北部支部
支部探訪 第14回
中田 千恵子、田口吉則(東京都建築士事務所協会 編集専門委員)
今回、編集委員がお邪魔したのは、清瀬市・東久留米市・東村山市・小平市・西東京市・武蔵野市の6つの市にまたがる北部支部。
訪問日に北部支部研修委員主催の見学会があり、同行させていただいた。
取材はその後で行うこととなったが‥‥。(取材日:平成27年3月11日)

──北部支部の見学会は、清瀬市にある大林組技術研究所と平林寺。取材はその後の懇親会の時に、と聞き、「それって居酒屋でしょ! 」と不安を抱きつつ、集合場所である清瀬駅(西武池袋線)に向かった。研究所へは一緒に路線バスに乗り約10分で到着する。
大林組技術研究所見学
 まず本館1階のホールで研究所紹介ビデオを見て、見学のスケジュールを聞く。案内してくださるのは、広報課担当の若い女性の方。専門用語も淀みなく話され、聞き取り易い説明だった。
大林組技術研究所にて。見学会には北部支部から8名が参加。
本館
 本館は、2010年に竣工したもので、「最先端の研究環境」、「最先端の環境配慮」、「最先端の安全安心」の3つのコンセプトを掲げている。
最先端の研究環境:最初に屋上の広大な太陽光発電装置群を見せていただいた後、3階の通路に下りて、そこから吹き抜けで見下ろすことになるワークスペ-ス(執務空間)の説明を聞く。仕事をする所員の方を見下ろしながらの見学だ(所員の方は、気にはならないだろうか? 慣れたのかな?)。
 ワークスペ-スでは研究員150名と事務員50名ほどで仕事をしている。その通路は真直ぐではなく、適度に折れ曲がっている。突き当たる箇所が4箇所あり、そこは部長の席なのだそうだ(部長に会いたくない時は遠回り! )。
 これは「通路が真直ぐだと前しか見ない→蛇行していると回りに注意を払う→目が合ってコニュニケ-ションが生まれる→新しいアイデアが生まれる」というコンセプトだという。
最先端の環境配慮:所員は身につけているICタグによって、在室、在席が分かる。そして自分の席に着くと、そこの箇所の照明と空調がONになる。全体はあまり空調しないで、人がいる空間だけ、人がいる時間だけ快適にしようという考え方だそうだ。どんな環境なのか? 少しだけその席で仕事をしてみたくなった。
先端の安全安心──制震装置ラピュタ2D:ラピュタ2Dは、地震発生時に揺れをコンピュ-タでキャッチして揺れと逆方向に作用する力が働く制震装置(地盤が右に10cm動いたら左に10cm建物を動かす)。1階に戻り、ホ-ル前に置かれた3つの模型建物(耐震、免震、制震:ラピュタ2D)を揺らす装置で、長周期と短周期地震動を作動させて、それぞれの様子を見る。皆さん、長周期地震動にも揺れないラピュタ2Dに興味津々。そして本物がある地下へ下り、ラピュタ2Dのメイン装置であるアクチュエ-タの前で説明を聞いた。これで地震時に地面の揺れと反対方向に建物を動かして地震の揺れを打ち消すそうだ。
大林組技術研究所本館の吹き抜けたワークスペース*。(*印の写真・図版提供:大林組)
照明と空調*。
制震装置ラピュタ2Dの仕組み*。
ダイナミック実験棟
 ここでは、世界最大の地盤工学及び地震工学の実験装置である遠心模型実験装置を見学した。  この装置は、回転半径が7mあるアームの両端に試料容器を吊り下げて回転する。回転すると遠心力により振り上がり、その遠心力により実物と同様の強度・変形・水理特性が正確に把握できる。たとえば、高さ20cmの模型地盤に100Gの遠心加速度を加えることで、深さ20mの実地盤のモデル化(再現実験)が可能だ。説明を聞いて、なんとなく理解はできたが、どのようになるのか、外観からは少し想像しづらい。
ダイナミック実験棟*。
火災工学実験棟
 大きな空間に、色々な実験装置が配置されているが、なかでも目立つのが汎用耐火炉(W3m×L5m×H4m)だ。柱、梁、床部材を対象に、20MNの圧縮載荷を行いながら70本のガスバ-ナ-で最大1,200℃までの耐火試験が可能。たとえば上部の積載装置で2,000tの荷重をかけることで、40階建ての1階の部分で火災があった場合の部材等の変形を調べることができる。
 しかしいちばん活躍しているのは、奥の隅にちょこんとあった壁用耐火炉(W1.5m×H1.5m)だそうだ。4つのバ-ナ-を用いて壁部材や防火扉などの実験を行う。これは小規模な当事務所のようで、好感を持った。
火災工学実験棟*。
オ-プンラボ2
 ここでは振動体験装置で、震度6弱の振動とラピュタ2Dの揺れの違いを体験。ここのラピュタ2Dは、地震時に絶対揺らしたくない部屋(たとえば病院の手術室、ラインを止めたくない工場箇所)を想定している。
 皆さん、体感したことのない「震度6」と「ラピュタ2Dの揺れ」にご満悦のようだ。「“百聞は一見に如かず”で今日は来て良かった」と誰かが言った。
 予定より少し時間をオーバーし午後4時ごろ見学終了。帰り際、担当の方に最後まで見送っていただいた。
 お忙しい中、このような貴重な体験をさせてくださった大林組の方々に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
オープンラボ2の振動体験装置*。
平林寺見学
拝観料500円を払って、案内パンフレットを見ると、境内は思ったより広い。3通りの散策コースが表示されていたが、今回は一番短い25分散策コースを選択。平林寺のシンボルともいえる山門や松平信綱の墓などを見る。
 山門は、茅葺きの重層入母屋造りで、1663年に他から解体したものを移築後補修したもので、350年以上の風雨に耐えている。しかし左右に配置の金剛力士像は比較的新しく、「電力王」と称された松永安左エ門(1875〜1971、その生涯をNHKで今年9月に放送予定)の寄進によるものだそうだ。
 時代を超えて建物と同化しているのが印象的だった。
──気がつくと午後5時を回って、お腹も空いてきた。懇親会場(いや取材場所)のひばりヶ丘駅近くの居酒屋へ、バスで向かった。大林組技術研究所と平林寺で結構歩いたため、皆さん早く喉を潤したいところだが、「酔わないうちにさっさと始めよう」と取材スタート。
平林寺山門。(撮影:田口 吉則)
支部活動の特徴と行政との取り組み
──まずは川田伸紘支部長からお話をうかがう。
 支部長を6年間やらせていただいている。本部等で得た情報を皆さんに流すように努めている。場所が広範囲で他支部エリアの立川や狛江の会員の方もいる。皆、仲が良い。
 いちばん密接な関係なのが武蔵野市。最近は小平市の市長さんとも懇意にしていただいており、これまでは耐震診断(今年度は8件)の依頼しかなかったが、今年は無料相談の依頼があって2回開催した。来年度からは清瀬市から耐震無料相談会、西東京市からマンションの耐震アドバイザー派遣の依頼を受けている。
 ただ、6つの市のうち、4市は連携がとれているが、東久留米市と東村山市とはお付き合いがない。これからの課題のひとつである。
 会員は武蔵野市がいちばん多い。次が西東京市だろうか。
──このあたりからあちらこちらから意見が飛び出してきた。
 私は北部支部内の地域で仕事をしているが、東京都建築士事務所協会の会員ということで各市役所での対応がスムーズに運ぶことがある。
 大多数は耐震業務に携わっているが、件数的には最近減っている。
──ここでビールが出て、とりあえず乾杯!
支部活動の特徴と行政との取り組み
 清瀬市の自慢はけやき通り(キヨセケヤキロードギャラリー)かな。大林組に行く時に通ったね。催し物はないけれど、ふれあいフェアのポストカードでお披露目したよ。
 平林寺では、4月17日にお祭りがあって、けっこう盛大に行われるよ。
 あれ平林寺って何市?(新座市です)支部自慢にならないじゃない(笑)。
 あとは武蔵野桜まつり。幻想的で綺麗だよね。支部も催し物で参加しているが、なかなか満開の時期とあわないのが‥‥ね。
 清瀬金山緑地公園も人気がある。樹木を焼いた炭を置いて水の浄化をし、ホタルの養殖も行っている。行くとカメラマンが沢山いる。カワセミの撮影場所として有名らしい(会員の中にも、そのたくさんいるカメラマンのひとりがいます)。
  あらためて考えるとあまり有名な名所はないな。→そうだ、皆さん、井の頭公園があるじゃないですか?(田口編集委員から)→いわゆる井の頭公園は三鷹市、なかにある自然文化園(動物園、今年68歳になるゾウのはな子で有名)が武蔵野市です(川田氏)。→ええそうだったの(皆さん)。──さすが支部長!
 知られていませんが、昨年、国指定の遺跡に指定された下野谷遺跡公園。西武新宿線の東伏見駅南口の“早稲田グラウンド”横にある。縄文土器が沢山出土され、話題になった。──下野谷遺跡は縄文時代中期の環状集落であり、南関東では傑出した規模と内容を持っていて、首都圏において、このような大集落が、ほぼ全域残っていることは極めてまれであるようだ。
名物会員
 名物会員といえば、池上寛高さんかな。もう仕事はリタイアしているけれど、北部支部の名誉会員で「生き神様」と呼ばれています。ちなみに名誉会員は、功績があった方がなり、支部会費や飲み会での会費が格安になる。
 あとは竹松和利副会長率いるバンド。メンバーは、建設業界の方も入っていますが、ほとんど会員で構成され、あの「生き神様」もかつてはマンドリンを担当していた。今、老人ホームなど色々なところで活躍している。
会員が集まる場所・行事
 会合は田無の法務局の隣。家賃は払っているが、予約したりして借りて場所を確保する必要がなく便利です。皆さん、車で集まります。
──新年会の会場は?
 ここ何年かは一橋学園の「一龍」です、地理的にいえば田無が各会員の中心だが、新年会をやるような会場がない。
 会員48名のうち支部役員は18人いるが、毎回高出席率です。そういった意味ではまとまりがあると思う。皆さんよく協力してくれる。
 いちばん会員が集まる行事は支部の研修旅行かな。今年は6月に一泊で大井川鉄道、蓬莱橋に行きます(協力会も入れて20数人参加予定)。後は防災まちづくり研修会。協会を知ってもらうため、また会員増強も兼ねて、行政等の講師を招いてやっている。
──ここで大林組技術研究所見学の話に戻る。
 今日は行って良かった。制震は勉強になった、の意見が多々あり。
 空気を読んで、そろそろ終わりにしようと、最後の質問。
本会と『コア東京』への要望
 本会では、強制加入団体を目指しているけれど、入りたくなるような魅力ある事務所協会を目指すことが必要。
 『コア東京』に、会に対する批判等意見を載せるペ-ジをつくったら?
 『コア東京』の「活動と動静」は、なくても良いのでは?
──それだけ読む人もいるんですよ。
 本部に関わっている人はね。でも一般の会員は興味ないから読まないよ。2カ月前の情報だからTAAFニュ-スやHPに載せたらどう? ──皆さんうんうん‥‥と。喧々諤々、かなり騒々しい。
 『コア東京』はこのごろすごく良くなってきた。垢抜けてきた。いままで読んでいなかったが、読むようになった。レイアウトや写真と文章の織り交ぜ方が良い。
 ──ありがとうございます。4月号からさらに良くなります。
 私は、ひとつのテーマを掘り下げて特集号を組んでほしい(耐震特集とか街並み特集とか)。だいたいのことはインターネットで情報を得られるしね。『コア東京』で取り上げる内容は深くなくちゃ。

──取材はこれで終了と宣言した後は、大林組の制震の話、まちづくりの話、北部支部、本部の話が2手、3手に分かれて飛び交った。
 皆さん、見学後ということでお疲れだったと思うが、お酒を控えつつ快く質問に答えてくれた。北部支部は広範囲なので、集まるのに大変かと思ったが、まとまった仲の良い支部という印象を受けた。
 取材場所が居酒屋ということで、メチャクチャな取材になるのでは? と心配しましたが、なんとかまとまりました。和やかで楽しい雰囲気が伝わりましたでしょうか?
(編集専門委員会:中田 千恵子、田口 吉則)
懇親会場にて。前列左より、小沢清二さん、小島喜良さん、川田伸紘さん、小沢尚子さん。後列左より、村越政治さん、中坪明夫さん、小山充男さん、奥山安雪さん。右端は中田千恵子編集委員。(撮影:田口吉則)
北部支部の支部自慢
キヨセケヤキロードギャラリー
■所在地:清瀬市けやき通り
■公開時間:常時
■設置時期:平成元年
キヨセケヤキロ-ドギャラリ-は、東京都の「ふるさと・ふれあい振興事業」の助成を得て、内外の著名な彫刻家の作品23基を3期(第1期:平成元年度、第2期:平成3年度、第3期:平成4年度)に分けて設置、整備を行いました。 作家の選定は、美術評論家である三木多聞氏(元国立国際美術館館長)にお願いしました。その後、1基を加え、現在作品は24基となっています。清瀬市のシンボルゾ-ン「キヨセケヤキロ-ドギャラリ-」ヘ、ぜひ足を運んでください。 優れた彫刻たちが、みなさまの心に「うるおい」と「やすらぎ」を与えてくれることでしょう。
(写真と文:『東京建築MAP』より)

武蔵野桜まつり(撮影:中田千恵子)
清瀬金山緑地公園
■所在地:清瀬市
■公開時間:常時
■設置時期:昭和61年5月
清瀬金山緑地公園は、市内で最も大きな公園で、その広さは19,943平方メ-トルです。昭和61年5月にオ-プンして以来、四季を通じて多くの市民の憩いと潤いの場として親しまれています。 この公園のテ-マは「武蔵野の風と光」で、武蔵野の自然の再現を図っています。園内全体には、ケヤキ、クスノキ、コナラ、エゴノキ、ウツギ、ヤマハギなどの樹木とクマザサや各種の野草が植えられ、武蔵野の雑木林が再現されています。 そしてその間をぬうように、水が小川となって流れ、その小川の川底には市有林の萌芽更新の際に伐採した樹木を焼いた炭を置いて水の浄化をし、ホタルの養殖も行っています。 小川の水は園内中央に広がる池に注ぎ込み、その回りの湿地帯にはハナショウブなどが植えられて、それらを木道を歩きながら楽しめます。
(写真と文:『東京建築MAP』より)
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