コープ共済プラザ
日建設計
第45回東京建築賞|一般二類部門奨励賞
建築主:
日本生活協同組合連合会
設計:
株式会社日建設計一級建築士事務所
施工:
株式会社フジタ
所在地:
東京都渋谷区千駄ヶ谷4-1-13
主要用途:
事務所
構造:
鉄骨鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造、基礎免震構造
階数:
地上8階/地下2階/塔屋1階
敷地面積:
1,556.80㎡
建築面積:
1,216.15㎡
延床面積:
8,562.86㎡
工事期間:
2013年3月〜2016年12月
撮影:
雁光舎(野田東徳)
設計趣旨:
 東日本大震災では東京でも天井が落ち、照明、空調が制限され、窓が開かないオフィスが問題になった。
 コープ共済プラザは、震災の教訓を生かしつつ最新の設備システムと融合したテナントオフィスビルである。
 逆スラブ構法により吊天井と設備をなくし、安心できる執務空間とした。コンクリート天井からの放射空調と、床空調を組み合わせ、温度ムラや気流感を抑えた快適で体に優しい温熱環境を実現。
 また、太陽熱とコージェネ排熱を熱源とする新しい空調システムと、地中熱や井水で外気を調温し乾燥剤で除湿する外調機を組み合わせ、省エネとBCPを両立した。
 緑豊かなバルコニーと開けられる窓。窓辺の通路は草花に彩られ、人は窓を開けたくなる。床からの気流は有孔と無孔カーペットを張り替えることで調整でき、照明は手元で明るさを調整できる。
 震災による価値観の変化を建築として時代にとどめ、人びとが自発的に環境に手を加えたくなる、新しい環境建築である。(羽鳥 達也)
羽鳥 達也(はとり・たつや)
1998年 武蔵工業大学(現東京都市大学)大学院を経て日建設計に入社/専門は建築意匠設計/主な作品:神保町シアタービル(2007年)、ソニーシティ大崎(現NBF大崎)(2011年)、東京芸術大学音楽学部4号館第6ホール改修(2014年)、桐朋学園音楽部門調布キャンパス1号館(2014年)、コープ共済プラザ(2016年)のほか、逃げ地図の開発
選考評:
 施主である日本生活協同組合連合会(通称コープ)は、東日本大震災当時、入居していた浦安市内のビルの大きな震動と、それに伴う天井落下、家具什器類の転倒に加えて、負傷者が出るという恐怖を体験した。このことを契機として移転新築されたコープ共済プラザは、大災害時の恐怖を和らげ、事業継続性確保のために、免震構造とすることは言うに及ばず、徹底した省エネビルとして建設された。
 省エネについては、建設地が神宮の森に隣接する都内有数のクールスポットという地の利を活かして自然風を室内に採り入れ、外壁緑化のために張り巡らしたチェーンに沿って貯留雨水を流し、太陽熱、発電余熱のフル利用が図られている。その他に、逆梁とした天井面のコンクリートスラブはそのまま、大きな熱容量を有する放射空調設備となり、床面からの空調との組み合わせで快適な室内環境を生み出している。
 こうした設計姿勢には、考えられるすべての再生可能エネルギーの利用と、快適執務空間の実現に向けた設計方針を明確に見ることができる。また執務空間の快適性の日常的な改善や保持を、機器まかせではなく、施設利用者自身がそのことに関与できる工夫が施されていることに、これからのオフィスビルの方向性を示唆する姿勢がみられる。
  また落下の危険性がある天井を貼らずに、従来天井内に設置される空調機器は逆梁としたRCスラブと床下との空間に納めるなど、地震対策にも抜かりがない。そして、1階ピロティ部には、災害時に帰宅困難者となった人びとを受け入れるための井戸、トイレなどの施設も用意されている。
 これ等の設計上の工夫が十分活かされ、よりよい環境として発展の余地が感じられる設計は高く評価される。(金田 勝徳)
金田 勝徳(かねだ・かつのり)
構造家、株式会社構造計画プラス・ワン会長
1968年 日本大学理工学部建築学科卒業/1968〜86年 石本建築事務所/1986〜88年TIS&Partners/1988年〜現在 構造計画プラス・ワン/2005〜10年 芝浦工業大学工学部特任教授/2010〜14年 日本大学理工学部特任教授、工学博士