ウェルケアガーデン深沢
日建ハウジングシステム
第45回東京建築賞|一般二類部門優秀賞
建築主:
株式会社サンケイビル
設計:
株式会社日建ハウジングシステム一級建築士事務所
施工:
株式会社森組東京本店
所在地:
東京都世田谷区深沢
主要用途:
老人ホーム、身体障害者福祉ホーム、その他これらに類するもの
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上3階/地下1階
敷地面積:
3,390.69㎡
建築面積:
1,816.72㎡
延床面積:
4,628.50㎡
工事期間:
2016年12月〜2017年12月
撮影:
雁光舎(野田東徳)
設計趣旨:
心のあり方を大切にする老人ホーム
 入居者が、人として、他人の援助を借りずに、いつまでも心身ともに自立し、健全かつ充実した生活できる介護を目指している。建物と広場を街に開き、積極的に地域と繋がり、文化教室を開催するなど、高齢者ならではの知識や経験を継承し、活動する場を生み出すことで、心身の回復を促し、人としての自尊心や安らぎを保ち、暮らしの充実感を得ることを大切にする老人ホームである。
 広場や地域の集いのカフェライブラリーは、日常生活における地域住民との助け合いを促す交流の場である。日本は世界に先駆けて超高齢化を迎えており、労働人口の減少などから介護士不足が社会問題になっている。積極的に街に対して開き、視覚的にも透明性を持たせることで、地域交流を活性化させ、人と社会との触れ合いにより健全な精神と、さらには介護士の負担を軽減し、介護の好循環を生み出す、今後の日本に必要な新たな老人ホームの提案である。(須﨑 正裕、中村 直人)
須﨑 正裕(すざき・まさひろ)
1980年 三重県生まれ/2002年 芝浦工業大学建築学科卒業/2004年 千葉大学大学院都市環境システム専攻修了後、日建ハウジングシステム入社/現在、同社設計監理部チーフデザイナー
中村 直人(なかむら・なおと)
1983年 愛知県生まれ/2004年 都城工業高等専門学校卒業/2008年 鹿児島大学大学院理工学研究科建築学専攻修了後、日建ハウジングシステム入社/現在、同社設計監理部チーフデザイナー
選考評:
 介護老人ホームは従来周辺環境から孤絶し閉鎖的な環境となるのが一般的であるが、この計画ではあえて周囲のコミュニティに積極的に開放し、居住者の社会性を持続させようとする新しい試みを提案型プロポーザルで評価され、実現した。老人ホームの居室棟の前面に低層棟を設け、レストラン、ラウンジ、ライブラリー、アスレチック等の共有部分を配している。
 この共有部分の前面に広がる広場と一体となって外部に向けてオープンな平面構成を計画し、さまざまな事業プログラムを企画して高齢者の持っている経験、知識を積極的に引き出す場をつくり、周辺住民との密接な交流を実現しようとしている。
 立地は東京都世田谷区の高級住宅地にあり、高齢者人口が増加していく典型的なエリアであることからコミュニティの核としての機能も果たしていくであろうことを予感させる。
 建築は限られたコストと建設スケジュールの中でPCを多用して、密度の高い建築に仕上がっている。
 各部屋のドア脇にしつらえられたガラスの小箱の中に居住する人の趣味の作品が展示されているのが、居住者の人柄を表明する仕掛けとして印象深い。
 高齢者が社会性を維持して積極的に周囲と交流して充実した生活を送ることがこれからの社会に求められる以上、老人ホームのあるべき姿を提案している作品である。(岡本 賢)
岡本 賢(おかもと・まさる)
建築家、一般社団法人日本建築美術協会会長
1939年東京都生まれ/1964年 名古屋工業大学建築学科卒業後、株式会社久米建築事務所(現・株式会社久米設計)/1999年 同代表取締役社長/2006年 社団法人東京都建築士事務所協会副会長/2014年 一般社団法人日本建築美術協会会長