梅郷礼拝堂
加藤建築設計事務所
第44回東京建築賞一般一類部門最優秀賞
建築主:
宗教法人 大師山報恩寺、株式会社 笹川
設計:
一級建築士事務所株式会社 加藤建築設計事務所
施工:
株式会社 渡辺富工務店
所在地:
千葉県野田市
主要用途:
寺院
構造:
木造
階数:
地上1階
敷地面積:
2,970.85m2
建築面積:
220.41m2
延床面積:
193.58m2
工事期間:
2015年11月〜2016年6月
撮影:
畑 拓、加藤 詞史
設計趣旨:
場所を書き換えて柔らかな公共性を得る建物は、美しい竹林、日本庭園、盆の行事等を行う池の3方向に沿ってのびる柔らかな曲線をもち、自然と一体となった(宗派不問の)新しい考え方に基づいた礼拝施設である。
1395 年、野田市内に創建された寺院の別院で、廃寺となった寺院の再興。新たに礼拝堂を建て古い霊園を整備、新住職をおく計画。
今後100年単位で使用される祈りの場所には、新しい使われ方を実現して行くプランニングと長持ちする性能が重要であると考え、多様な活動を促す平面計画、祈りの対象としての屋根と架構、経年変化に対する木仕口を、その解とした。
この空間の実現を、組柱が相持ちで支え合った架構で構想。構成は身近な材の集積が特徴で、場所の力を総合的に高めている。寺院が地域に対して、どのように開き、接点をもつかを課題として、運営とさまざまな催事に取り組んできた。寺院が地域を結び広がる顔の見えるつながりが重要になると考えている。(加藤 詞史)
加藤 詞史(かとう・ことふみ)
1964年 岐阜県生まれ/1989年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1991年 同大学院理工学研究科修士課程修了/1991〜2003年 池原義郎・建築設計事務所/2006年〜 加藤建築設計事務所主宰/2008〜10年 早稲田大学建築学科助教/2010年〜早稲田大学理工学研究所研究員他
1964年 岐阜県生まれ/1989年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1991年 同大学院理工学研究科修士課程修了/1991〜2003年 池原義郎・建築設計事務所/2006年〜 加藤建築設計事務所主宰/2008〜10年 早稲田大学建築学科助教/2010年〜早稲田大学理工学研究所研究員他
選考評:
野田市郊外のこの辺りはゴルフ場が密集している。そのひとつ、千葉カントリ―クラブ梅郷コース内にわれわれの乗った車が彷徨い込んでいくのでどうなることかと思っていると、やがて開けた霊園に出た。梅郷礼拝堂はこの霊園の中心施設である。延床面積200㎡ほどのY字型の空間を6種18本の組柱で架構している。現地に行くまではこの内部空間がイメージしきれなかった。設計者のいう「玉すだれ」状の木架構が建物規模にしては大げさなものではないかと気になっていたのである。しかし、現地で確認するとそれが杞憂だということがわかった。組柱はそのほとんどに105mm×105mm角の製材(ヒノキ)が用いられているが、互いにもたれあうように架構された内部空間(幅員約7m、構造スパン約6m)は、このような架構が新奇なものであるにも関わらず、木造空間としてとても自然なものに感じられた。銅板一文字葺の屋根も見事な出来で、Y字型の平面形をエレガントに隆起させた屋根形状が、余計な細部意匠なくして表現されているのが気持ちよい。軒先の薄さが屋根に軽やかな印象を与える。3つのスロープが出会う屋根頂部は「巻きハゼを用い、釣り子をハンダで固定した」という説明を受けたが、ハンダの一部は設計者自らセルフビルドしたとのことである。設計者が建設行為に積極的にコミットし、専門職の職人がそれに喚起されて設計と施工が一体となったものづくりが行われるという、幸福な関係性が建物に滲み出ているように思われた。稀有な作品である。(渡辺 真理)
渡辺 真理(わたなべ・まこと)
建築家、法政大学デザイン工学部教授、設計組織ADH共同代表
群馬県前橋市生まれ/1977年 京都大学大学院修了/1979年 ハーバード大学デザイン学部大学院修了/磯崎新アトリエを経て、設計組織ADHを木下庸子と設立
建築家、法政大学デザイン工学部教授、設計組織ADH共同代表
群馬県前橋市生まれ/1977年 京都大学大学院修了/1979年 ハーバード大学デザイン学部大学院修了/磯崎新アトリエを経て、設計組織ADHを木下庸子と設立