草津温泉湯畑周辺再整備計画(御座之湯・湯路広場・熱乃湯)
北山孝二郎+K計画事務所
第43回東京建築賞東京都建築士事務所協会 会長賞
建築主:
群馬県草津町
設計:
一級建築士事務所株式会社K計画事務所
施工:
武藤組・柴山建設JV、佐田建設株式会社
所在地:
群馬県吾妻郡草津町
主要用途:
公衆浴場(御座之湯)、公衆便所・休憩所(湯路広場)、演芸場(熱乃湯)
構造:
木造
階数:
地上2階(御座之湯・熱乃湯)
地上1階(湯路広場)
敷地面積:
1,301.65m2(御座之湯)
1,539.26m2(湯路広場)
555.48m2(熱乃湯)
建築面積:
498.67m2(御座之湯)
264.68m2(湯路広場)
253.74m2(熱乃湯)
延床面積:
728.55m2(御座之湯)
99.20m2(湯路広場)
352.36m2(熱乃湯)
工事期間:
2012年6月〜2013年4月(御座之湯)
2013年6月〜2014年4月(湯路広場)
2014年9月〜2015年4月(熱乃湯)
撮影:
ナカサアンドパートナーズ
設計趣旨:
 草津温泉のシンボル的中心、湯畑。ここが町の交通の要所となっているため、交通渋滞が起こり、ゆったり歩くこともままならない状態だった。この問題を解決すべく、町長が「明治から昭和にかけての景観を再生し、湯畑周辺を歩くことを中心にした地域にしたい」という方針を打ち出し、湯畑南側にあるふたつの駐車場を移転させ、人がゆっくり滞在できる場に転換することを決断された。
 この方針を受けて北山創造研究所が草津町の将来像を「湯源湯路街」として基本構想を作成した。このプロジェクトはこの構想案をもとに計画している。
 2軒の旅館跡地にあった駐車場をバスターミナルに近いエリアに移転させ、その跡地を広場と日帰り温泉施設として建て替え、それに加えて耐震不足の「熱乃湯」を新たな考えで再生する計画である。
 3軒の敷地は湯畑に面し旅館や飲食店、神社などのいろいろな建物に挟まれて存在し、民間の建物と町の建物が交互に存在している。各々の建物と既存建物を違和感なく新しい景観として再生するために次のような項目を提案した。
1. 建物は伝統的工法を用いながら木造で建てる。
2. 屋根は当時の板葺きを再現する。
3. 3つの建物を湯畑に向かって計画し、湯畑に開かれた動線をつくる。
 一度にすべてを完成させるのではなく、古いものと新しいものを融合させ、車中心の地域から人中心の地域に変換することによって今までと違う可能性を創造する。時間をかけて町の形を整えていく今回の景観整備では、町のしっかりした信念と存続発展に対する強い情熱が多くの賛同や協力を生み出し、貴重な再生のエネルギーとなった。
 広場や建物が完成した今、夕暮れ時に御座之湯に西日が当たり、湯畑、広場、熱乃湯がひとつの景色に見え、湯畑を取り囲む空間が人の集まる場に変化した。
(北山 孝二郎)
北山 孝二郎(きたやま・こうじろう)
1947年 京都府生まれ/1968年 都市科学研究所入所/1981年 K計画事務所を設立
選考評:
 日本三名泉のひとつで江戸時代は最高位にランクされた草津温泉の湯畑周辺の再整備計画である。この計画は草津町のシンボル的存在として、2013年に日帰り温泉の「御座乃湯」、2014年に休憩やイベント用の「湯路広場」、2015年に湯もみをショーとして行う「熱乃湯」を整備し、2016年に湯畑周辺の照明を完成させたものである。
 湯畑周りは以前、交通量が多く車中心の広場だったが、駐車場を移動させて整備し、人が散策しやすい動線をうまく演出している。「湯路広場」の休憩スペースは木造のピロティ形式の屋根を掛け、雪や雨の日でも利用できるようになっている。
 3つの建物は伝統的な木造工法を用い、屋根を板葺きで統一し、周辺の建物と見事に調和して違和感なく連続する。この計画以前に関係された別の建築家の意図を踏襲しながらも、独自のしっかりとした信念と情熱のもとに時間をかけて町の形を整えていく手法は見事である。
選考委員|西倉 努
西倉 努(にしくら・つとむ)
一般社団法人東京都建築士事務所協会会長代行(副会長)
1948年生まれ/1970年日本大学工学部建築学科卒業/現在、株式会社ユニバァサル設計事務所 代表取締役会長