OREC green lab 長野
キノアーキテクツ
第44回東京建築賞一般一類部門優秀賞
建築主:
株式会社オーレック
設計:
株式会社キノアーキテクツ一級建築士事務所
施工:
千広建設株式会社
所在地:
長野県長野市
主要用途:
ショールーム
構造:
木造、一部鉄骨造
階数:
地上1階
敷地面積:
1,873.05m2
建築面積:
510.54m2
延床面積:
465.34m2
工事期間:
2015年11月〜2016年4月
撮影:
阿野 太一
設計趣旨:
 農機具メーカーORECのショールーム。ブランドイメージの発信拠点かつ地域コミュニティとイベントを通して関わる場所として、長野市を敷地に選んだ。というのも、主力製品である乗用草刈機は果樹園で広く利用されており、敷地が接道する国道18号、通称「アップルライン」の生活圏にある農家4,000戸のうち約半数が果樹園を営むからだ。
 アップルラインを利用する農家へ製品をアピールするため、道路と平行に棚を設け、農機具のスケールを活かした立体的な展示を採用した。この棚から深く庇を伸ばし、棚の周りに様々なスペースを広げる構成とした。
 棚は、建物の水平力を負担する耐力壁にもなり、周囲に解放的な空間を生み出す。天井が高いショールームにおける夏季の強い日差しを、この深い庇で避ける狙いもある。
 棚の構造用合板をそのまま現しで用いることで、ショールームを温かみのある木質の空間にすると共に、自然と共生する会社のブランドイメージの構築を図った。(木下 昌大)
木下 昌大(きのした・まさひろ)
1978年 滋賀県生まれ/2003年 京都工芸繊維大学大学院修士課程修了/2003年 C+A/2005年 小泉アトリエ/2007年 KINO architects設立/2014年 京都工芸繊維大学助教
選考評:
 北側に北陸新幹線が走り、南側は国道18号線に面した敷地に建つ、農機具メーカーのショウルームである。そこは郊外の幹線道路サイドによく見られる、自動車のショウルームやモールが建ち並ぶ街並みとは異なり、前面の国道を走る車以外に人影もほとんど見られない、緑豊かな農村の一角という風情である。
 そうした環境の中にあるこのショウルームは、適度の高さと厚さをもって水平に広がる大屋根と、それを支えるための構造要素でもある数段の棚で構成されている。見える範囲の縁から縁まで、途切れることのなく垂直・水平の木材で構成されている。その木材は地色のまま仕上げられていて、それらとカラフルにデザインされた小型農機具との対比が、清々しく、潔さを感じさせる。
 構造は軒先の鉄骨柱を除いて、仕上げと構造部材を兼ねた木材を用いた木質構造である。構造形式は比較的大スパンの屋根梁以外は、120mm ×120mmの小径集成材と構造用合板を組み合わせたサンドイッチパネルで構成されていて、その単純明快さがこの建築物の清々しさを強調している。
 「なぜ木質構造に?」という問いに対して、「コストがなかったから」との答えの率直さも十分納得できる。不必要に力むことなく、さりげない仕上げのあり方や、居住空間の環境にもきちんと配慮した設計力は高く評価される。(金田 勝徳)
金田 勝徳(かねだ・かつのり)
構造家、構造計画プラス・ワン会長
1968年 日本大学理工学部建築学科卒業/1968〜86年 石本建築事務所/1986〜88年TIS&Partners/1988年〜現在 構造計画プラス・ワン/2005〜10年 芝浦工業大学工学部特任教授/2010〜14年 日本大学理工学部特任教授、工学博士