飯野ビルディング
竹中工務店
第42回東京建築賞一般二類部門優秀賞
建築主:
飯野海運株式会社
設計:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
東京都千代田区
主要用途:
事務所、集会所、店舗
構造:
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造
階数:
地上27階/地下5階/塔屋2階
敷地面積:
8,027.24m2
建築面積:
4,642.54m2
延床面積:
103,826.88m2
工事期間:
2009年3月〜2014年10月
撮影:
小川 泰祐
設計趣旨:
 1960年に建設され、日比谷公園と官庁街に面した先代のビルの建て替えで、長期に亘って使い続けられるよう、将来を見据えた都市資産としての価値を継続できる計画した。
 環境性能とBCP機能への高度対応を目指したテナントオフィス
 環境エンジニアリングと建築デザインの融合を図り、超高層オフィスでありながら自然の光や風に対し外部に開かれた快適な執務環境と、省エネ性能の両立を目指した。高いビル基本機能と、事業継続性、特にその保守性や拡張性を確保したオフィスと、緑やアートを配し、災害と催しへの対応機能を持たせた公開スペース、コンベンションや商業施設を含む都市施設として計画した。
 立地の歴史性と都市的な位置付けを背景とした都市機能と景観の創出
 江戸時代に外堀内外の結節点であった敷地の歴史的文脈を背景とし、日比谷公園側と虎ノ門方面の結節点(ゲート)としての都市機能を、大規模ピロティや地下通路による貫通空間(歩行者ネットワーク)、日比谷公園側から連続する緑を愛宕方面に繋げる起点としての緑化、環境の時代に向かうエンベロープとしての外装デザイン、文化交流発信のための低層デザインという4つのゲート性として表象させた。
(菅 順二、本村 英人)
菅 順二(すが・じゅんじ)
1955年 京都府生まれ/1981年 早稲田大学大学院修士課程修了/1981年 竹中工務店入社/現在、竹中工務店 執行役員 設計本部長
本村英人(もとむら・ひでと)
1961年 佐賀県生まれ/1985年 東京大学工学部建築学科卒業/1985年 竹中工務店入社/現在、竹中工務店 東京本店 設計部 部長 設計担当
第42回東京建築賞選考評:
 この建物は1960年に建設された日比谷公園と官庁街に面した先代の飯野ビルの建て替えプロジェクトである。
 名建築として評価の高かった旧ビルの面影を残す、超高層では類を見ないワイドな開口のダブルスキンの外装計画や、低層と中層エレベーターの上部の外部空間(エコボイド)を活用し、自然の風や光を取り込みながら、高いレベルの省エネ性能を確保した快適な執務空間の創出等、建築エンジニアリングと環境エンジニアリングが見事に融合した作品である。
 それと共に特筆すべきは、江戸時代からの敷地の歴史的文脈を背景にしながら、近接する施設計画と協働した地下ネットワークの創出や、周辺環境を活性化する都市機能と景観を生み出している点である。高層棟のコア配置の工夫によって生み出された祝田通りに沿った大規模なピロティや、緑豊かなオープンスペースが街の貫通空間となり、日比谷公園に続く、新しい都市の歩行者と緑のネットワークを生み出している。
 将来的に地下街を含めたこのヒューマンなネットワークを、日比谷公園と有機的に結ぶことができれば、この施設を含めた地域全体がより魅力的になると強く感じた。
選考委員|宮崎 浩
宮崎 浩(みやざき・ひろし)
建築家、株式会社プランツアソシエイツ 代表取締役
1975年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1977年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了/1979〜89年 株式会社槇総合計画事務所/1989年 株式会社プランツ建築デザイン設立(1991年株式会社プランツアソシエイツに改称)/1990〜2010年 早稲田大学非常勤講師/2011〜13年 同大学大学院客員教授