HOUSE-T
柴田宗紀建築設計事務所
第42回東京建築賞戸建住宅部門優秀賞
建築主:
土屋 拓
設計:
柴田宗紀一級建築士事務所
施工:
株式会社TH-1
所在地:
東京都
主要用途:
専用住宅
構造:
鉄骨造
階数:
地上3階
敷地面積:
117.67m2
建築面積:
46.99m2
延床面積:
115.88m2
工事期間:
2014年3月〜11月
撮影:
西川 公朗
設計趣旨:
 建主は、圧倒的に明るく開放的な住宅を望み、緑道に面したこの土地を選びました。ただ、緑道を行き交う多くの人びとからの視線を気にもされていました。緑道の開放感や景観を損なわずに街並みにひっそりと佇むよう、東西の隣家から等間隔な距離を確保しながら建物を配置しました。
 建物は、全周に腰壁と開口を回した層を4つ積み上げた単純な構成です。腰壁は、道行く人からの視線を遮りながらプライバシーを確保しつつ、適度に閉じられた居場所を囲い取ります。
 全周に回された開口は、光と空気をより多く取り入れるとともに、水平方向への感覚を拡げさせてくれます。内部は、各階の床の一部を切欠き、そこに生まれた吹抜を介すことで、上下階の関係を緊密にします。見上げれば空が、見下げれば地面が見えます。
 どこにいても天と地が入り混じり、内部空間は外部環境に溶け込んでいきます。このような設えが、住まい手と街が柔らかに心地よく繋がるきっかけになるのではないか、と考えました。
(柴田 宗紀)
柴田 宗紀(しばた・むねのり)
1974年 千葉県生まれ/1998年 東京理科大学工学部建築学科卒業/2000年 横浜国立大学大学院工学研究科計画建設学専攻修了/2000〜09年 伊藤博之建築設計事務所/2006年 柴田宗紀建築設計事務所設立
第42回東京建築賞選考評:
 ゆったりとした幅の袋小路よりアクセスし、硝子とグレーの壁を水平に4層重ねた抽象的な外観のBOX(住居)。それは見る者のスケール感を狂わせ、住居であることや室用途も、にわかに分かるものではない。開放的な敷地の扱いは、その外観と一体となって成立するもので、内部空間の開放性や住居として守るべきプライバシーも同時に担保することに繋がっている。
 また、この即物的な空間は、南側の緑道を借景に、使い勝手よく組み込んだテラスと共に豊かな生活空間を提供している。
 腰壁に集めたトラス梁や、外周に配置した細い柱は、吹き抜けのある内部空間の多層化と多様化を可能にし、空間としては連続しつつ用途の分離と融合をもたらし、設備やインテリア全般と共に、目指す空間に精錬されており小気味よい。吹き抜けを利用した環境対応策も有効と思われる。
 空間と暮らしが呼応し、個人住宅ならではの独自の発想が生かされており、また裏も表もない外観と敷地の扱いによって、閉塞的なまちなみに新しい風を吹き込んでいることを評価し、優秀賞とする。
選考委員|平倉 直子
平倉 直子(ひらくら・なおこ)
建築家
東京生まれ/日本女子大学卒/平倉直子建築設計事務所主宰