資生堂銀座ビル
竹中工務店
東京建築賞・第41回建築作品コンクール 一般二類部門|奨励賞
建築主:
株式会社資生堂
設計:
株式会社竹中工務店 東京 一級建築士事務所
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
東京都中央区
主要用途:
事務所
構造:
鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:
地上10階、地下2階、塔屋2階
竣工:
2013(平成25)年7月
撮影:
ナカサアンドパートナーズ、畑 拓
設計趣旨:
本プロジェクトは東京銀座で創業し、銀座と共に発展してきた資生堂の、「資生堂──銀座未来計画」の一環として計画された。
■価値創造拠点の創出
新たな「価値創造拠点」として、クリエイティブ部門を集約した創発的ワークプレイスと、ホールやウィンドウディスプレイなど銀座という地の利を最大限に生かした施設を設置し、文化・情報の受発信により新たな価値を創造できる建物構成とした。
■企業の価値観を表現するデザインの実現
新しい日本の美意識を常に創出し続けてきた「資生堂」を感じる建物の表現として、デザインコンセプトを「先進性・豊かさ・オリジナリティ」とした。資生堂の文化・美意識を、建築の外装から内装、そしてアートにいたるまでシームレスに融合させた。
■環境と居住性に配慮した建物計画
外装による温熱・光環境の向上をはじめ、輻射空調や自然換気、4面採光など、快適な室内環境の実現と建物の環境負荷の低減を行った。
(濱野 裕司、美島 康人)
濱野 裕司(はまの・ゆうじ)
1962年 東京都生まれ/1989年 東京藝術大学大学院修士課程修了/1989年 竹中工務店入社/現在、竹中工務店 東京本店 設計部 設計ISD部長
美島 康人(みしま・やすひと)
1965年 東京都生まれ/1991年 早稲田大学理工学部大学院修士課程修了/1991年 竹中工務店入社/現在、竹中工務店 東京本店 設計部 設計ISD部門 設計2グループ長
東京建築賞・第41回建築作品コンクール選考評:
銀座の女性化粧品会社のビルといえばファサードの外装の華やかさが特徴だ。資生堂はその中でも常に新しい日本の美意識を創出し続けてきたが、この銀座ビルを施主の価値創造を担う拠点と位置づけ、その象徴として施主が洗練を続けてきたモチーフを3次元形状にオリジナルにデザインした、「未来唐草」と名付けたアルミシェードで建物全体を包み込んだ。
「未来唐草」は、執務空間の温熱・光環境を豊かにし、周辺からの視線を制御しつつ、開放感のある新しいインテリアを実現している。未来唐草は一本の流線が全方向に連続する唐草の形状をダイヤモンド分子の立体トラス形状と重ねあわせ、立体的に1枚のパネルとして自立できる構造を3Dモデルでつくり出したもの。W1.8m×H4.25m×D0.3mのアルキャストの一体鋳造パネルとし、建築本体から吊り下げている。そのジョイントも立体的に空間を開けながらも唐草の連続性を失わないかたちを産み出している。
低層階には銀座という街のにぎわいを創出する店舗を配し、アートディスプレイや多目的ホールなどを設け、屋上階には社員の交流を促す「資生堂の庭」という緑化された癒しスペースを取り込んでいる。
すべての階の空間をファサードの未来唐草が包み、資生堂の美意識を感じさせ、徹底したコンセプトを示している。アルキャストの軽さと白さが、女性の美へのあこがれを象徴し、同時に銀座の街並みに華やぎを添える建築となっている。
(中村 勉)
中村 勉(なかむら・べん)
建築家、一般社団法人東京建築士会 会長
1946年東京都生まれ/1969年東京大学工学部建築学科卒業/1969〜77年槇総合計画事務所/1977〜88年AUR建築・都市・研究コンサルタント/1988年中村勉総合計画事務所設立