コロナ電気新社屋工場(Ⅰ期工事)
bews ビルディング・エンバイロメント・ワークショップ
東京建築賞・第41回建築作品コンクール 一般一類部門|奨励賞
建築主:
コロナ電気株式会社
設計:
bews有限会社ビルディング・エンバイロメント・ワークショップ一級建築士事務所
施工:
東鉄工業株式会社 水戸支店
所在地:
茨城県ひたちなか市
主要用途:
工場
構造:
鉄骨造
階数:
地上2階
竣工:
2013年1月
撮影:
Yuji Tanabe
設計趣旨:
雑木林の中の大きな家のような工場
3.11で半壊した精密機器工場とその本社社屋の全面建替え位置Ⅰ期部分で、操業しながらⅡ期にわたる工事を行うため、ひたちなか市初の全体計画認定を受けた民間復興。
工場といっても、部品を純水を使い光学調整しながら組み立てる、人が主体の「ヒューマンな工場」である。配置は、矩形の敷地のかたちに沿い、樹齢約50年の桜並木を活かすために、中央に製造エリアを体幹のように置き、周囲に製造を補完する(あたかもHDDを補完するような)USB諸室を1mレベルで凹凸状に配した。通過動線と製造エリアを区分する必要から、USB諸室と同じレベルにぐるっとテラス回廊を設け、階ではないが自然に領域を感じつつ、すぐどこにでも行ける断面とした。このテラス回廊は、打ち合せコーナーの活動が目に見え、カウンターですぐ打ち合せができるface to faceなストリートである。また出荷口付近では下部の出荷動線のため太鼓橋となり、展望のきくビューポイントになっている。ここだけの復興の姿。地域の次世代がのびのびと能力を発揮できるような、次の50年に通じる人間的で楽しい生産環境をデザインした。
(井坂 幸恵)
井坂 幸恵(いさか・さちえ)
1965年 茨城県日立市生まれ/1988年 多摩美術大学建築学科卒業/1991年 芝浦工業大学大学院修士課程修了/1992年 同大学研究員/1993年 ラファエル・ヴィニオリ建築士事務所 プロジェクト・アーキテクト/2002年 bews/ビルディング・エンバイロメント・ワークショップ設立/2008年〜東京理科大学工学部非常勤講師
東京建築賞・第41回建築作品コンクール選考評:
3.11の大震災で被害を受けたひたちなか市の、築50年の古い歴史のある工場の再建計画です。
大きな被害を受けながらも工場は稼動しなければならず、既存不適格の工場を半分解体して、I期工事として計画されました。それには建築基準法の一部緩和を受ける全体計画認定を受ける必要があり、ひたちなか市もこの認定を受けるのは初めてとのことで、担当の職員と共に勉強しながらの作業であったそうです。
職人の手作業的な作業が行われる中央のメイン作業場は、周囲より床を1mほど下げて空間に落ち着きを持たせ、屋根からはユニークな北側採光を取り入れています。そして、その周りに外気や採光を取り入れる空間を設け、アットランダムに事務所などの必要諸室を配置しています。このことが一般的な工場とは異なる良好な作業空間を生み出していると思います。
若い建築家が建築主の信頼を得て力いっぱい戦った作品には愛情が込められており、奨励賞にふさわしい秀作です。
(西倉 努)
西倉 努(にしくら・つとむ)
一般社団法人東京都建築士事務所協会会長代行(副会長)
1948年生まれ/1970年日本大学工学部建築学科卒業/現在、株式会社ユニバァサル設計事務所 代表取締役会長