Seven Gardens House
IKAWAYA建築設計
第45回東京建築賞|戸建住宅部門優秀賞
建築主:
川口 哲生・知子
設計:
株式会社IKAWAYA建築設計一級建築士事務所
施工:
株式会社宮嶋工務店
所在地:
東京都国立市
主要用途:
一戸建ての住宅
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
663㎡
建築面積:
222㎡
延床面積:
228㎡
工事期間:
2016年11月〜2017年9月
撮影:
*Takumi Ota、**Akinobu Kawabe
設計趣旨:
 東京国立市の閑静な住宅街にあるこの住宅の周辺でも、相続時に土地を細分化するミニ開発などが増加している。暮らしや風景は窮屈になる。そこで、土地を細分化せずに新居を計画した。そして、家と庭を同時に設計し、庭が果たす役割を拡張することで、都市住宅の可能性を拓くことを目指した。
 まず、敷地全体に部屋と庭を市松状に配置し、すべての部屋が庭をもつ明るく開放的な環境をつくる。庭は将来部屋を増築する際の敷地となる。間取り変更や同居世帯数の変化など、持続的に手を加えることができる。
 木造でありながら、庭と室内が一体化する大開口を設けるため、3次元立体解析モデルを使い検証した。
 庭に面した窓には、ベンチや勉強机を設え、窓辺で過ごすことを重要にした。異なる部屋の窓と窓が重なる瞬間、家族や庭、大きな環境と多くの気配を感じられる。
 庭は季節ごと、年を重ねるごとに変化し、庭と一体化した室内空間も、一緒に変わっていく。これは、庭、暮らし、街の風景が共に成長する住まいなのである。(井川 充司)
井川 充司(いかわ・あつし)
1980年 大阪府生まれ、岐阜育ち/2004年 東京都立大学大学院修士課程修了/2005~13年 中村拓志&NAP建築設計事務所/2013年 井渡屋建築設計事務所設立/2017年 IKAWAYA建築設計に改称
選考評:
 東京郊外の閑静な住宅地の中に建つ住宅である。  諸室を平屋に抑えて敷地全体にばらまき市松模様状に配し、7つの坪庭をつくるというダイヤグラム的な全体像が、コンセプチュアルでスタイリッシュな印象を醸し出している作品であるが、実際に訪れてみると、極めて心地よい住空間が生み出されていることが分かる。  7つの坪庭は、近隣の住宅の庭を借景するように、敷地を超えたつながりを意図してひとつひとつ丁寧にデザインされているため、実際の大きさ以上に広がりや奥行き、そして明るさを感じるものに仕上がっている。このため坪庭に面する諸室も坪庭に対して無理なく開かれ、内外がつながった暮らしやすそうな住空間が自然に生まれている。  また、図面ではどこも一様に見える市松パターンが、実際にはすべてに異なる表情を持っているために、住宅の中へと進むほどに、徐々に「奥」へと導かれた感覚がつくり出されていて飽きることがない。  同時に、コンセプチュアルな全体像とは対峙的に、各種建築金物、建具、幅木などの各所のディテールに現れている、こだわりを持ちつつも適切に抑制されたつくり込みの巧みさも、この住宅にリアリティを与えていると感じた。(山梨 知彦)
山梨 知彦(やまなし・ともひこ)
建築家、株式会社日建設計常務執行役員 設計部門プリンシパル
1960年 神奈川県生まれ/東京藝術大学美術学部建築学科卒業/東京大学大学院都市工学専攻修了/1986年 日建設計