料の収集と保管、③展示・教育普及、④調査研究等。資料収集としては、文化功労者や、文化勲章受章者、プリツカー賞受賞者など、国内外で高い評価を得た建築家や、時代を画した建築を遺した建築家の資料を先ず収集しているということでした。
主任建築資料調査官の桐原武志さん。
丹下健三 / 坂倉準三 / 菊竹清訓
 展示・教育普及事業としては、一昨年、開館記念特別展示として、「建築資料にみる東京オリンピック」(2013(平成25)年5月8日〜6月14日)が開催されました。
1964(昭和39)年の東京オリンピックの中心施設だった国立代々木競技場を軸に、そこに2020年の新国立競技場の計画案を対比させて展示したもので、建築設計の丹下健三だけではなく、構造の坪井善勝、設備の井上宇一にもスポットを当てたものでした。
桐原さんからは、図面資料のトーシングペーパーや第2原図などの劣化の問題や、散らばっている資料の情報収集の苦労話と共に、それぞれのお弟子さんで設計に参画した、神谷宏治さん(2014年に逝去)、川口衞さん、尾島俊雄さんから聞いた興味深いお話を披露していただきました。
「人間のための建築──建築資料にみる坂倉準三」(2013年11月27日〜2014(平成26)年2月23日)は、戦前のパリ万博日本館、戦後復興期の神奈川県立近代美術館、家具製作など「人間のための建築」を目指した坂倉準三の展示会。
以上の2度の展覧会の活動報告展を経て、直近は「建築のこころ──アーカイブにみる菊竹清訓展」(2014年10月29日〜2015年2月1日)が開催されました。2011年12月に他界した菊竹清訓の、建築家としての生涯の根底にあった大胆な発想や、思想の原点に迫るものでした。
いずれの展覧会も、展示のみならず記念シンポジウムやギャラリートークが数多く企画され、日本の建築文化に対する理解を深める上で、きわめて充実した内容です。
われわれ第2ブロックにとって宝といえる施設で、これからも注目していきたいと思います。
都立旧岩崎邸庭園側のアプローチから旧岩崎邸の前庭を見返す。展覧会開催時は庭園から入場できるが入園料が必要(文化庁国立近現代建築資料館は入場無料)。
岩崎邸当時の塀であろうかレンガ積みの落ち着いた場所。塀の奥は「(公財)三菱経済研究所付属三菱資料館」。
内部の廊下と階段。和風テイストの仕上げ。
湯島の切通坂を下りると琵琶湖に似せた不忍池がある。
見学が終われば恒例の懇親会。下町の居酒屋らしく落語家も呼んで一席。山下登副会長の挨拶、荒川純一元理事、平松良洋ブロック長の挨拶に引き続き、陰山日出也理事の音頭で乾杯。和気あいあいと各支部会員の交流。あっという間に〆となりました。
参加者のひとり、次期ブロック長の郡山久輝さん(台東支部)。
古今亭志ん吉さん(二ツ目)。
お弁当の一部。
写真撮影:筆者
栗田 幸一(くりた・こういち)
東京浅草生まれ/祖父、父と3代目/1970年 東海大学工学部建築学科卒業/1970〜74年 伊奈建築設計事務所/1975年 父の経営する株式会社栗田建築事務所入社し、現在に至る/(一社)東京都建築士事務所協会台東支部支部長、編集専門委員会委員長
記事カテゴリー:支部 / ブロック情報