東京大学総合図書館 別館
清水建設 設計監修|東京大学キャンパス計画室(野城智也・川添善行)・同施設部
第45回東京建築賞|一般二類部門最優秀賞
建築主:
国立大学法人東京大学
設計・工事監理:
清水建設株式会社一級建築士事務所
設計監修:
東京大学キャンパス計画室(野城智也・川添善行)・同施設部
施工:
清水建設株式会社
所在地:
東京都文京区本郷7-3-1
主要用途:
大学
構造:
鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
階数:
地上1階/地下4階
敷地面積:
304,880.06㎡
建築面積:
1,397.47㎡
延床面積:
5,752㎡
工事期間:
2014年11月〜2017年5月
撮影:
小川 重雄
設計趣旨:
 本郷キャンパスの敷地不足と、新しい学習形態に対応する空間の確保というふたつの課題を同時に解決するため、総合図書館本館前の広場の地下に300万冊収蔵の自動化書庫と、創造的学習の場であるライブラリープラザを含む別館を計画した。狭隘敷地に地下構築物を実現するため、土木施工技術のニューマチックケーソン工法を採用した。既存の噴水を地下空間に自然光を導くトップライトと組み合わせて整備し、スギの天蓋は、室内騒音の拡散と照明装置として機能すると共にスギの香りによるリフレッシュ効果をもたらした。熱負荷が小さい地下の特性を生かし、輻射パネルと全面床吹き出し空調を組み合わせ、気流を感じない穏やかな室内環境としている。また最大200人が滞在してもそれぞれの対話に支障がないよう高い吸音性を持つ仕上げを各所に採用した。
 さらに、建設地で発見された遺構をベンチや床パターンとして広場に再生して、歴史の重層性を視覚化し、アーカイブの場にふさわしい計画とした。(川添 善行、稲場 万鎖夫)
川添 善行(かわぞえ・よしゆき)
1979年 神奈川県生まれ/2001年 東京大学工学部建築学科卒業/2002年 デルフト工科大学留学/2004年 東京大学工学系研究科修士課程建築学専攻修了/2007〜08年 束京大学都市持続再生研究センター/2008年 工学博士(束京大学工学系研究科社会基盤学専攻)、川添善行・都市・建築設計研究所設立/2008〜11年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻助教/2011〜13年 同大学生産技術研究所講師/2014年~ 同准教授/2017年~ 空間構想一級建築士事務所主宰
稲場 万鎖夫(いなば・まさお)
1962年 北海道生まれ/1986年 東北大学工学部建築学科卒業/1988年 同大学工学部大学院修士課程修了後、清水建設入社/現在、設計本部教育・文化施設設計部設計長
選考評:
 東京大学の本郷キャンパスにあって、敷地は総合図書館に隣接したキャンパスランドスケープ上の焦点のひとつであり、学生や教職員たちの出会いのプラザとして機能していて、プログラムが求める「情報の出会いの場」の敷地としてこれ以上ない適地だった。しかしそこに建物を建ててしまえば折角のプラザがなくなる。そこでそのプラザの地下に図書館と、学生・研究者が出会うコモンズを設けたのは、あっけないくらいの正攻法の回答である。ただし、周囲を取り巻く既存棟との接続は注意深く一度サンクンガーデンに下ろしてから導入し、キャンパス軸の焦点を結ぶ噴水の水盤は継ぎ目のない巨大な1枚のアクリル板で実現、歴史的な遺構などの記憶をランドスケープ上に記すなど、ここが特別な場所であることを示すハイライトが連続する。内部は噴水の水盤をトップライトとする強い求心性を持った円形であり、放射状の木製天井ルーバーが人や知識が集う空間であることを示している。さらにその下には300万冊の知を収蔵する全溶接の鉄板の外殻で包まれたボリュームが沈めてある。ロボットも併用した高い技術力によって、実現してみるとこれ以上真っ直ぐな回答が思いつかいほどの見事な構成が高い評価を得、最優秀との評価を受けた。(車戸 城二)
車戸 城二(くるまど・じょうじ)
建築家、(株)竹中工務店 常務執行役員
1956年生まれ/1979年 早稲田大学卒業/1981年 同大学院修了後、株式会社竹中工務店/1988年 カリフォルニア大学バークレー校建築学修士課程修了/1989年 コロンビア大学都市デザイン修士課程修了/2011年 株式会社竹中工務店設計部長/現在、同社常務執行役員