CON-FLEX
河野有悟建築計画室
第44回東京建築賞共同住宅部門優秀賞
建築主:
藤崎 麻衣
設計:
一級建築士事務所有限会社河野有悟建築計画室
施工:
株式会社ウルテック
所在地:
東京都品川区
主要用途:
長屋
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
137.77m2
建築面積:
82.65m2
延床面積:
152.65m2
工事期間:
2014年8月〜2015年3月
撮影:
大沢 誠一
設計趣旨:
 木造住宅が密集する地域に、路地の奥に住まう地域性を投影したメゾネット3軒の賃貸長屋の計画。コアによって1棟のボリュームを3住居に分節。コアには生活に必要な設備や機能を集約し、その間に自由でニュートラルな空間生み出した。定型の住まい方でなく、多様な生活スタイルに対応できる住まいとすることで、空間の特徴をひき出し、他の賃貸住宅にない付加価値とした。
 敷地形状からL型となった外形に対し、コアを扇状に配することで、さまざまな方向からの水平力全てを負担し、主空間に大開口や横連窓を設けることが可能になった。
 また、光が届きにくい中央の住戸にも等しく陽を導き、他の住戸と変わらない価値をもたらした。
 東京には更新が迫っている木造密集地が多くある。画一的な建替えでは路地空間は失われ、どこも変わらない街並みに置き換えられていく。このような立地だからこそ地域性(=路地空間)を継承し、活かした住空間のありかたを目指した。(河野 有悟)
河野 有悟(こうの・ゆうご)
1969年 東京都生まれ/1995年 武蔵野美術大学建築学科卒業/1995〜98年 早川邦彦建築研究室勤務/1998〜2002年 武蔵野美術大学助手/2002年 河野有悟建築計画室設立/2003年〜 武蔵野美術大学非常勤講師/2011年〜 東京電機大学非常勤講師
選考評:
 都心の住宅地に計画された、長屋形式の集合住宅の計画である。
 間口が狭く奥行きが深い敷地に、アプローチのための通路を片方に寄せて取り、残りのL字型の部分に3軒のメゾネット住宅を納めている。各部屋2面以上の開口から採光と通風を取り込むために、住戸間の戸境壁は平行ではなく放射状に配されていて、それが各戸の内部空間を特徴づけているところが巧みである。スタイリッシュな内部空間は、写真で見る限り生活感を感じさせないのだが、実際に部屋を見学させていただくと、若い世代は意外に上手に住みこなしていたのも好印象であった。
 若い世代がこうした住居をまるで衣服を脱ぎ着するかのように移り住む生活様式は、あるボリュームを持ったマーケットを生み出しているようだが、そろそろこうした特定世代に特化した居住空間をフローとしてつくるトレンドの中にも問題が見え始めているようにも感じる。10数年後には、かつて木賃住宅ゾーンが抱えたような問題を、こうした住宅群がカタチを変えて抱え込みはしないだろうか。口当たりよくデザインされた住まいが、建築家によってあまりにも無批判に提供されてはいないだろうか、といった心配が脳裏をかすめた。(山梨 知彦)
山梨 知彦(やまなし・ともひこ)
建築家、株式会社日建設計常務執行役員 設計部門副統括
1960年 神奈川県生まれ/東京藝術大学美術学部建築学科卒業/東京大学大学院都市工学専攻修了/1986年 日建設計