BEAMS
河野有悟建築計画室
第43回東京建築賞戸建住宅部門奨励賞
建築主:
ローレンス・ハンター、京子ハンター
設計:
一級建築士事務所有限会社河野有悟建築計画室
施工:
山庄建設株式会社
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
住宅、ギャラリー
構造:
木質ラーメン構造
階数:
地上3階
敷地面積:
64.24m2
建築面積:
48.95m2
延床面積:
121.09m2
工事期間:
2015年2月〜2015年9月
撮影:
大沢 誠一
設計趣旨:
集成材+スチールトラスの合成梁「beam」が構成する住まい
 間口の狭い敷地に建つ、1階をギャラリーとした3階建の住宅。ギャラリーには通りに対し全面開口と、ひとつの自由な空間が求められた。木造在来工法では耐力壁によって空間が分節される。木造ラーメンとすると耐力壁が不要だが柱の見付けが大きく狭い間口を圧迫する。柱を細くすると梁成が大きくなり空間を塞いでしまう。今回の計画は、集成材の間にスチールトラスを組み込んだ合成梁を用いて立体的で開放的な空間を目指した。柱断面を小さく抑え、梁に塞がれずに視線が抜け軽やかな空間が生まれる。要求強度や場の用途に応じてトラスをさまざまなデザインで自由に配した。トラスは手摺り、日除け、ベンチの背もたれ、欄間などの機能を持ち、かつ、構造フレームがそのまま表れ、空間と外観を組み立てる。この構成・工法によって新たな建築の選択肢を指向している。
(河野 有悟)
河野 有悟(こうの・ゆうご)
1969年 東京都生れ/1995年 武蔵野美術大学建築学科卒業/1995〜98年 早川邦彦建築研究室勤務/1998〜2002年 武蔵野美術大学助手/2002年 河野有悟建築計画室設立/2003年〜 武蔵野美術大学非常勤講師/2011年〜東京電機大学非常勤講師
選考評:
 玉電の呼び名で親しまれる地元の電車、駅前商店街の賑わいを抜け、住宅地に差し掛かった辺りにある自宅兼ギャラリー。美術に造詣の深い夫婦の経歴を活かし、ギャラリーを運営する夢の住まいはひときわ目を引く存在である。敷地は計画道路に一部かかっており、20年使用を目処に、構造上配慮して計画された。
こうしたことから、間口いっぱいを開き3層・ワンフロアを一室空間とすべく、両側木造壁を繋ぐ梁は集成材の間にスチールトラスを組み込んで、軽やかに架け渡している。薄い木造壁と計算されたとりどりに抜ける合成梁によって、すっきりした、挑戦し甲斐がある素直な空間が生まれた。その強度を計算し、遊び心を加えたトラスの造形がつくる特徴的なファサードは、アートの空間として、非住宅を主張するランドマークにも見える。何より、住人がその空間の持つ力を見極め、コレクションや外部の環境と共存する生活スタイルをつくり上げていることに共感した。
 バリアフリーが推奨されるこのごろ、気にはなったが、人それぞれ、今をおいて他にない時を過ごすのもまた良し。
選考委員|平倉 直子
平倉 直子(ひらくら・なおこ)
建築家、平倉直子建築設計事務所代表取締役
東京都生まれ/日本女子大学住居学科卒業/日本女子大学、関東学院大学、東京大学ほか/現在、早稲田大学芸術学校非常勤講師