早稲田小劇場どらま館
竹中工務店
第43回東京建築賞一般一類部門優秀賞
建築主:
学校法人早稲田大学
設計:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
東京都新宿区
主要用途:
劇場
構造:
鉄骨造
階数:
地上4階
敷地面積:
121.96m2
建築面積:
111.35m2
延床面積:
231.06m2
工事期間:
2014年6月〜2015年2月
撮影:
エスエス 島尾 望
設計趣旨:
演劇を愛する学生のための芝居小屋
演出家、鈴木忠志氏が劇団「早稲田小劇場」を立ち上げた商店街の一画に、次世代に演劇文化を繋ぐ学生のための芝居小屋を再建する計画。間口8m、奥行15mの敷地に建つ72席の小さな劇場ながらも、演劇の街「早稲田」の顔となる施設を目指した。街路から芝居小屋への道行きを外部化した奥行き感のある構成によって、訪れる来客の賑わいが街とシームレスにつながり、学生たちの表現の場は劇場内部から外部へと滲み出している。小空間を有効活用するホワイエの屋外化、滞留空間確保のために主階を2階化、演劇に用いる単管バトンのデザインへの展開などの新たな試みが小建築に凝縮されている。計画時においては学生や演劇関係者と連携し、それぞれの想いを小さな小屋に盛り込んだ。竣工後2年にわたり、学生たちは週替わりに公演を繰り返し、街との関わりの中で活気に満ちた演劇文化が醸成されている。
(茶谷 明男、大石 卓人)
茶谷 明男(ちゃたに・あきお)
1959年 兵庫県生まれ/1984年 早稲田大学大学院建設工学修士課程修了後、竹中工務店入社/現在、竹中工務店 東京本店 設計部 設計第1部長
1959年 兵庫県生まれ/1984年 早稲田大学大学院建設工学修士課程修了後、竹中工務店入社/現在、竹中工務店 東京本店 設計部 設計第1部長
大石 卓人(おおいし・たくと)
1981年 静岡県生まれ/2006年 法政大学大学院建設工学修士課程修了後、竹中工務店入社/現在、竹中工務店 東京本店 設計部 設計第1部門 設計1グループ 主任
1981年 静岡県生まれ/2006年 法政大学大学院建設工学修士課程修了後、竹中工務店入社/現在、竹中工務店 東京本店 設計部 設計第1部門 設計1グループ 主任
選考評:
早稲田大学の演劇サークルの活動拠点として、多くの演劇人を輩出した歴史ある「早稲田小劇場」の再建計画である。早稲田南門通り商店街の一画、間口8m奥行15mの矮小な計画地にあって、劇場というよりも、昔ながらの仮設的な芝居小屋の風情を持つおおらかな建築である。その一方で、大学の施設でありながらも学外に立地するため、文教地区の劇場用途許可、外階段から続く外部テラスの事実上のホワイエ化の実現等の法的解決力や、性能を要求されるホールの薄肉外装の中に、構造や設備等を納め、狭い敷地を有効に使い切るある意味腕力を感じさせる設計でもある。そして、建築の部品として各所に使用されている演劇用単管バトンや、スチールアングル材によるホールの椅子等、一見安価な材料による雑な表現に見えるが、この施設の性格や利用される場面をかなり注意深く考え抜いた的確なデザインであると感じた。最近どちらかというと華美に走る大学施設を見ることが多い中、若い学生たちの施設として的を射たすがすがしい建築である。
残念ながら審査は閉館時に行われたが、公演時には道路に面したスチールフラットバーのスクリーンを通して、来館者や演者がテラスホワイエの中に見え隠れする街と一体となった風景が目に浮かぶ優れた芝居小屋である。
選考委員|宮崎 浩
宮崎 浩(みやざき・ひろし)
1952年 福岡県生まれ/1975年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1977年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了/1977〜89年 株式会社槇総合計画事務所/1989年 株式会社プランツアソシエイツ設立/1990〜2010年 早稲田大学非常勤講師/2011〜13年 同大学大学院客員教授
1952年 福岡県生まれ/1975年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1977年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了/1977〜89年 株式会社槇総合計画事務所/1989年 株式会社プランツアソシエイツ設立/1990〜2010年 早稲田大学非常勤講師/2011〜13年 同大学大学院客員教授