早稲田大学37号館 早稲田アリーナ
基本設計 山下設計 実施設計・監理 山下設計・清水建設設計共同企業体
第46回東京建築賞|東京都知事賞、一般二類部門最優秀賞
北東より俯瞰する。建物の大半を地下に埋設し、上部を地域・社会に開かれたパブリックスペース「戸山の丘」としている。
  • 北東より俯瞰する。建物の大半を地下に埋設し、上部を地域・社会に開かれたパブリックスペース「戸山の丘」としている。
  • 2階レベルの屋上庭園「戸山の丘」を見下ろす。
  • 2階交流テラス。
  • 2階ラーニングコモンズより「戸山の丘」方向を見る。
  • 最大収容人数6,000人のメインアリーナ。
  • 配置・2階平面図
  • 東西断面図
  • 地下2階平面図
  • 断面詳細図
建築主:
学校法人早稲田大学
基本設計:
株式会社山下設計一級建築士事務所
実施設計・監理:
山下設計・清水建設設計共同企業体
施工:
清水建設株式会社
所在地:
東京都新宿区
主要用途:
大学
構造:
SRC造、一部S造・RC造
階数:
地上4階/地下2階
敷地面積:
33,362.24㎡(キャンパス全体)
建築面積:
5,485.66㎡
延床面積:
14,028.37㎡
工事期間:
2016年2月〜2018年11月
撮影:
新建築社写真部
設計趣旨:
 「早稲田大学37号館 早稲田アリーナ」は、早稲田大学戸山キャンパスに位置する最大収容人員6,000人の多機能型スポーツアリーナを中心とする複合施設である。今、世界ではSDGsに代表されるように、持続可能な開発目標の設定と、その実現に向けた方策の立案が求められている。大学を取り巻く環境もこれに近似した状況にあり、本計画では早稲田大学の未来に向けた理念を表出する新たなシンボルとしての建築のあり方を考えた。
 特徴は建物の大半を地下に埋設し、その地表に「戸山の丘」と名付けた第二の大地ともいえる、地域・社会にも開かれた新たなパブリックスペースを設けた点にある。大学と地域をつなぎあわせると共に、平均土厚約1mの植栽基盤を持つ「戸山の丘」の自然環境が、地域の生態系強化やバイオフィリックデザインによるキャンパスの知的生産性向上、外部からの熱負荷低減や地中熱利用等によるZEB Ready達成など、多分野の課題解決に貢献している。(水越 英一郎、篠﨑 亮平、宮崎 俊亮)
水越英一郎(みずこし・えいいちろう)
山下設計 設計本部 ジェネラルアーキテクト
1970年 千葉県生まれ/1993年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1995年 早稲田大学大学院修士課程修了後、山下設計入社
篠﨑亮平(しのざき・りょうへい)
山下設計 デザインラボ チーフアーキテクト
1977年 埼玉県生まれ/2000年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/2002年 早稲田大学大学院修士課程修了後、山下設計入社
宮崎俊亮(みやざき・しゅんすけ)
清水建設 設計本部 教育・文化施設設計部 設計長
1979年 東京都生まれ/2002年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/2004年 早稲田大学大学院修士課程修了後、清水建設入社
選考評:
 歴史を誇る都内の大学の傾向として、年月と共に増え続ける建物群が決して広大ではないキャンパス空間を息詰まるものにしがちである。本計画は旧37号館・記念会堂の建て替えに当たり、アリーナ本体を完全に地中に埋設させることで、豊かな緑のランドスケープを創出しようとしたものである。
 地域に完全に開放された門を入ると自然と目に入る緑の丘に導かれ、ジグザグの緩やかなスロープを上がっていくと木立に囲まれた楕円形の「戸山の丘」に到達する。このシンプルな芝生の丘は、学生たちの自発的な学びの場であるラーニングコモンズの交流テラスとつながり、都民と学生が互いに触れ合い・交流する魅力的な外部空間となっている。
 地中に埋められたアリーナは、年間を通し15~20℃という安定した地熱を有効活用する躯体蓄熱+空調・換気システムを採用するなど、徹底した「小」エネルギー化が図られ、ZEB Readyを取得している。
 地域への開かれ方、環境への配慮、質の高いアリーナ空間など、地域環境の向上に高く寄与する施設であり、そのためのコストを惜しまなかった建築主の見識の高さを含め東京都知事賞に相応しい作品である。(宮原 浩輔)
宮原 浩輔(みやはら・こうすけ)
一般社団法人日本建築士事務所協会連合会理事、一般社団法人東京都建築士事務所協会常任理事、株式会社山田守建築事務所代表取締役社長
1956年鹿児島県生まれ/1981年東京工業大学建築学科卒業後、株式会社山田守建築事務所入社/現在、同代表取締役社長