東京理科大学葛飾図書館
日建設計
東京建築賞・第41回建築作品コンクール 一般二類部門|優秀賞
建築主:
学校法人 東京理科大学
設計:
株式会社日建設計
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
東京都葛飾区
主要用途:
図書館、集会場
構造:
鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
階数:
地上5階
竣工:
2013年 1月
撮影:
岡本 公二
設計趣旨:
公園敷地の中のブックギャラリーを中心とした図書空間
葛飾区の公園内に計画された大学図書館である。隣接するふたつの区の地区公園をガーデンパスで繋ぎ、地域の回遊性を確保しながら、キャンパスの骨格となるキャンパスモールの正面に建築を配置し、都市公園という「地」と建築の「図」の関係をつくった。
1階は葛飾区と連携した大学図書館、区が運営する科学技術センター、カフェの地域開放のための機能とした。図書館は、すり鉢状に中間階を多層の階段状に設け、壁面を書棚で構成することで、分節した高さ6mの本の壁「ブックギャラリー」により知の集積を表現した。600人のホールはアルキャストの屋根と連続した3角形を基本とした金属の多面体の壁面・天井とし、図書館とは対比的な表現とした。ホールのボリュームは、図書館とは分節し、ホールを独自の形態として浮遊した表現とすることで「見る・見られる」の関係をつくり、空間的な広がりと奥行きを狙った。
(岩崎 克也)
岩崎 克也(いわさき・かつや)
1964年 千葉県生まれ/1986年 東海大学建築学科卒業/1991年 東海大学大学院修了後 日建設計入社/現在、日建設計 設計部長
東京建築賞・第41回建築作品コンクール選考評:
正面の図書館入口を入ると、いきなりひな壇状に迫り上がる書棚の夥しい数の蔵書に囲まれる。デジタル化される前、「情報」がこのような物質的存在感と重量のあるものだった時代の古典的な図書館の風情を思い起こさせてくれる。
この劇場型図書館の印象が、上部に浮いた600人ホールとシンクロして、その求心性がキャンパスを秩序づける重心になっており、正攻法で明快な構成である。
柱梁といった主架構をそのまま現した軽快な表現を装う一方、上階のホールは周囲すべてをアルキャストで包んで注意深く建物の他の部分と切り離され、先細りに造形された柱で浮揚させていて、到達すべきイメージへの周到な計算が窺える。
建物周囲の大庇も水盤の上に軽やかに表現されているために、シンメトリーの古典的なキャンパススケープに爽やかな印象を持ち込むことに成功している。
広大な全体計画の中で登場してくる多種多様な要素を、デザインの多様性と一貫性の絶妙なバランスを取りながらまとめ切る高い力量を見せている。
(車戸 城二)
車戸 城二(くるまど・じょうじ)
建築家、(株)竹中工務店 執行役員
1956年生まれ/1979年 早稲田大学卒業/1981年同大学院修了後、株式会社竹中工務店/1988年 カリフォルニア大学バークレー校建築学修士課程修了/1989年 コロンビア大学都市デザイン修士課程修了/2011年 株式会社竹中工務店設計部長/現在、同社執行役員