a-blanc
ゼロワンオフィス
第43回東京建築賞共同住宅部門最優秀賞
建築主:
赤堤CH建設組合
設計:
株式会社ゼロワンオフィス一級建築士事務所
施工:
株式会社片山組
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
共同住宅(コーポラティブハウス)
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地下1階、地上3階、塔屋1階
敷地面積:
853.46m2
建築面積:
489.04m2
延床面積:
1,557.08m2
工事期間:
2013年12月〜2015年3月
撮影:
益永 研司、*ゼロワンオフィス
設計趣旨:
 建築設計の際、街に面する顔づくりも大切だと考えている。共同住宅の場合、外観の多くを占めるのはバルコニーや廊下であるが、その大半は物干し場や室外機置き場であり、廊下は動線としての通路となっている。本来「裏」になるべきものが「表」に出ているといえる。
 特に今回の敷地は、まちなみにとって大きな影響のある、住宅地の表通りに面する角地である。
 そこで本計画は、建物外周に木製ルーバーのスキンを設けることで柔らかい表情をつくり出し、街から入居者の生活感を感じにくくしている。一方、室内にとっては外からのほどよい目隠し、日射の緩衝材としての役割もあり、バルコニーは中間領域的なスペースとなった。
 建物の足元は里山をイメージした植栽のスキンを施し、一年を通して四季折々の彩りを感じられ、室内からと街ゆく人の目を楽しませている。
まちなみを形成する建物として、街とゆるく繋がり、お互い良い影響を与え合うことを目指した計画である。
(伊藤 正)
伊藤 正(いとう・ただし)
1959年生まれ/早稲田大学専門学校卒業/1978年 早稲田大学理工学部建築学科池原研究室/1981年 清水建設株式会社/1984年 フリーランス/1989年(有)ゼロワンオフィス設立/2001年 株式会社に組織変更し現在に至る
選考評:
 親から継承した生産緑地というルーツを生かしながら、自らの住まいをいかにつくるか。一軒分の家賃収入の確保と、いくらかの自由になる敷地は残したものの、その大部分は分譲型コーポラティブハウスとして手放し、代わりに湿潤な環境と価値観を共有する隣人との暮らしを手に入れた。
 13世帯の独立性は高く、ゆとりある共有空間が住戸間にほどよい距離と外部空間との繋がりを可能にし、清々しい。梁・柱型を表出させない構造計画が、こうした住戸の配置や間取りに自由度をもたらし、将来の改修も見据えた建物の長寿命化を想定した計画となっている。
 外周に巡らしたテラスがつくる陰影は、生活感を和らげると同時に、住人の考えでしつらえる環境調整ゾーンである。まちなみに対して、植栽と共に豊かな住宅地の一助になること間違いなく、公私共に魅力があり最優秀賞とする。
 設計者が長年提案し続けてきた集合住宅のあり方が、建築的にも完成度高く結実しており、また、設計者自らが維持管理にも関わり、当初の設計意図を生かしながら運営する。という集合住宅ならではのサービスも、将来にわたって期待できることを書き添えておく。
選考委員|平倉 直子
平倉 直子(ひらくら・なおこ)
建築家、平倉直子建築設計事務所代表取締役
東京都生まれ/日本女子大学住居学科卒業/日本女子大学、関東学院大学、東京大学ほか/現在、早稲田大学芸術学校非常勤講師